院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

アルコール問題に行政はどこまで関与するべきか?

2015-02-05 05:58:37 | 医療
 もう定年退職されましたが、30年ほど前にある行政マンと知り合いました。彼はアルコール依存症の問題に熱心に取り組んでいました。

 断酒会の開催に協力して、休日も返上することがありました。断酒会のメンバーには、酔うと家族に暴力を振るって、あとでそれを覚えていない人が多かったです。

 そういう人とは別に、アルコール依存症者には暴力などの問題を起こさず、ただ静かに呑んで体を壊していく人もいます。上の行政マンが世話をする断酒会にはそのような人がいませんでした。

 そのことを彼に訊ねますと、「迷惑をかけられている家族や周囲のために僕は援助をしているのです。迷惑をかけないアルコール依存症者は放っておきます」とのことでした。

 本人が体を壊すかどうかよりも、まず家族や周囲を暴力から守ることが重要だとの彼の立場でした。私はそこに行政マンらしい優先順位付けを見て、その合理性に感心したのでした。(医療の側からは、暴力を振るっても振るわなくても同じアルコール依存症だと見てしまいがちなのです。)


※今日、気にとまった短歌

  覗きみてからあげだーと声張りて十四歳は塾に行きたり (福岡市)市川登美榮