いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
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予算執行の試金石。 a touchstone of execution of the budget

2016-05-17 20:08:30 | 日記
 (1)「熊本地震の被害復旧」名目の2016年度補正予算案は総額7780億円で、そのうちほとんどに当たる7000億円が「事前に使途を決めない予備費」となる異例の対応となった。

 予算は本来ドンブリ勘定を排除するため具体的な使途を決めて効率的に運用使用することが求められている。一方で使途を限定することで現場(被災自治体、住民)との要求、要望にズレが生じて、結局被災地では項目に添って予算を使い切れずに数兆円規模の多額の未執行分が生じるという、しかし足りないところでは足りないということが東日本大震災では見られた。

 (2)被災地自治体ではフレキシブル(flexible)な予算執行を求める声が強く、今回の熊本地震の被災地からも使途を限定しない被災地の予算執行判断に委ねる要望があがっていた。

 熊本地震は震源地が移動して被害が拡大し現在も大地震発生の可能性も残されて収束の目途もたたない中で、「個別内容で(最終的な)予算額を見込みがたい状況で、必要に応じて迅速に対応せねばならない」(麻生財務相答弁)状況で東日本大震災災害復興予算の反省を踏まえてのやむを得ない対応のものだ。

 (3)民進党の岡田代表は「7000億円をドンと国会に出されては、我々審議しようがない」(報道)と指摘しているが「熊本地震復旧等予備費」と明文化されている補正予算となれば大枠での使途は確認されており、被災地自治体の要望、要請、現地被災状況を考慮すれば型どおりのことを言っていても実効性がないので、被災地自治体での補正予算使い道の検証(verification)の明確化、責任化を担保にして考えるべきだ。

 (4)もちろん大枠での名目予算のさらに予備費という予算化なので、使う被災自治体の責任は逆に重い。決してドンブリ勘定になることなく予算執行責任体制を明確にして、熊本地震復旧、復興に向けた効果的な使い道、配分と復旧、復興後の検証に耐えうる執行状況エビデンス(evidence)でなければならないのは、いうまでもないことだ。

 被災地自治体として災害復興補正予算の国の規制のない自由な執行能力を要望するだけではない、受け入れ体制、責任体制、情報開示体制を明確にしておく必要がある。

 (5)予算の効率的、効果的使用、配分のためには現在のように年度制に区切って事業計画の進み具合に限らずに年度内で全処理するやり方ではなくて、年度をまたいだ複数年(度)予算のあり方を考えるべきだ。

 民主党政権時代にも考えられたことがあるが、財源の見通しもたたない政策提言の失敗により同政権そのものが崩壊して立ち消えになった経緯もある。

 (6)予算の年度制は収支均衡、健全化、計画性、執行確実性などからこれまで普遍的にとられてきた会計制度ではあるが、時には年度末に急ごしらえの無理な予算執行で使い切ろうという無意味な現実もあり、年度をまたいで有効な予算の使途方法論もあっていい。

 今回の熊本地震での7000億円の予備費補正予算化は、従来の予算論を考え直す試金石(a touchstone of execution of the budget)となるものだ。

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