ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

お~い!竜馬 小山ゆう

2009-09-08 12:02:00 | 
大局に立つ。

一言で言えば簡単だが、これを実践するのは難しい。しかし、時代の変わり目には必要なことでもある。日本の場合だと、明治維新と太平洋戦争の敗戦のときこそが、大局にたった判断が必要とされた。

奇跡と言ってもいいが、日本はこの難局を「大局にたって」乗り切る視線をもった人たちがいた。もう一度繰り返すが、これは奇跡に近い。

私は歴史、とりわけ世界史を好んだが、古代から現代に至るまで、時代の節目には多くの文明、国家、勢力が過去に囚われて衰退し滅亡に至った。

状況が変っているのに、その変化を認識するよりも過去の栄光、実績に固執して、結果的に滅び去った国々のなんと多いことよ。時代の変わり目を生き残ることは、我々日本人が思う以上に難しい。変化に対応した新しい勢力と旧政権との内戦を外国勢力に利用され、結果的に滅んだ国のほうがはるかに多い。

人類文明の中心地であるオリエントの地では、古代から現代まで継続した国家なんぞ存在しない。世界的にみたって比較的継続しているのは仏、独、英、トルコ、エチオピアぐらいで、アジアに至ってはタイと日本だけだ。

私はここで、日本民族が優秀だなんて安易なことを言う気はない。国土の7割が山で、限られた耕作地を協力し合って活用し、激しい四季の変化と不規則に襲ってくる台風や地震、火山といった災害に対応するために勤勉で研究熱心でなければ生き残れなかった厳しい環境が、学習意欲の高い民族性を育んだだけだ。怠け者を生かしておく余裕がなかっただけだとも言える。

事実、ヨーロッパの侵略に対応できたのは、世界屈指の教育レベルの高さがあってこそだ。高い学習能力があってこそ新たな変化への対応を可能なさしめた。興味深いのは、その教育レベルのなかでは上位の者ではなく、下位に近いレベルのものたちが最も積極的に変化に対応できたことだ。

その代表が、表題の漫画の主人公である坂本竜馬だ。日本史のなかでも、この坂本竜馬ほど奇妙な存在は珍しい。旧権力である江戸幕府打倒の先鋒でありながら、それに固執せずに欧米の帝国主義の侵略の時代に対応できる日本を考えて行動した稀有な人物だと私は思う。

その生まれと育ちを思えば、このような人物が出てきたこと自体奇跡に近い。権力の座を欲せず、富にも固執せず、旧来の権力層への復讐心さえ希薄な革命家。その屈辱的な生い立ちを超えて家族を愛し、郷里を愛し、仲間を愛し、日本を愛した。

あまりに奇特な人物であるがゆえに、様々な風評、奇論で彩られた人物でもある。私自身、その評価に迷うが、この人の活躍あってこそ、政権交代が平和裏に行われたと信じている。

この坂本竜馬の大ファンである武田鉄也が原作を書き、小山ゆうが漫画化したのが表題の作品だ。いささか誇張しすぎの感はあるが、たいへんよく出来た人物伝だと思います。機会がありましたら是非どうぞ。

コメント (4)
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