院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

東大卒の予備校講師

2013-04-30 00:50:19 | 社会
 「いつやるか?今でしょ!」の名ゼリフで人気になった予備校講師、林修さんは名古屋の東海高校出身である。東海高校出身者は医学部の同級生に山ほどいた。

 林さんは、東大の法学部を卒業して長銀に入ったエリートである。どのような経緯で予備校講師になったのか知らないが、予備校講師には東大卒が多い。

 何故かと言うと、講師が東大卒でなければ東大を目指す生徒にナメられてしまうからである。

 東大卒でありながら、なぜ予備校講師をやらなくてはならないかと鬱屈した思いをもっている人は少なくないらしい。林さんにもそのような時期があったという。

 そこで思い出すのは、全共闘の議長として有名だった山本義孝さんである。東大理学部の大学院生だった彼は、出所後、他の同級生のようなエリートコースへの就職をせず(できず?)、30年間予備校講師を務めた。

 山本さんは一時全く忘れられた存在だったが、カッシーラーの翻訳に没頭していた。そして平成15年『磁力と重力の発見』をみすず書房から出版して、パピルス賞、毎日出版文化賞、大佛次郎賞を受賞した。

 私も読んだが、たいへんな力作で、科学史に大きな一頁を刻む書物だと思う。山本さんは古い文献を読むためにラテン語まで勉強したそうだ。ただ、あまりに沢山の文献を渉猟しているため、山本さんの理解を追体験することはほとんど不可能である。(つまり、理解が正しいかどうか証明できない。)

 いずれにせよ、山本さんはこの本の出版により、予備校講師を引退する間際になってアカデミズムに躍り出た。この事実は、優秀な物理学徒といわれていながら予備校講師に身をやつさざるを得なかった山本さんの、世間への意趣返しとなったことだろう。

 しかしながら、林さんや山本さんのような人は例外中の例外で、予備校講師のままで終わる人が大多数である。私が行った予備校の講師も多くが東大卒だったが、彼らはどのような人生行路を歩んだのだろうか?