ヌマンタの書斎

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アメリカ帝国の悲劇 チャルマーズジョンソン

2010-10-18 12:56:00 | 
日本は戦利品。

ドキッとする言葉だが、これが戦勝国アメリカの本音だろう。公にされる文章などではお目にかからない言葉であることは認めるが、アメリカ人の本音としては「日本は戦利品だ」との意識は当然にあると思う。

アメリカという国が民主主義の国であることは否定しない。しかし、現在において世界最大の軍事大国であるのは事実だ。人類の過去の歴史における帝国と同じではないが、それでも新しい形態の世界帝国であるとの表題の著者の主張は、かなり説得力を持つ。

元来アメリカは軍事小国であった。ワシントンらの建国者は、軍人が権勢を盛んにしたがる現実を踏まえ、そうならないように軍人の力を抑える政策をとっている。

例えば民兵制度。これは軍が警察の機能を代行することがないように、民兵に警察機能を持たせてたアメリカ独自の制度だ。アメリカの建国者らは、かくも軍の拡張本能を怖れていた。

だが、歴史がアメリカを軍事小国であることを許さなかった。二つの世界大戦が、軍を飛躍的に拡大させた。なかでも特徴的なのは、直接戦闘に関らない軍事官僚たちが大幅に増えたことだ。20世紀のアメリカは、この非戦闘員たる軍官僚たちの拡大志向に、次第に染まっていくことになる。

結果的にアメリカは、世界各地に軍事基地を多数持つ、歴史上類を見ない軍事大国と化した。民主主義の国アメリカは、軍事力を背景とした世界帝国としての性格を持つに至った。

この過去に類例をもたない新たな形態の帝国の特徴は、被支配国に対して支配するのでなく、強い影響力を持つことにある。その影響力があることを隠すばかりでなく、自国の国民(議会対策でもある)にさえ、アメリカが軍事帝国である現実を隠す。

世界130カ国以上にアメリカ軍の施設を9百箇所以上持ち、25万人の兵士、30万近い非戦闘員による兵站支援をもって世界に君臨する。世界各国の軍人の教育を受け持ち、アメリカ軍育ちの士官、戦闘員を育て、彼らにアメリカ製の武器を買わせて、世界一の戦争商人として君臨する。

そして人道の名の下に軍事力を行使するが、やることといったら非人道的な戦闘ばかり。国際世論や、アメリカ議会がうるさくなると、民間軍事会社を利用して汚く残虐なことをやらせて誤魔化す。

しかもマスコミ対策に重点を置いているため、自国のマスコミでさえアメリカが世界規模の軍事帝国である現実に気がつかない。

いや、むしろアメリカにおいては軍事産業は、いまや自動車産業などの製造業を遥かに上回り、アメリカ社会を支える巨木と化しているがゆえに、安易な批判を受け付けなくなっている。

日本のマスコミは、巨大な軍艦、轟音撒き散らす戦闘機や戦車に気が取られて、それ以外の軍事部門を見過ごしている。世界各地に配備されたアメリカの基地の大半は、非戦闘的な設備が多い。武器の保管場所はもちろん、情報収集のための施設もまた、アメリカの世界支配に重要な役割を果たす。

覇権国アメリカのもう一つ別の姿を克明に描き出した表題の著作は、機会がありましたら是非目を通していただきたいと思います。
コメント (2)
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