良かれと思ってやったことが、裏目に出た時の虚しさは心に深い闇を埋め込む。
あの時は本気でそうすることが、当人に良いことだと信じていた。他の選択肢は考えられなかった。だからこそ、敢えてあのようなことをしたんだ。
だが、結果は見事に無残に期待を裏切るものであった。結局悪い方、悪い方へと押し流されてしまい、あの時の善意は、むしろ事態を悪化させただけだと気づかされる虚しさ。
パーフェクトワールド(完全な世界)なんて望まなかった。ただ、ただ、ほんの少しでいいから今よりも良い世界であって欲しかった。ただ、それだけだった。
自らの欲でもなければ、栄誉でもなく、相手を慮ってのことであることは、今でも確信している。その純粋な善意が裏目に出てしまうなんて、予想もしていなかった。
美しくもなく、哀しくもないが、善意が裏目に出たどうしようもない悲劇が深く心に刻まれる名作が、映画「パーフェクト・ワールド」だ。映画で御覧の方もいるかもしれない。
人として善意の限界があることを痛感しつつ、それでも善意が実って欲しいことを切望してしまう。不完全な人間だからこそ、少しでも完全なものを望んでしまう。
たとえ失敗した善意であろうと、その失敗が新たな成功へとつながることを心底願ってしまう。ちなみに表題の作品は映画のノベライズ化だ。無理に読む必要はないと思う。
でも映像で楽しむのもいいのですが、映画で見逃した細かい部分はきっとあると思うので、文章でじっくり堪能するのもありかな、と思います。