ただパシュートせよ。 in pursuit of pursuit

　(1)スピードスケート女子団体追い抜き（pursuit）でそれまで銀、銅メダルの高木美帆選手が引っ張る日本チームが個人種目メダル３人を揃えた強豪国のオランダチームを押さえて五輪新記録で金メダルを獲得した。

　日本チーム３人がぴったり重なって前方をしっかりにらんで見据えて黙々と滑る様は、まるで修行僧、忍者をほうふつとさせるあくまで静かだが精神力の高まり、強さ、信念、まさしくパシュート（追撃）を伝えるものだった。

　(2)高木美帆選手は得意の個人種目１５００メートルでわずか０．２秒差で金メダルを逃した雪辱を果たした。個々人の運動力では劣っても団体になると不思議な力を発揮する日本のチーム能力の高さを実証してみせた３人娘だった。

　チームを引っ張った高木美帆選手は「３種目（で３種類のメダルが）取れたとかいうのはもうよくて、チームジャパンを誇りに思う気持ちでいっぱい」（報道）と言えば、国立科学センターでパシュートの科学分析、方法論を研究指導した責任者は「思考が必要とされる種目で勝てば『技術大国ニッポン』ならでは、となる」（同）と応じた。

　(3)日本ならではのスピードスケート・パシュートの金メダル獲得だった。３人（控えを含めて４人が協力して）が風の抵抗を押さえて体力、スピードを持続するため交互に順番を交代して滑るパシュート決勝は、中盤に圧倒的な個人力のオランダチームにリードを許したが、終盤高木美帆選手が先頭で日本チームをスピードに乗って引っ張り、ぴったり重なって滑る日本チームの３人がパシュート（追撃）よろしく氷に乗って逆襲、逆転リードを保ってそのままゴールを滑り抜けた五輪新記録による見事な金メダル獲得だった。
　終盤に王国オランダ選手を抜くなどとは個人種目では考えられないことだった。

　(4)レース終了後日本チームの３人が横並びになれば、失礼ながらよくこれで勝てたと思えるデコボコ不一致型であるが、これが滑走で３人縦列で重なると修行僧か忍者のごとく静かだがゆるぎない迫力が伝わってくるというチームジャパンの力の結集を知らされる。

　リンクを１８０度挟んで対峙してそれぞれスタート、ゴールするパシュートで途中経過、差はＴＶ画面のタイム差でしかわからないもどかしさはあるが、だから黙々とただ前を見据えてただチームを信じて滑る姿は静けさの中の葛藤、闘いを伝えて、氷上を熱くする。

　(5)ただ、ただパシュートせよ。（in pursuit of pursuit）