(職人は右のイクラのほうがおいしいという。私は左のほうしか食べない。)
料理職人(料理人)は、まずもって自分が美味しいかそうでないかを知っていなくてはならない。そうでなければ、客が唸る料理は出せない。
20年来の馴染みの寿司屋。こんなに美味い寿司屋は名古屋では見つからなかった。(名古屋人はケチだから、きしめんや味噌カツがごちそうなのだ。)美味しい寿司屋は豊橋に来てようやく見つかった。
店の主人は右のイクラが美味しいという。私はスーパーマーケットでも売っているような左のイクラのほうが美味いと思う。主人がしこんだ右のイクラは、妙にダシが効いていて、プチプチと音がするほど身が張ってはいるが、私は頑固に左のイクラだけを食べていた。
家内(生粋の名古屋人!)は素直だから、店の主人が薦めるイクラを食べていた。ところが、あるとき家内は私と同じイクラを食べたことがあった。
結果、私が食べているイクラのほうが美味しいと家内は言った。好みの違いと言ってしまえばそれまでだが、イクラにダシは要らないというのが私の「美学」である。
※一昨日詠んだ短歌
不自然に愛想のよい仲居なり料理は普通以下だったけど (豊橋)中里ひとし