忌まわしい過去を想い出しながら続きます。
あの男とはF沢君。背は小さくお目目ぱっちりで丸顔。髪はソフトな七三分け。
何時もブレーザーにタイツと半ズボンを履いている様なボンボンの子。ヤクザな新聞販売店の息子の私とは大違い。
特に目を引くのは肌の白さ。馬鹿殿並に白い。そしてそのルックスは森進一が子供になった感じ。
色白と言えば同じクラスにK木君がいる。何時も深緑色の地味なジャンバーをひるかえし着ているが彼はアルビノ。目立つ。肌は桃色がかった白。目の色は薄い茶。頭髪はほんのり茶がかった白。
そのアルビノのK木君に対抗出来るF沢君は、透き通った純白の白、鈴木その子ら美白おばさんが求めている白。ホワイト&ホワイト。究極の白さです。
私は彼を避けていました。趣味思考が全然違うから何を話して良いものか判らないし、彼と並ぶと目の細い私は「五木ひろし」に見られてしまう。それだけは嫌だった。
私は彼を気にしていました。車酔いで吐くのは何時も私と彼。前回の遠足では彼は吐かなかった。私だけが吐いた。この屈辱、晴らさで置くべきか。
だから意識して彼をチラチラ見ていたのです。
私と彼の車酔いに関する考え方は違います。私は絶対に吐く事を前提としているから、一番前の席に陣取っています。実はこの席、下はタイヤなので一番揺れる場所です。バスは前と後ろが一番酔い易い席なのです。
彼、F沢君はバスの中央の通路側に陣取った。一番揺れの少ない場所に座り、何としても車に酔わない、吐かない戦略といえます。
私もそうするべきが悩みましたが、大勢の中で吐く訳には行かない。ポリバケツを抱きしめている私は惨めなピエロとして笑われる。それだけは嫌だ。やはり一番前が私の特等席。ここで良いのだと自分に言い聞かせておりました。
学校に近付いて来た。今回の遠足ではF沢君も私も吐かなかった。そう思って通路を挟んでの斜め後ろのF沢君を見る。
彼は何時も物静かで無表情。何を考えているのか分からない顔をしているが、何か変。
何と形容していいのか分からないが、「犬が変なモノを喰って後悔している様な顔」と言うか、何時もの無表情とは何かが違う。
まさか酔っているのか。否、学校まで直ぐそこまで来ているのだ。酔っていたとしてももう少しだ。大丈夫だろう。
私は嬉しかった。ポリバケツ一つで車酔いは軽微となり、吐く事は無かった。バケツを貸してくれてたバスガイドさんが神々しい女神に見えた。
そう思った瞬間、「おお、おおおぅ」との声が。私は後ろを向く。F沢君がうごめいている。エチケット袋を手にして開こうとしている。
その刹那、F沢君は森進一が「♪おふくろさんよ、おふくろさん・・」と歌うような口を半開きにした表情になっていた。
私はマズイと思ったその瞬間、「♪空を見上げれゃゃゃゃゃゃゃ・・・・」と言う無音の口調で、その場でゲロゲロロロロロォーーーーとぶっ放した。
私はその瞬間をコマ送りのように見た。そして1ミリ秒でもよおした私は、素早く前を向きバケツに顔を突っ込んで「ゲロロロ、グエッっっっ、ビシャー、ビシャー、ビシャー、ビシャー」と腹の中のものを涙目になって全て吐き出した。
バスの中は誰もが悲鳴を上げ地獄絵図となっていた。F沢君はエチケット袋が間に合わなかった。バス内にゲロが撒き散らされた。
私はポリバケツの中に後悔を吐き続ける。「人の心配なんてする身分ではなかった。私が一番ヤバイ男なのに油断した」と思いながら・・・・。
「♪勝つと思うな、思えば負けよ」。美空ひばりの「柔」が脳裏に流れて来た。
そうだ。私は勝ちを確信した。それで油断した。人を憂いる余裕を見せた。そんな事をする余裕は私には無い。私が一番弱いのだから。
私の人生、こんなパターンが多いです。上手く行っていたのに、最後の最後でダメになる。一瞬たりとも油断が出来ない人生。
どんなに頑張っても、周りの者が私に禍を運んで来る。だから1人でしか生きられない人生。それがズッー続いていると感じ。それが私の人生だ。
その出来事がトラウマとなって、私は人の顔を見るのが苦手になりました。色白の人は特に。
そして森進一。彼の歌い出す口の動きを見ただけで、F沢君の吐く瞬間が脳裏に浮かぶ。吐き気が襲う。森進一の物真似芸人を見てもそうなる。だからチャンネルは直ぐに回す。
これが数十年続く私の人生のトラウマです。もう治らないでしょう。
悲しいかな、悲しいかな。
ではでは。
※追伸。ゲロを吐いてしまったポリバケツは、ちゃんと洗ってバスガイドさんにお返ししました。バスガイドさんには「あとチョッとだったのにね。残念だったね」と慰みのお言葉を頂きました。敗れ去った私に最後まで優しくしていただきました。感謝です。有難う御座いました。期待に応えられず、済みませんでした。
ご自身の気持ちは読者とは反対ゆえに言葉を選ばねばと思いますね。
臭いという観点がまた納得の結論でした。私も同じような事あったように思いますよ。明日は我が身として学ばせて頂きました。
酔っ払いは人の心配すると一気にさめますよね。
けど車酔いには臭いが弱点。子供にはいい匂いの物持たせるのもアリかなあとも人の経験から自分に役立てるならばそう思いました。また一つ学べました。
生活に活かしますね。
けどタイトル見ているようで認識出来ていなかった自分にもびっくりでした。楽しませて頂きましたよ。この記事で何人助かる子供たちが出てくるか?楽しみですね。
感謝です。辛い事みんな言わない、けどそれこそ大事だし、いいヒントやきっかけになる事学べましたよ。
この話はおふざけが入っていますが、三浦春馬からの自殺の連鎖と「もらいゲロ」は同種のものではないかと考え、想い出しながら書きました。
つまり「三浦春馬=F沢君」、「バス=コロナ禍・環境」、「ポリバケツ=精神安定剤・心の支え」です。
結果、私はF沢君に釣られて吐いた。F沢君を見た為に吐いた。同様な感覚で三浦春馬関連の自殺が続いているのではないかと想えます。
しかし、アルビノのK木君は吐かなかった。K木君の両親は2人とも盲目です。だから死ねない。アルビノは辛い現実が待っているのに強く生きている。強い人間とはK木君のような人間だと思います。
今一、結論は出ていませんが、自殺した故人を想う事は難しく、故人の感覚が乗り移り引っ張られるのは間違いないと思います。
強い心が必要だと思います。
ゆっくりゆっくり身体の安全確認しながらですね。
彼の両親は盲学校に勤めていました。どちらも目が悪かったと思います。彼もど近眼でしたが、アルビノが関係していると思います。