ヌマンタの書斎

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日本サッカーの弱点

2012-04-06 12:53:00 | スポーツ

ホーム(自国)での国際試合においては、引き分けは負けに等しい。

逆に相手国にとっては、相手国(アウェイ)での試合で引き分けることは、事実上の勝利に等しい。これがサッカーの世界における常識だ。

この常識が分っていないのが、日本のマスコミ様だ。いや、もう分っていないとは言わせない。ホームでの試合では、絶対に勝たねばならぬ。すでに5回目のワールドカップ大会出場をかけた予選を取材しているマスコミ様が知らぬわけがない。

ところが、先週末に行われた女子サッカーの対アメリカ戦は、相も変らぬ絶賛の記事ばかり。ちなみに1-1の引き分け試合である。先制したのは良いが、試合全般とりわけ後半はアメリカ優位であり、耐え切れずに失点しての引き分け試合であった。

あらためて云うぞ。ホームでの引き分けは実質負けだ。これは批難に値する試合だ。嘘だと思うのなら、南米やヨーロッパで、自国の代表チームがホームで引き分けた後の各国のマスメディアの報道を見てほしい。

たとえ言葉が分らなくても、紙面が批難の大合唱であることが分る。CNNのスポーツ番組だと、批難どころか、罵倒とおちょくり、絶叫と悲嘆に暮れ、怒りに燃えるサッカーファンの姿が観ることが出来る。

何を云っているのか分らなくても、あれは観ているだけで批難し、怒り、嘆いていることが分る。こうして、マスコミやサポーターに罵倒されてこそ、代表は絶対に負けてはならぬとの自覚を強めて、チームは強くなる。それが世界の常識だ。

しかし、我が国は違う。ぬるま湯のように優しく美点だけを取り上げ、選手や監督を批難することを避ける。事実、翌日の報道の大半がそうであった。

おそらく、現在のマスコミ様にとって視聴率、購買意欲を掻き立てさせる最高のネタの一つが、昨年世界一となった女子サッカーだ。この人気を利用したいマスコミ様の本音は分らないでもない。

またスポンサー不足、資金不足に泣く女子プロサッカーの業界にとっても、マスコミ様に好意的に報道されることを歓迎する気風が強いのも事実であろう。

だが、これでは強くなれない。これまでマスコミ様にちやほやされて、増長して潰れた人気サッカー選手は数知れず。中田英や本田、長友なんて僅かな成功例であり、大半が挫けてしまった現実は報道されない。

褒めるべき時は褒め、批難すべきときは真剣に批難しなくてはいけない。

幸いなことに、監督も選手も分っているようだ。女子サッカーの世界ではアメリカは今だ実力世界一であり、日本はようやくまともに試合を出来るようになった程度のレベルであることを。

率直に言えば、大黒柱の沢抜きで、あそこまで戦えた事実は進歩の証であるのも事実。親善試合だからこそ、アメリカはあの程度の気迫で済んだが、本気の時のアメリカは日頃の倍の実力を出してくる。

ベテランの選手たちは、そのことを知っているからこそ、おそらく慢心していないと信じたい。女子サッカーは、男子に比べて不遇であり、実力に相応しい待遇を受けてこなかった過去を思えば、ようやく一面で報道されるようになったことは喜ばしい。

しかし、低レベルな報道に終始するマスコミに慢心して、堕落する危険性が私にはどうしても気がかりでならない。どうしたって心配してしまう。幸いにして、昨日ブラジルに大勝して優勝したので杞憂に終わったのが嬉しい。

余談だが、先月末に行われた男子のワールドカップ三次予選の最終戦は、ホームで首位のウズベキスタンを迎えての不様な敗戦であった。原因は分っている。

既に最終予選突破を決めている日本の選手たちは、翌週にはJリーグの開幕を控えており、また海外チームでプレーする選手たちも、ここで怪我なんかしたくない。

だから実力の7割程度でお茶を濁したプレーに終始した。一方、ウズベキスタンの選手はモチベーションが違う。日本での試合なら、海外とりわけ欧米のスカウトの目に留まる可能性が高いことを知っている。

だから若手といえども目の色を変えてプレーしてくる。おかげで一対一の場面で、日本の選手はほとんど競り負けていた。これでは勝てるわけが無い。

で、翌日のスポーツ報道は、どうであったか。もし機会があったら読んでおいて欲しい。あの記事が、今の日本のサッカー報道のレベルの低さの証拠である。

もしブラジルやイタリア、ドイツ、アルゼンチンあたりであったら、自国の試合であのような不様な負け試合をやれば、非難の大合唱であることは間違いない。

いまや日本サッカーの最大の欠点の一つが、まともな報道ができないマスコミにあることが明白になった。非難するばかりが報道ではないが、褒めるべき時と非難すべき時をしっかりと分けて欲しい。

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