ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

アラクニド 原作・村田真哉 作画・いふじシンセン

2018-04-02 12:00:00 | 

もし昆虫が人間と同じサイズであったのなら、地球の支配者は昆虫であったはずだ。

昆虫が地球に現われたのは、今から4億年以上前である。基本的な身体の構造は、当時既に完成していた。今よりもはるかに温暖であった時代には、昆虫も今よりも遥かに大きなサイズであったことが、化石などから立証されている。

ただ、当時から恐竜をはじめ、昆虫よりも身体の大きな生物が多数いた。考えたくない想像だが、もし昆虫が恐竜と同じサイズならば、恐竜は昆虫のエサであったはずだ。

決して妄想ではない。現在でも、小鳥やトカゲを捕食するカマキリや蜘蛛は実在する。自分よりも身体の大きな生物を捕獲することにかけては、昆虫の右に出るものはいない。

虎やライオンでさえ、昆虫と同じサイズであったのならば、昆虫の敵ではない。それほどまでに、昆虫の身体能力は隔絶して凄まじい。その昆虫の能力を、人間に持たせることで、スーパーヒーローを作り上げたのは、「仮面ライダー」の作者、石ノ森章太郎であった。

その数十年後に後、週刊ヤングジャンプ誌に連載されて人気を得たのは「テラフォーマーズ」であった。昆虫の特性を外科的手法で人間に移植して、進化したゴキブリと戦う物語は絶大な人気を誇った。しかし、現在は作者、病気療養中で休載している。

その「テラフォーマーズ」に先行して、昆虫の能力を活かした作品として登場したのが表題の漫画である。ただ、掲載していた雑誌がマイナー誌であったため、世間的な認知度は低い。

興味深いのは、昆虫の特性を外科的手法で人間に与えるのではなく、人間の資質を活かして昆虫の特性を持たせる手法をとっていたことだ。実際、この作品の主人公は、腕力が強いわけでもなく、外見は普通の女子高生である。

ただし、先天的集中力過剰といった特殊な能力をもっている。やもすると、日常生活ではハンデになりかねない精神特性ではあるが、その異常な集中力をもってして繊細な蜘蛛の糸を張る。

その蜘蛛の糸を通じて情報を得て、防御を固め、攻撃する。望まずして得た特殊な能力ゆえに、その才能を活用しようとする組織と軋轢を生み、結果として追われる立場になる。

彼女を追尾するのは、やはり虫の特性を活かした特殊能力をもった蟲と呼ばれる殺し屋たちである。外見が普通の人間でありながら、その特殊能力ゆえの異常なバトルが面白い漫画であった。

過去形で述べたのは、既にこの2月に中途半端な形で連載が完結しているからだ。原作者の村田真哉は私が以前から注目していた若手の一人なのだが、最終巻で率直に、連載を終わらせた理由を述べている。

それはある意味、非常に率直で謙虚な理由ではあったが、同時に原作者としての未熟さを示したものでもあった。私はこの彼の言い訳を読まなければ、このブログで本作を紹介することはなかった。

ある意味、完結させることに失敗した作品なのだが、原作者の正直な言訳は、当人自身がその未熟さを自覚したうえで、更にその先に進みたいとの意志表明でもあったと思う。

マイナーながら、コアな漫画ファンの間では評価の高かった作品だけに、いずれ形を変えて再連載されると思う。その時こそ、今回の失敗を活かした作品を提供してくれるものと私は信じています。

コメント
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