技術の進歩は、人を幸せにするのだろうか。
西欧文明が世界の主流となりえたのは、その基盤に科学があったからだ。科学の進歩は、間違いなく我々の生活の質を向上させた。
化石燃料を燃やすことで得られる火力エネルギーの使用により生産力は飛躍的に増大した。鉄道や動力船、自動車といった運輸手段の高速化、大量化は世界を狭くした。医療技術の進歩は、生存率を高め、人口の増大に大きく貢献した。
なにせ蛇口を捻れば水が出る。スイッチひとつで部屋は明るくなる。かつては手に入らなかった食材も、よういに口に出来る。情報は多量にもたらされ、選択肢は限りなく拡がった。
だが、これで人は本当に幸せになったのだろうか。物質的な豊かさだけが幸せの基準ではない。物質的に貧しくても、幸せは十二分にある。要は気持ちのあり方次第なのだろう。
それでも科学の進歩は、多くの人に物質的な豊かさをもたらした。だが、その豊かさゆえに、争いもまた飛躍的に巨大化した。かつては不可能であった世界規模の戦争は、科学の進歩があってこそだ。
物質的な豊かさに目覚めた人類は、その欲望を留めることなく増殖させた。その欲望と欲望とが合い争う局面も、また争いを巨大なものへと化けさせた。
空想科学小説の走りといっていいフランスのジュール・ベルヌは、科学の進歩性を信じる一方、人間の欲望のどす黒さをも分っていた。だからこそ、彼の作品は単純な科学技術への賛美に終わらない。あくまで主役は人間なのだと、強く訴える。
どちらかといえば、「海底二万哩」や「80日間世界一周」などの作品のほうが有名だと思うが、少年期の私の心に深く刻まれたのが表題の作品です。
技術の粋を集めた人口島を作るのも人間なら、それを破壊するのも人間。技術がいかに進歩しようと、人の心まで進歩させるわけではない。
いかにIT技術が進もうと、遺伝子改良技術が進もうと、人の心、道徳心までもが進歩するわけではない。科学の進歩が賛美された時代にあっても、その背後に潜む危険を予見したベルヌの慧眼には感服です。
西欧文明が世界の主流となりえたのは、その基盤に科学があったからだ。科学の進歩は、間違いなく我々の生活の質を向上させた。
化石燃料を燃やすことで得られる火力エネルギーの使用により生産力は飛躍的に増大した。鉄道や動力船、自動車といった運輸手段の高速化、大量化は世界を狭くした。医療技術の進歩は、生存率を高め、人口の増大に大きく貢献した。
なにせ蛇口を捻れば水が出る。スイッチひとつで部屋は明るくなる。かつては手に入らなかった食材も、よういに口に出来る。情報は多量にもたらされ、選択肢は限りなく拡がった。
だが、これで人は本当に幸せになったのだろうか。物質的な豊かさだけが幸せの基準ではない。物質的に貧しくても、幸せは十二分にある。要は気持ちのあり方次第なのだろう。
それでも科学の進歩は、多くの人に物質的な豊かさをもたらした。だが、その豊かさゆえに、争いもまた飛躍的に巨大化した。かつては不可能であった世界規模の戦争は、科学の進歩があってこそだ。
物質的な豊かさに目覚めた人類は、その欲望を留めることなく増殖させた。その欲望と欲望とが合い争う局面も、また争いを巨大なものへと化けさせた。
空想科学小説の走りといっていいフランスのジュール・ベルヌは、科学の進歩性を信じる一方、人間の欲望のどす黒さをも分っていた。だからこそ、彼の作品は単純な科学技術への賛美に終わらない。あくまで主役は人間なのだと、強く訴える。
どちらかといえば、「海底二万哩」や「80日間世界一周」などの作品のほうが有名だと思うが、少年期の私の心に深く刻まれたのが表題の作品です。
技術の粋を集めた人口島を作るのも人間なら、それを破壊するのも人間。技術がいかに進歩しようと、人の心まで進歩させるわけではない。
いかにIT技術が進もうと、遺伝子改良技術が進もうと、人の心、道徳心までもが進歩するわけではない。科学の進歩が賛美された時代にあっても、その背後に潜む危険を予見したベルヌの慧眼には感服です。