入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「冬」(14)

2020年11月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 残すところ1ヶ月、いやもう1週間、後3日と数えてきて、そしてきょうをもって今年の7か月の契約が終わる。14年の牛守稼業が過ぎた。早かったとも、遅かったとも思わない。確かにその間、年を追うごとに年齢から来る重圧は強まったし、それに伴う諸々の想いや感慨も味わってきたが、こうして牧を閉じる日を迎えてみれば淡々と受け入れることができる。
 偶々こういう自然の山の中で牛を相手に過ごし、いつの間にかそれなりの年月が過ぎていったが、詰まる所この仕事が性に合っていたのだと思う。そう言えば若かったころも、本当に自分は山が好きなのかと自問しながら、それでも続けた。そしていつのころからか、ながいことかかってそういう疑問が消えた。
 牛を相手に山の中の牧場で働くと決めた時、もっと他にすることがないのかと心配してくれる人もいた。自分でもそれまでと全く違った未経験の仕事を、人生最後の仕事としてよいのかという迷いが少しはあった。しかしこれを運命だと受け入れるのに、それほどの年月を要することはなかった。しかもそれに比例するようにして、この牧場ばかりか、この辺りの山域への思いが強まっていった。強まり過ぎたかも知れない、野生化も含めて。
 


 牧を閉じる日に殺生。こんな仔牛並みの野生動物が、付近の森には当たり前のように生息している。雌だと思っていた1頭も雄で、結局6頭とも雄という今回は極めて珍しい捕獲だったことになる。誰かが笑えというからそうしようとしたが、果たしてそれができただろうか。

 今週末は3連休になるから、そうなれば登山者ばかりか狩猟期間が始まったばかりで鉄砲撃ちも来る。何かあってもいけないから、まだしばらくは自主的に上がってくるつもりでいる。
 畜産課長にきょうが契約の最終日であることを電話で告げると、そんなことなど頭の端にもなかったようだった。野生動物と同じくらいに考えているのかも知れない。今度会ったら、・・・分かっているな。
 ともかく少しばかりの安堵感と感謝を背負ってきょうは静かに山を下る。
 本日はこの辺で。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする