ヌマンタの書斎

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ペイオフ発動に思うこと

2010-10-19 13:02:00 | 経済・金融・税制
役人は執念深い。

つくづく、そう思う。もちろん個人差はあると思うし、置かれた立場、社会状況などにも変るのは当然だ。それでも、先月のペイオフ発動に潜んだ役人の怨念には、薄ら寒ささえ覚えずにはいられない。

もちろん、この怨念をもたらしたのは竹中元金融担当大臣への反発であろうことは想像に固くない。規制緩和と構造改革を声高に叫ぶ竹中氏は、金融庁及び財務省に強固な反感を生み出した。

ただ、当時は小泉という国民に人気抜群の政治家が竹中氏を後見をしていたが故に、いかな役人といえども、竹中の意に反した振る舞いは難しかった。

さらに言うなら、金融庁はもとより財務省にも構造改革路線を支持するグループはかなり居て、内心の反感はあっても竹中の意向に従うふりをして、自分たちの考える路線推進を目指したことも確かであった。

それでもだ、やはり竹中主導による金融改革は役人たちの間に根深い反感を育んだと思う。だからこそ、竹中と親交の深い木村剛氏が起した日本振興銀行が狙われたのだろうと、私は邪推する。

本来、日本におけるペイオフは、銀行の合併を促すための財務省及び金融庁の恫喝手段であった。嫌がる銀行経営者に合併を強要して、財務体質の弱い銀行を救済するための手段であった。

私は日本ではペイオフは実施不可能だと考えていた。ペイオフを実施すると、銀行口座を介した企業間取引に甚大なダメージを与えてしまう。だから、アメリカでは規模が小さく、地域経済に与える影響が少ないコミュニティー・バンクぐらいにしかペイオフは発動できなかった。

ところがだ、日本振興銀行の口座は企業の決済に使われることは少なかった。だからこそペイオフが適用できたのだと思える。

では、日本振興銀行はペイオフの対象として適切であったのか。詳しい分析をしたわけではないが、バブル崩壊後の日本の金融機関と比較して、それほど突出して財務内容が悪化していると断じるほどではないと思う。もっと内容が悪かった信組、地銀はあったように思える。

だから、金融不安を浮黷ス財務省サイドは、ペイオフという恫喝を用いてそれらの弱小金融機関の合併を強行した。合併により、多くの銀行が破綻から免れたのは事実だ。

しかし、竹中の盟友である木村氏が作った日本振興銀行は潰された。木村氏の経営手腕に問題があったのは確かだと思うし、すべからく銀行は合併により救済すべきだとも思わない。

だからペイオフは仕方ないと思わないでもない。ただいささか割り切れぬ気持ちも残る。合併により救済された地方の弱小金融機関には、経営者及び経営体質に問題があったものが少なくない。

新聞などはほとんど報じないが、地方議会を牛耳るボス的政治家が背後にいた某地銀とか、裏社会とのつながりが根強く噂された某信組なんざ、本当に救済する必要があったのか私は疑問だ。

率直に言って、木村氏の日本振興銀行よりも悪質と思える金融機関を救済したことは、金融機関のためにも良くなかったと思う。にもかかわらずペイオフが発動されたのは日本振興銀行のみ。

やはり私は、今回のペイオフ発動に反・竹中感情を感じてしまいます。
コメント
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