
はるの寒さたとへば蕗の苦みかな ―― 夏目成美
この時季、毎年口ずさむ好きな句だ。昨春だったか引用を誤り、有田焼氏に訂正されたという「苦い」記憶も残る。「はる」と「寒さ」、それに「蕗」と、季違いの多い句だが、それがまったく気にならない。「蕗」は夏の季語だが、この句では「フキノトウ」を詠んだものと思われる。
彼らは中高年の登山者ではなかった。昨日の奥多摩三頭山の遭難騒ぎである。団体行動を崩さなかったことから旅行者の一団、それも外国人という考えがチラッと頭をかすめたが、13人中10人が中国人だとは思わなかった。以前、雲取山頂小屋で夜中に、数人のアメリカ兵に声をかけられたことがあって、東京都で一番高い山である雲取山はもちろん、奥多摩の山々が主に在日の外国人にも人気があることは知っていた。
それにしてもお粗末としか言えない。事前の下調べを怠り、避難小屋の存在すら知らなかったのだろうか。それに、運動靴のような軽装の人もいたようだから、雨具もちゃんとしたものを用意してなかった可能性がある。
無雪期に最も重要な用具は雨具だと呟いたことがある。積雪期なら、それに靴が加わる、とも。どうも見た目ばかりは立派だが、足回りのおろそかな人を入笠でも目にすることがある。ゴアテックスや類似の商品が、雨具に使われるようになって大分経つが、それでも雨具として完全かと問われれば、そうだとは言えない。加えて、防水力は劣化するから消耗品と考えた方が間違いはない。
このごろは雨具ばかりか、山靴にもゴアテックスが使用されるようになった。しかし耐久性は皮のようにはいかない。牧場で使っていた某社の靴は1年で駄目になった。軽くて蒸れないのは有難いかも知れないが、もっと重要な堅牢さや、耐久性、保温面が犠牲にされてしまっているのが気になる。ゴアテックスはまだ登山靴の素材として充分な検証がなされないうちに、すっかり主流になってしまったようだ。
書店に行くと、知らなかった名前の山岳雑誌を目にする。もちろん、それなりに読者の役に立っていると思うが、広告がかなりを占めている点が見逃せない。広告主の意に沿わないようなことはなかなか書きにくいだろうと思いながら、ページを追うことがある。