入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

    ’16年「秋」 (41)

2016年10月08日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 午前7時。気温12度C、天気雨。つい先程までは曇り空で、それが却って、深まる秋の山の朝にはふさわしかった。ところが雨音がしたと思ったら、追いかけるように霧も降りてきて、もうすっかり白い闇が視界を隠してしまった。
 今朝はこれから、一昨日捕獲した7頭の鹿の殺処分をしなければならないが、まだ誰も上がってこない。鉄砲撃ちの彼らも実際は鹿どころではなく、遅れている稲刈りに後ろ髪を引かれているに違いない。まあそれでも、これだけの雨になれば、その諦めも付くはずだ。

 囲い罠のすぐ傍のダケカンバの林まで、牛が何頭も来ていた。銃声に対してどんな反応をするのか不安だったため、とりあえず塩場まで牛を誘導した。ところが2頭だけが何かにこだわって、いくら呼んでも来ようとしない。よく見ると、それはフェンスの向こう側に倒れている1頭の鹿だった。同じ偶蹄類、感ずるところがあったのかも知れない。ともかくこれで1頭増えて、今回の捕獲頭数は8頭になった。
 銃声がした。鹿が一斉に走り出した。驚いたことに、牛はその音に怯むどころか、逃げ惑う鹿の様子を見ようと全頭が囲い罠の柵に集まってきた。こうなるとどう見ても、牛は鹿に対して他の動物とは違った関心や、同族意識があると考えざるを得ない。もしかすれば、牛は鹿のことを鹿と思わず、誰か他の牛が産んだ子牛くらいに思っているのかも知れない、そう見えた。今日の写真はその様子を写そうとしたのだが、残念ながら遠すぎてハッキリとしない。
 
 射手3人で、雨や霧といった悪条件の中、それほど時間をかけることなく処分は済んだ。今回は雄鹿が2頭入っていたから、有害駆除の効果も大きいと思っていた。ところが、回収してきた死体の中に肝心の雄が1頭いなかった。どこかに倒れているかと探してみたが見付からない。逃げたとは考えにくいが、罠の中にいないとなれば、そう思うしかない。
 それにしても不思議だ。角があるから、隙間から逃げるのは雌鹿よりも困難であることは、これまでの例でも分かる。となるとあの雄鹿は、2メートル20センチのフェンスを「駆け上がる」という、今まで鹿が一度も見せなかった逃亡方法を身に着けた天才だったのか。そして今頃天才は、危機一髪を脱した体験と、駆け上がりの新技術を仲間の鹿に教えている最中かも知れない。

 こんな天気の中、犬を連れたキャンパーが一人やって来た。
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