読んだ後の印象がさわやかなエンディングを迎える漫画は、そう多くはない。
少年ガンガンという雑誌で長く連載されていた「高フ錬金術士」が完結した。単行本でまとめて読む人も多いと思うので、ネタばれを避けるため内容は書かない。
もとより「鋼錬」(ハガレン)は少年漫画にしては残酷な描写が少なくない。連載開始以来、多くの登場人物が悲惨な死を迎えている。死なずとも、身体を奪われたアルフォンスをはじめとして、大切なものを失ったが故の悲劇が作品を彩ることが多い漫画であった。
にもかかわらず、この漫画には悲劇の匂いは濃くなく、むしろ真直ぐに生きることへの賛美にあふれている。他人の命を糧とするのではなく、沢山の人々に支えられ、互いに助け合って生きていく健やかさが作品の基調に据えられているがゆえのことだと思う。
近年、漫画の世界では安易な手法が目立つ。その一つが残虐な場面を散りばめて読者の目を引きつけることだ。人間という生き物には、たしかに残虐さを好む面が潜んでいる。そのことは否定しないが、だからといって読者の関心を惹きつけるために残虐な場面を過度に利用するのは如何なものか。
実を言えば、子供向けの童話にだってかなり残虐な場面はけっこうある。しかし、大人の知恵というか、ある程度ぼかして記述している。だから、その残虐さは薄められてあるがゆえに、子供たちにトラウマ(精神的損傷)を与えるようなことは稀だ。
漫画の主たる読者は、やはり子供たちだ。人間の暗い一面に残虐さがあるのは確かだし、童話がそれに対するワクチンのような役割を果たしていることは認めている。なればこそ、子供向けの漫画は、残虐さをある程度ボカして描くべきだと思っている。
そのボカしかたが甘いというか、子供たちに対する配慮の乏しい漫画が少なくない。「鋼錬」を私が高く評価するのは、その配慮が前向きというか、残酷な現実にこう立ち向かって欲しいとの作者の想いが伝わってくる気がするからだ。
単行本で20巻を超える長編なので、気軽には読めないかもしれないが、是非とも読んで欲しい傑作だと思います。

少年ガンガンという雑誌で長く連載されていた「高フ錬金術士」が完結した。単行本でまとめて読む人も多いと思うので、ネタばれを避けるため内容は書かない。
もとより「鋼錬」(ハガレン)は少年漫画にしては残酷な描写が少なくない。連載開始以来、多くの登場人物が悲惨な死を迎えている。死なずとも、身体を奪われたアルフォンスをはじめとして、大切なものを失ったが故の悲劇が作品を彩ることが多い漫画であった。
にもかかわらず、この漫画には悲劇の匂いは濃くなく、むしろ真直ぐに生きることへの賛美にあふれている。他人の命を糧とするのではなく、沢山の人々に支えられ、互いに助け合って生きていく健やかさが作品の基調に据えられているがゆえのことだと思う。
近年、漫画の世界では安易な手法が目立つ。その一つが残虐な場面を散りばめて読者の目を引きつけることだ。人間という生き物には、たしかに残虐さを好む面が潜んでいる。そのことは否定しないが、だからといって読者の関心を惹きつけるために残虐な場面を過度に利用するのは如何なものか。
実を言えば、子供向けの童話にだってかなり残虐な場面はけっこうある。しかし、大人の知恵というか、ある程度ぼかして記述している。だから、その残虐さは薄められてあるがゆえに、子供たちにトラウマ(精神的損傷)を与えるようなことは稀だ。
漫画の主たる読者は、やはり子供たちだ。人間の暗い一面に残虐さがあるのは確かだし、童話がそれに対するワクチンのような役割を果たしていることは認めている。なればこそ、子供向けの漫画は、残虐さをある程度ボカして描くべきだと思っている。
そのボカしかたが甘いというか、子供たちに対する配慮の乏しい漫画が少なくない。「鋼錬」を私が高く評価するのは、その配慮が前向きというか、残酷な現実にこう立ち向かって欲しいとの作者の想いが伝わってくる気がするからだ。
単行本で20巻を超える長編なので、気軽には読めないかもしれないが、是非とも読んで欲しい傑作だと思います。
