
雨が降っている。時々遠くを走る車の音に、雨だれの音がかぶるようにして聞こえる。濡れそぼつ外の風景をが眺めながら何となく余裕を持っていられるのも、或いはまたこの時季の雨の方が梅雨時の雨よりかやわらかな暖かささえ感じられるのも、一雨毎に自然の生気を活気づをかせ、待ちあぐねていた季節を、春の雨が引き寄せてくれていると思うからだろう。信州のここらでも梅の花の蕾や、ボケの花の蕾も、もうそれほど日数をかけずに開花するに違いない。
桜の開花も、例年より早まりそうだというようなことを耳にした。3月も終わるころ、都会での各地の花見の喧騒が伝えられ、それから1ヶ月くらい遅れて高遠城の花見が始まる。4月20日から牧場の仕事が始まり忙しくなり、その間にも季節は進みはするものの遅く、新緑の中に山桜の花を目にするようになるのはもっと先の、5月中頃になるだろう。以前は東京で、信州の里で、そして牧場でと、桜の花を毎春3度も眺めることができた果報贅沢者だったが、今は東京の桜にはご無沙汰を決めてしまっている。
毎年のように思うことだが、華やかな薄桃色をした花弁の大きな里の花よりも、遅れて咲く山桜の控え目で清楚な姿に、より惹かれる。殆ど知られていないが、牧場にはそういう山桜の木がたくさんあって、その中でも特に気に掛けている古木が何本かある。年によって咲き方は違うが、五月晴れの真っ青な空、残雪の空木岳を絶対条件にして、散りばめられたように咲く可憐な花を、もう10年以上も毎年欠かさずに愛で、眺めてきた。
ここ何年かの中にはそういう古木が倒れたり、双幹の一方を腕を失うように雪や風に折られたりということもあった。いつも同じ春ではないが、それでもこのころの山や牧場は、1年の中でも最も旺盛な、美しい季節を迎える。
光の明度が上がる、春の入笠牧場が待っています。"Rancher Bar"は、管理人の酒類の在庫、いよいよ僅小につき、当面は各自持ち込みにてお楽しみください。
営業については以下をクリックしてください。「冬季営業の案内(’17年度」は、前年のものを流用している部分もあって、段落や改行がおかしく、見苦しいかも知れませんが何卒ご容赦を。