ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

韓国からの手紙 TK生

2018-04-16 14:51:00 | 

かつて進歩的文化人と呼ばれた言論人たちがいた。

誰がわざわざ進歩的などと呼んだのかといえば、当の言論人たちである。いわゆる自分ageとでもいうのか。まァ、羞恥心に欠けていることは間違いない。

ちなみに、なにが進歩的なのかといば、社会主義こそが人類の未来に相応しい思想であり、未だに資本主義社会に甘んじている遅れた大衆に対して、賢明な自分たちを進歩的だと規定していたらしい。

その所謂進歩的な文化人としては大江健三郎が有名だが、スポンサーとして、またプロデューサーとして、岩波書店の月刊誌「世界」の編集長であった安江良介を挙げなくていけないと思う。

表題の作品は、雑誌「世界」に十数年連載されていたもので、「韓国からの通信」としてまとめたものだ。

今となっては、わざわざ読む価値のない作品なので、先に結論から言ってしまうと、これは安江が企画した情報工作である。進歩的文化人としての確固たる自覚のある安江にとって、朝鮮半島の南はアメリカの傀儡であり、朴大統領の支配下で軍事独裁体制をとっていることは悪である。

だから、あることないこと入り混ぜて、大手のTV、新聞が取り上げない悲惨な韓国の実情を告発したものとなっている。当の韓国人がビックリの内容なのだが、自らの正しさを盲信している安江にとっては、事実と遠く離れていようと気にしなかったらしい。

私が十代前半の頃は、右手に朝日ジャーナル、鞄の中には世界を入れてあることが、進歩的な学生のあるべき姿であるとされた・・・らしい。らしい、と書くのは、私の周囲でもそんな若者は少数派であったからだ。

もちろん、そのような若者は実在したが、子供であった私の目からは、理論先行で、現実についていけてない頭でっかちな若者が、知的流行に合わせようとして、粋がって装う姿に見えた。

なぜに少数派であったかといえば、当時既に韓国は台湾、香港、シンガメ[ルと並び経済的に発展を遂げており、TK生からの報告はかなり現実離れしていることが実感として分かっていたからだと思う。

なによりも、当時若者たちの間では、左翼活動=内ゲバとの印象が強く、左翼思想=進歩的というよりも、むしろ暴力的、あるいは現実離れとの印象が強かったからだ。

学校と云う箱庭の中で、左翼思想に未来を夢見るだけなら良かったが、いざ社会の荒波に洗われれば、左翼思想が上手くいっていないことが分かってきてしまうからだ。

それゆえに、左翼勢力は大衆からの支持を失い、少数派に堕ちてしまった。当然に進歩的文化人は姿を消したが、若かりし頃に彼らに影響を受けた心情的左翼は、未だ生き残っている。

労働組合とか、学校とかに棲息しているようだが、マスコミ業界にも少なからず生存している。決して過去形ではなく、今も脈々と生き残っている。

現実を観ずに、脳内お花畑で陶酔している彼らの愚かしさを知るには、表題の本はかっこうのテキストだと思います。まァ、わざわざ読む価値があるかは疑わしいのですがね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする