ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

セルロイドの息子 クライブ・バーカー

2009-09-28 13:47:00 | 
別に浮「ものが好きなわけではない。

幼い頃から何度も怖い思いはしているが、決して怖がることを楽しんでいたわけではない。海に溺れそうになり、身体が硬直した経験は二度と御免だ。あるいは野犬の群れに囲まれて、獰猛な吼え声に怯えた時の感覚は今も脳裏に刻まれている。

恐怖が身体を縛り、怯えが自尊心を踏みにじり、動揺して声が裏返る。まるで自分が自分でないかのような喪失感。口が裂けても、怖いことが好きだなんて言えるはずがない。

霊感に乏しい私は、お化けとか幽霊などに直に怯えた経験がない。だからといって、怖くないはずないと、妙な確信をしている。きっとお化けに直面したら、ブルブルと震えて惨めに縮こまるに違いない。

だからこそ、安全な場所から恐怖を疑似体験できるホラー小説はありがたい。

幸いにしてキング、マキャモン、クーンツといったモダン・ホラーの大家の作品が多く出ているので、私はどっぷりと恐怖の疑似体験を満喫できる。

そんなホラー小説好きの私だが、いさかさ苦手に思うのがイギリス新進気鋭のホラー作家であるクライブ・バーカーだ。なにせ血と臓物を撒き散らす名人だ。死霊に現代風の味付けをしてふるまう名料理人なのだ。

快適な布団に包まれて朝を迎え、目を開けると隣に腐敗した内臓がむき出しの死体が、にやりと笑いかけているような驚愕がバーカーの持ち味だ。平凡に暢気なヌマンタ、ビックリの恐怖劇場の幕開けなのだ。

そんな訳で、好きなホラーだとは言いがたい。でも、ホラー小説の醍醐味を味わいたいなら、是非とも食すべき定番料理でもある。

表題の作品は「血の本・シリーズ」の第三作目。ちょっと怖い思いを味わいたいなら最適の一冊です。興味がありましたら如何でしょうか。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする