堀江・前ライブドア社長に思うこと

人物評価は難しい、ここ最近のライブドア・堀江前社長に対する報道をみていると、つくづくそう思わざるえません。堀江氏が現在、罪を問われているのは、粉飾決算や不当な情報公開による株の売り抜けを行い、多数の投資家を偽り、損害を与えたことに対してです。しかし、最近の報道をみていると、堀江氏の人格や発言を非難したものが目立つ。

私が渋谷界隈のＩＴ企業と関わりをもっていたのは、４年ほど前です。当時破綻していたライブドアというインターネットプロバイダーが、新しい経営者を迎えて立ち直った聞いて、やっとまともな経営者が登場したなと安堵したものです。

当時雨後のたけのこの如く乱立したＩＴ企業は、放漫経営が多く、私の関与していたＩＴ企業もご多分に漏れず、既に破綻処理に入っていました。今だから言えますが、学生のサークル活動を、そのまま会社組織にしてしまった感が強く、なにより彼らには社会経験が不足していた。また技術者が独立しての起業も多かったのですが、いかんせん営業力がない上に、コスト意識が希薄で赤字垂れ流しだったのが、強く印象に残っています。

そのようななかから、再生して生き残ったライブドアという会社の名前を再び目にしたのは、プロ野球の近鉄買収騒動でした。いいところに目を付けたなと、感心した覚えがあります。このとき始めて堀江という人が社長であることを知りました。少なくとも、この頃までは、私は堀江社長とライブドアに好意的でした。バブル崩壊後の閉塞感が強かった日本に、新風を吹き込んだ気鋭の経営者であったと今も思っています。しかし、その評価が逆転したのは、ニッポン放送とフジＴＶとの買収騒ぎでした。

あれから紆余曲折を経て、今日の逮捕となるわけですが、その間に何が堀江社長にあったのでしょうかね。少なくとも、株式分割や法の隙間を潜り抜けたＭ＆Ａにのめり込む前までは、いたって普通の経営をしていたように思うのです。私は時価総額を中心においた経営が間違っているとは思いません。Ｍ＆Ａは、これからの日本において必要な経営手法の一つです。

ライブドアは、ＩＴ企業というより、むしろ投資ファンドがその実態であるようです。それはそれで構わないのですが、いったい何が間違っていたのでしょう。資本主義社会において、金を目的にすることは当然であり、卑下すべきことではありません。しかし、その金を求める行為の背景にあるものこそが、実は大切なのではないでしょうか。

戦後の廃墟のなかから、私たちの親たちは立ち上がり、エコノミック・アニマルと揶揄されながらも、日本を高度成長に導き、今日の繁栄を築き上げました。彼らもまた、利益を上げることを盲信し、邁進してきたわけですが、ホリエモンと何が違うのでしょう。ホリエモンは何を間違えたのでしょう。

それは公共的精神、あるいは哲学の欠如といってもいい。金だけに捕らわれ、固執する生き方が、多数の投資家を騙してまでして、それを正しいと確信する頑迷な愚かさを育んだのではないか。やたら経営の神様として祭り上げられている松下や本田にしたところで、問題がなかったわけではない。それでも彼らが尊敬されるのは、社会に対する貢献があったと認められているからです。

残念ながら堀江氏は、投資家をぬか喜びさせ、閉塞感を持つ若者に空ろな期待感を持たせた以外、なにも社会に貢献していない。なにも・・・は少し言いすぎかな。少なくともライブドアという、なかなかに人気のあるＩＴプロバイダー業者を育てたのだから。

とはいえ、堀江氏はまだ若い。多分、有罪になっても実刑は免れる可能性はあると思う。その後の堀江氏が、なにをするか、なにをしないかは十分注目に値すると思います。