入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

   ’18年「春」 (23)

2018年03月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 千丈岳。もう少しすれば、ここからの山容を毎日のように眺めることになる。

 

 今更、もう登りたい山などないと決めてしまっていたが、阿弥陀の南鐐だけは何故か例外だった。昨日そこで事故が起き、死亡者も出た。
 もう何十年も前のことだが、初めての冬山は越年山行となり、この南稜経由の阿弥陀岳だった。Nと、Kさんの3人で、今でもこの時の楽しかった山行は鮮明に覚えている。その後も何度も登っているから、事故現場はすぐ分かる。長い尾根歩きから稜線を外れ、少し山腹を西側に巻き、それから核心部であるガリー(=岩溝)を直登していくのだが、順調にいけば頂上までは30分ぐらいだったろうか。
 事故を起こした人々は核心部ではアンザイレン(ロープで結び合うこと)していたようだが、おそらく途中で誰かが滑落し、全員がそれに巻き込まれたのだろう。7人の男女がどのような方法でそれをしていたのか、新聞記事からは詳しくは分からないが、そこが肝心な点である。安全度を高めようとしてロープで結び合った結果が、仇になってしまった可能性が高いからだ。
 ロープは正しく使えなければ、かえって危険である。恐らくこの7人は「コンテニュアウス(=同時登攀)」と呼ばれる、ロープを結び合ったまま同時行動をとっていたのだろう。これは「スタッカット(=隔時登攀)」と言って、確保者が行動を中断し、ロープで結ばれた仲間の行動中の転落・滑落などを止めること、確保に専念する方式よりも不確実で、難しい。ヨーロッパの山岳映画などで雪稜をロープで結び合い同時行動している様子を目にするが、あれは案内人の客に対する職業的な作法のようなもので、現地を熟知し、危険を予知できていないならやらない方がよい。不安なら、隔時登攀に切り換えるべきだ。氷河上のクレバス帯を進む場合も、不意をついて落下するのを止めるのは至難だ。
 
 きょうの昼のニュースではどうやら7人が、やはり1本のザイルで結ばれていたようだった。登攀用ロープは、1本の長さが40メートルか、または50メートルの物を使用するのが一般的だが、いくらなんでもその長さに7人では無茶だったのではないか。あの場所でザイルを使ったことはないが、仲間の安全のためにロープを出したとしても、せめてそれを固定してから補助的に使う程度にしておいた方が、あの場合は良かったのではないかと、結果論だが思っている。
コメント
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