えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

袁枚著・青木正児訳「随園食単」読了

2009年05月08日 | 読書
どしゃぶり雷いねむり、の三重苦に悩みながらもまた一日がおわりました。
こうして机に向って、ものを書くのはやっぱり好きです。

本についてものを書くことに、いろいろと試してみようと思いました。
コラムのカテゴリのときは、平均して800字前後を心がけていますが、
普通の感想文の時は、このくらいで丁度良いのかも、と思い、ちょっと
ためしてみました。


:「随園食単」岩波文庫 袁枚著 青木正児訳 初出1980年

 袁枚、またの名を随園(1716-97) 。中国は清の時代、詩人として、
また「子不語」など説話集の執筆でも名を知られた文人の大家である。
金満家で、当然の如く美食家だった。題名の「食単」は「料理メモ」と訳されている。
どうやら袁枚の食した食の数々を記していったものらしい。
『食いしん坊の随園が、旨い物を嘗め尽し、味わい尽した晩年の記録として尊重さるべきであろう。』
と、訳者の青木正児が冒頭の解説で述べたそのままに、
三大珍味から点心、おそうざいまで幅広い料理の品々が、実にさらっと記されているのだ。

 たとえば、「熏卵(シュン・タン)-いぶし卵」という料理。
『鶏卵に調味料を加えて煮上げてから、微かに熏し乾かし、片(ひら)に切って盤中に盛ると、御馳走のあしらいになる。』
一本いっぽん、料理を拾ってゆくうち、実は書かれていることがレシピではなくて、
とても短いエッセイの連続なのがわかる。
何より青木当人が、酒も肴も大好きな食通だけに、
料理の手順一連が、中国語の料理名の訳とすなおにつながるのだ。
袁枚がこめた食べ物への思いを、時にシニカルに誤字を指摘しながら
丁寧に拾い上げる青木の仕事が、本文、注どちらからもかいまみえてとても楽しい。
(493字)
コメント
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