入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’18年「夏」(31)   

2018年08月07日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 山の持つ保水力には感心する。もう幾日も晴天の日が続いるが、多少水量を落としつつも清らかで、涼し気な水が山室川であれ、テイ沢であれ、小黒川であれ流れている。一体どれだけの水を森は地中に眠らせているのか、想像もつかない。

 昨日、キャンプに来ていた夫婦を案内がてら、草刈りの仕事はその日で最後にするつもりでテイ沢に行った。昼食にはバナナ、納豆巻き、そして“お宝”を用意し、草刈り機、鎌、ゴミかき、予備燃料などを担いで、通い慣れた沢の中の道を登っていった。深い谷、清冽な沢の流れと水音、その飛沫を浴びる岩に生えた苔、細い光の筋となって射し込む日の光、・・・、ここにはいい夏がいくらでもある。
 A夫妻とはヒルデエラ(大阿原)の少し手前、前回の草刈りの最終点でひとまず別れた。二人とは湿原を一周した後に、また沢を下る際に会えるので、別れの言葉は言わずに見送った。



 最初、果たして昨日だけで草刈りを終えることができるかと不安になったが、それでも昼には一応の目途がついた。流れの傍の木陰の下に腰を落ち着け、沢の水で冷やしておいた“お宝”を飲んだ。昼飯としてはあまりに貧相だが、重量の嵩む弁当は、わざと小屋に残してきたのだ。しかしそれで不足ではなかった。もちろん、ワインなどと格好もつけない。
 
 アラスカのツインレイクの傍に丸太小屋を建て、幾年かを一人で暮らしたあの人、プリネークがその著書「一人ぼっちのウイルダーネス(だったと思う)」に書いていた。近くを流れる水の美味さは、どんな高級な酒にも負けないと。実際はどうか知らないが(多分正しくはない)、そういうことを言いたくなる彼の気持ちは分かる気がする。文明と距離を置いて生きる者には、自然の中にいればいるほど、その世界への思い入れをより強め、没頭しなければ心は折れてしまう。大自然の中を流れる小川の水こそが、美酒よりも何よりも勝ると信じたいのだ。それが、自らを支える術である。
 そんなことに思いを巡らしていたら、ついウトウトとしたらしい。突然人の気配で飛び起きた。

 月の半ば、15日以降は小屋もキャンプ場も充分に余裕があります。FAXでも予約や問い合わせに対応できます。ご利用ください。入笠牧場の営業案内は「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」
「同(2)」をご覧ください。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする