ここで、私自身の考えを述べたいと思います。私がストック・オプションのことを知ったのは平成7年くらいだと記憶していますが、実務で直接携わることはありませんでした。
ただ、その当時は所得税基本通達から推察して、一時所得ではないかと考えていました。しかし、実際に企業においてストック・オプションが運用されている実態を知るに及び、その性格は成功報酬的な賞与であると認識し直すに至っています。
ところが、そこで問題になるのが給与の定義です。雇用契約に基づく対価の支払いを給与と規定した場合、雇用契約が存在しない場合でも成立するストック・オプションを給与と認定するのは、租税法律主義の観点からは、難しい側面があることを否定できません。
当時、日本マクドナルドの創業者である、藤田氏のストック・オプションが新聞紙上で話題になっていました。税理士会支部の部会の集まりの後、喫茶店でこのことが話題になりました。なお、あくまで世間話としてであり、誰も藤田氏とは業務上の関わりがなかったことをお断りしておきます。
藤田氏は、日本マクドナルドの役員でしたが、ストック・オプションにより付与されたのは、アメリカのマクドナルドの株式であるそうです。だとすると、藤田氏とアメリカのマクドナルドの間には、雇用関係は存在しないわけで、これを給与とみなす根拠はあるのだろうか?その場にいた税理士は、半々で給与説、一時所得説に分かれていましたが、いずれの側も給与としての性格を認めつつも、法的根拠に乏しいことは、程度の差こそあれ認めざる得ませんでした。
その後、税務訴訟が相次ぎ行われ、判決がいくつも出ましたが、いずれも給与であることの法的根拠には詳しく触れていません。
また、ストック・オプションで付与された株式が下落した場合を考えると、本人の労働の対価の結果とは必ずしも直接的に関係しない要因で価格が上下するようなものを、給与としてしまうことは、民法及び労働法の観点から適切といえるのか、いささか疑問が出るところでもあります。このあたりに触れていたのが、東京高裁の藤山裁判官でした。最高裁で逆転してしまった藤山判決でしたが、その判決文には考えさせられる部分が多かったものです。
結局、2度の最高裁判決でストック・オプションは給与であると決め付けられましたが、私個人はあまり納得していません。少なくとも所得税法改正以前の申告については、過少申告加算税の賦課は取り消すべきと考えています。
ストック・オプションに関して、大変興味深く読ませていただきました。
ちょっと気になっているのですが、例えば修正申告の期限についての問題はないのかということ。
もちろん、納税は国民の義務なので、納めるべき税金はきちんと納める、間違えてたら修正するというのは当たり前のことなのでしょうが、修正申告は期限なしというのはちょっと酷なものかと。
更正の請求はたった1年なのに。
「質疑応答集」を参考にしたり、税務署等に問い合わせた場合でも、あとで修正申告になったり過少申告加算税がかかったりしてきます。
う~ん、税の世界は矛盾だらけです(笑)。
ちなみにストック・オプションでは、修正申告に応じてしまうと訴訟が出来ないので、更正決定の処分を受けての税務訴訟が多かったはずです。もちろん、諦めて修正に応じた人も多数いたようですがね。