羽がなくても空は飛べる。
その代表が蜘蛛だ。蜘蛛は幼生体の頃、風が吹く日に高いところに登り、糸を長く吐き出す。その糸が風に巻かれて舞い上がるのに合わせて自らも風に乗って飛行する。
羽がない蜘蛛が、生き残るために密集を避けて分散することで生存率を高める知恵である。
1995年のことだが、日本国内で珍しい蜘蛛が見つかった。調べてみたらオーストラリア原産のセアカゴケグモ(背赤後家蜘蛛)であった。どうも輸出貨物に紛れて日本にやってきたらしい。
このクモは毒蜘蛛であり、特にメスの毒性は強く危険な外来昆虫だと認識された。本国オーストラリアでは血清が用意されていほどであるが、元々は暑い地域の蜘蛛であるから、日本の冬は乗り切れないとの楽観的な見方もあった。
当初は大阪周辺の港湾都市だけであったが、気が付いたら北海道から沖縄まで広く分散していた。幸い攻撃性は少なく、こちらから手を出さない限り、噛まれることは少ない。
春から秋は郊外でも生息できるが、寒くなると冷暖房機の室外機や、冷蔵庫、TVの裏など暖かい場所に潜むので注意が必要となる。オスの毒性は弱いが、メスの毒性は強く、時にはショック症状を引き起こすことがあるから油断は出来ない。
ただ、国内では重篤な症例はなく、あまり恐れる必要はないと私は考えている。
もっとも、これは私がわりと蜘蛛を好きだから、そう甘くみてしまうのかもしれない。我が家にもしばしばハエトリグモが出没するが、こいつのおかげでゴキブリが激減したのは確かだ。おそらくだが、ダニなども食べてくれているらしい。
蜘蛛はその外見から嫌われることが多いが、人間にとってはむしろ益虫ではないかと思う。蚊やハエ、ゴキブリ、ダニなどを捕食する蜘蛛は多く、逆に人間に対して攻撃的な蜘蛛は、ほとんどいない。
ただし、こちらから手を出すと防衛本能から噛みついてくる。また、寒い時期はわりと人家の近くに棲息することが多いようなので、知らずに蜘蛛を刺激してしまうこともある。
でも致死性のある毒ではないので、そこは寛容に許してあげて欲しいものです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます