昨夜の雨で木々はまた大分葉を散らしたが、それでも秋はよく持ちこたえている。朝方まで雨だったようだが、芝平の谷を上るころにはすっかり晴れ上がり、気持ちの良い秋日和となった。
さて昨日の続きになるが、白岩岳およびその周辺の山域は滅多に訪れる人もなく、南アルプスの静かな環境が守られている。ただそこへ至る登山道は、釜無山から踏み跡のはっきりとしないクマ笹の稜線を超えて行くか、昨日も述べたように小黒川林道の旧営林署作業小屋から尾根を急登するしかない。いずれも、あまり一般向きとは言えない。
それで、もう少し違ったアプローチの方法がないかと、以前から持っていた案の一つを、種平小屋の高橋夫妻と一緒になって試してみようということになって、一昨日の山行となった。なお、高橋氏ともう1名N君とで、すでに先述のように一度この沢に入渓し、1千700メートル付近までは踏査済みとなっていた。
コースタイム
7:00 出発(小黒川徒渉)
9:00 1千700メートル
10:15 2千000メートル
12:45 白岩岳山頂
13:15 山頂出発
15:30 営林署作業小屋跡着
前回は、笹平沢が三方に分かれる1千600メートル地点で、真ん中の沢を地図に従ってさらに遡行し、途中から左に落ちてきている尾根の山腹に取り付いたが、今回はその沢に入らず尾根の正面を登ることにした。そして1千900メートルくらいまで登ってから右に斜上し、2千メートルの稜線上にある鞍部に出ようというのが大雑把な計画だった。
急登する尾根では、獣道だか古い作業道だか分からない踏み跡がやたらと交錯してくるので、登路を尾根の主稜から外さないように注意し、あとはひたすらがむしゃらに高度を稼ぐことだけに専心した。2時間ほどの苦闘だった。
秋の柔らかな日を浴びた稜線では、左右に開けた雄大な眺望が待っていた。まず千丈岳が姿を現し、次いで釜無川の支流が削った荒々しい沢のその上部に、鋸や堂々たる甲斐駒が目を引き、その奥に北岳がドッカリと構えるように山容を見せていた。さらに細い稜線の右手に目を転ずれば、中央アルプスや北アルプスが、遥か南から北方まで峰々を並べて続いていた。
また鞍部からは、富士見へと下っていく道らしきが、クマ笹の生い茂る斜面に微かに見て取れた。こんな険しい山道を一体どういう人が歩いたのかと、いつのころとも思い当たらぬ時代の旅人のことが頭の中をよぎった。(つづく)
富士見からの交通規制は11月6日まで、7日から11月一杯は規制がなくなります。冬季の営業についてはカテゴリー別の「27年冬季営業」を
参考にしてください。