ヌマンタの書斎

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人類が消えた世界 アラン・ワイズマン

2018-04-24 11:55:00 | 

藍藻(らんそう、blue-green algae)は、藍色細菌(らんしょくさいきん、cyanobacteria)の旧名である。藍色細菌は、シアノバクテリア、ラン色細菌とも呼ばれる細菌の1群であり、光合成によって酸素を生み出す酸素発生型光合成細菌である。(wikiより引用)

この宇宙に地球と云う惑星が誕生して以降、もっとも破壊的な活動をした生物が、このシアノバクテリアである。太古の地球において、光合成を大規模に行い、酸素という恐るべき物質を大量に放出して酸化という破壊を引き起こした。

当時の生物は皆、嫌気性であり、この猛毒である酸素によりほぼ絶滅に追いやられた。

地球の歴史において、巨大火山活動や、全地球氷結現象、あるいは小惑星の追突などで、大量の生物が死滅したことは何度もある。しかし、生物が引き起こした破壊活動では、このシアノバクテリアによる酸素放出こそが最大のものである。

では、二番手になるかもしれないのが、我々人類である。

この二足歩行直立猿人は、道具を駆使し、文字により知識を世代を超えて伝達し、集団で効率的に活動して、地球の大半を生息域とすることに成功した。

この人類と自称する生物は、環境を自分たちの都合の良いように変える能力が高い。まず牛や馬を家畜として入手し、森を焼き払い、原野を焼き払い牧草地に変えてしまた。

それだけでは済まさず、恒久的に食料を得る手段として土地を耕作して、農作物を大量に採取することを始めた。この農業こそ、食料の大量備蓄を可能にし、労働に従事しない支配階級を生み出す源泉となった。

これにより、多くの動植物が生息域を追いやられ、なかには絶滅したものも少なくない。だが、その後の工業と大量生産の結果としての産業廃棄物に比べれば、遥かに農業や牧畜業はマシだった。

化石燃料を燃やすことで強力なエネルギーを得た人類は、地球の資源の独占を図り、自分たちの都合だけで山を切り崩し、海を埋め立て、湖を枯渇させ、新たな砂漠を増やし、環境破壊を推し進めた。

なかでも最悪だったのは、その進んだ科学力を使い自然の力では分解できない汚染物質を世界中にばら撒いた。馬鹿らしいことに、その合成した化学物質は人類自らをも傷つけた。

当然に人類以外の生物にも、多大な被害をまき散らした。

そんな環境汚染、環境破壊を得意とする人類の所業を、分かり易く解説してくれたのが表題の作品だ。

私はこの作品を、まず先に映像番組で見てしまった。ディスカバリーチャンネルで特番として放送されたもので、かなり衝撃的な作品であった。ある日、突然に人類がいなくなったら、世界はどうなるのか。人の管理がなくなった多くの建造物が壊れ、工場地帯は炎上し、ダムは崩落して大洪水を起こす。

人がいなくなったことで、自然の逆襲が始まり、人の痕跡は消えていく。文明の象徴であった都市は崩壊し、農地や牧草地は荒野と化し、動植物に浸食されて、人類がいたことさえ分からなくなる。

だが、数千年、いや数万年たっても残る、いや消えてくれないのが環境汚染物質である。人類の生み出した最も強固で、最も悪質な遺産こそが、人類の証として残ってしまう。

映像だけでは伝えきれなかったことが、表題の作品から読み取れる。是非とも一読して欲しい。できたら映像作品も観て欲しい。それだけの価値のある作品だと思うが故にです。

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