ヌマンタの書斎

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サイレントヴォイス行動心理捜査官・楯岡絵麻 佐藤青南

2016-08-01 12:42:00 | 

安易に他人の心に踏み込んではいけない。

人の心は、無意識に態度に顕れる。嘘を付いた時だけに顕れる特有の仕草などから、本当の気持ちが読み取れる・・・ことがある。それを学問的に体系化したのが、行動心理学である。

私も何冊か読んだことはあるが、頷ける点も多いし、いささか背筋が寒くなるような気にもなる。なくて七癖、自分が気が付いていない、特殊な癖ってあるのだろうと思う。

もっとも、行動心理学を学んでいなくても、無意識にそれをやっている観察力のある人は少なくない。どちらかといえば、女性に多いように思うが、女性は無意識にそれをやっているように思う。

男性の場合は、ある程度意識して観察し、それをシステム化させて、活用しているように思う。いずれの場合であっても、一番難しいのは、自分自身の無意識行動を認識し、それを抑制することではないかと思っている。

職業でいえば、占い師などは、この行動心理学を商売に活かしているのではないかと思う。あと、誤解と偏見を恐れずに云えば、人気のある宗教家や政治家である。詐欺師などにも、その使い手は多いのではないかと私は考えている。

彼らの大半が、大学などで行動心理学を学んだのではなく、日常的に意識して習得している。実務のなかで磨き上げているとも云える。ただ、問題なのは、中途半端に行動心理学を学んた人だと思っている。

テキストと講師の話だけで、自分が行動心理学を習得できたと想い込み、それを現実に活かそうとする。気持ちは分かるが、実地経験が不足しているので、引き時を知らず、暴走してしまうことがあるように思えてならない。

以前、ネット上の掲示板で、そのような実例をみたことがある。きっかけは些細なひと言であった。その人は状況を自分なりに分析して、それを寸評のような短文で書き込んでしまった。分析された当人はいたく憤慨して、結果的にその掲示板が閉鎖に追い込まれた。

あまりに軽率な書き込みであったが、やらかした当人は最後まで自分が間違っているとは思わなかったらしい。傍観者であった私からすれば、あの余計なひと言が、すべての始まりであったことは明白だった。

行動心理学は無意識の態度から、その人の本音に食い込んでいく。人の気持ちに踏み込む以上、それなりの覚悟と配慮が必要だと思うのだが、それが足りなかったことが、結果的に人間関係を破綻に追い込んだ。

学んだ知識だけでは足りない。その知識という骨格に現実の経験という血肉が備わるまで、安易に使うべきではなかった。想像だけど、相当に勉強したのだと思う。頭のイイ人だったけど、知識に振り回されていたことに気が付いていなかった。

表題の作品は、行動心理学を駆使して容疑者から真実を引き出す女性捜査官が主人公の短編集である。たいへん、読みやすく、楽しめる。私はまだ、これ一冊しか読んでいないが、シリーズ化しているようなので、じっくり楽しもうと思っている作品です。

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