(1)衆院選で手取りを増やすスローガンを掲げた国民民主党が7議席から4倍の28議席を得て躍進した。過半数割れした自公は国民民主との政策ごとの部分連合に活路を求めている。
国民民主がこだわっているのが「103万円の壁」突破で、現行収入103万円を超えると所得税がかかる制度を最低賃金上昇比率と同等の178万円まで非課税にしようというもので、これだと国、地方の税減収額は年7~8兆円となり政府としても財源、対策、確保が必要になってくる。
(2)主張する玉木国民民主代表は税収増でまかなえばいいと言っているが、これでは根拠には薄い。財務省は「107万円に引き上げるぐらいならいいんだが」(報道)と(これでは税収減は数千億円程度)打ち明けている。
手取りを増やすといえば賃上げが有効だが、今春闘では大企業中心に5%を超える過去最高の賃上げ率で中小企業、パートにも波及した。
(3)しかし、それも束の間、物価の上昇率が上回り実質賃金はマイナス成長に向かっている。物価上昇をどう適正に抑えるかが問題であり、しかしトランプ米大統領復帰で日米市場は反応して円安ドル高が進み、物価高をさらに押し上げる基準だ。
トランプ大統領が日本に米国製品、物品の輸入増を迫り、求めることは考えられて、物価高を抑える要因をみつけるのはむずかしい。
(4)国民民主の非課税178万円は国民すべてを対象とするため高額所得者ほど減税額が多くなり、こちらも不平等問題になっている。国民民主としても手取りを増やすとして躍進した以上103万円の非課税額の上乗せ譲れないところであり、これに特化しての自公との政策協議、交渉で過半数割れの自公政権としても政権運営の命運を握るものとしてむずかしい判断に迫られる。
(5)米国トランプ政権発足による要求とも対応しなければならず、石破首相の真価が問われる。来年には参院選を控えて野党は政権交代も視野に攻勢をかけると思われて、政局は流動的だ。来年度予算編成も大詰めを迎えて財源、税収確保は重要で、国債発行頼りでは日銀の利上げで償還負担も大きくなる。
(6)「103万円の壁」問題は国会で制度、財源、経済動向を含めて審議、検討して、必要な国民の手取りを増やす政策、方策を決めなければならない。政党間の政策取引(deal of a policy)で決める問題ではない。