ヌマンタの書斎

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生前退位に思うこと

2016-08-16 13:24:00 | 社会・政治・一般

少し腹立たしく思っている。

今上天皇が生前退位のご意向をヴィデオ画像を通じて、国民の前に明らかにしたことは既に広く知られている。

はっきり言うが、これは皇室に関する法令に不備があることが明らかになっただけで、法令を改正すればいいだけ。天皇の生前退位なんて、日本の歴史では幾度となくあったことは、中学生の歴史知識でも分かることである。

ところが、既にマスコミを騒がしているように、やれ国体の危機だとか、憲法改正だとか、余計な騒ぎが巻き起こっている。いい加減にしろと言いたい。

高齢の天皇陛下に激務を押し付けておいて、なにが国体の危機だ。話をやたらと広げて、なに足を引っ張っているのか。要は、自分をアピールしたいだけではないかと、意地の悪い私は考えている。

現状維持こそが、仕事だと思っているバカ役人の集まりである宮内庁は、さっさと生前退位の為の法令の準備に入れ。いくら実権無き形式的存在であるとはいえ、高齢者をこき使うな。内閣はうだうだ時間稼ぎして、余計なことをせずに、さっさとやるべきことをやれ。

それなのに、識者やら保守系論者とやらが、賢しげにここぞとばかりに余計に話を拡大して、おかしな方向に持っていこうとする。まったくもって、戦前と変わりがない。

明治天皇から昭和天皇に至るまで、天皇個人の意思が政治に反映したことは、ほとんどない。政治的実権を握った天皇なんて、ここ数百年、後醍醐天皇以降ただの一人もいやしない。

常に時の権力者に権威づけするだけの形式的存在となることで生き延びてきたのが天皇である。常に権力者の道具であり、立派な形式として権力者の威光を飾ってきたにすぎないのが天皇だ。

だから、満州事変も日華事変も、天皇のご意向なんて気にも留められなかった。美濃部博士の天皇機関説は、ある意味本質を突いているからこそ、軍部に嫌われた。天皇は、戦争を拡大を望む軍部と財閥、政治家らに利用されてきたに過ぎない。

お気の毒なことに、太平洋戦争の敗北以降、平和な昭和の時代に入っても、天皇は常に時の権力者の道具であった。歴史ある天皇制度は、混乱するはずの戦後の日本をまとめる道具であった。外国向けには貧相な首相なんぞよりも、はるかに威厳のある天皇との会見の方が、役だっていた。

天皇は常に日本の政治権力者たちの道具に過ぎなかった。だから、その権力者が戦争を望めば、天皇を旗印にした戦いが起こり、平和を望むのならば、天皇を外国に親善大使として送り込ませる。

天皇個人の意思なんて、ないがしろにされてきたのが実態である。その道具が御年を召されて激務が辛かろうが、所詮道具に過ぎない。だから、内々に生前退位を希望していても、宮内庁も政府も、その個人的希望など踏みにじってきた。

太平洋戦争の敗戦に対する真摯な反省を避けてきたのは、左派文化人だけではないことが良く分かる。右派というか、保守においても、やはり敗戦の反省を十分していないこと。だからこそ、今も平然と天皇を利用しようとする。

この気の毒なご老人に、静かな老後を与える程度の温情するないらしい。まったくもって、腹立たしい。

コメント (4)
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