山は一日来なかっただけで、冬の様相を一段と深めた。昨日の雨のせいもあってか、今朝上がって来る時に目にしたクヌギやナラなどの広葉樹の葉は大方が散ってしまい、すっかり色彩の乏しくなった山道ではモミ、シダ、赤松の緑の色が、いつになく新鮮に見えたものだ。
きょうはよく晴れていて、見回りを兼ねて第3牧区へ上がっていくと、雪煙を上げる富士山もよく見えていた。帰りかけたら、車の音を聞き付けたのか、観音岩に落ちていく斜面にいた数え切れえないほどの鹿の群れが、林の中へ逃げていくところだった。
このところ気温が高かったからからだろう、まだ多くの鹿は牧場内に居残っているようだ。入笠の伊那側は牧場も含め保護区になっている区域が多いから、そんなことを鹿は知るはずもないが、銃声や猟犬の吠える声が聞こえないだけでも安心していられるのだろう。
そう言えば、猟期に入ったというのに、いつもの年と比べたら猟師の姿をあまり見かけない。長谷の戸台へ下る小黒川林道が、目下通行止めになってことも原因しているのだろうか。森林管理署からは戸台へ下る林道の入り口のゲートを施錠するという旨の連絡が来ていたが、その後に恐らく長谷支所だと思うが、もう1個南京錠が追加された。若い男女の姿を見掛けたが、これに関しては何の連絡もない。
あのゲートは牧場の施設であり、そこに鍵を掛ける以上は一言あってしかるべきだと思うが、いつもこうだ。富士見町でさえ、冬期通行止めの連絡はここへも来るというのに、こういう態度、やり方は釈然としない。それに、森林管理署から貸与されている鍵は年度末には返還しなければならず、来年のいつ頃まで通行止めが続くか知らないが(そういうことも是非聞いて、知っておきたい)、牧場再開後もそうであるなら諾々としているわけにはいかない。
事情も分かっているし、必ずしも施錠に反対するわけではない。しかし、こうなると鍵さえなければたとえ通行止めにしても、馴れっこの彼らは「お通りください」と判断する可能性が高い、ということが分かっているだろうか。彼らとはオフロードバイク愛好者たちで、管理署の担当者も彼らに対する処置だと明言していた。彼らがあの美しい渓を見ながら未舗装路を走ってみたい気持ちは分かるし、事故を起こせばこれからも助に行くが、一部の者の無軌道ぶりには多くの人が憤っている。特に作業を中断させられる林業や工事関係者は無理もない、気の毒だ。
考えてみれば、用事が済めばいつまでもここにいる必要はない。弁当も食べたし、初冬の山の雰囲気を味わいながらゆっくりと帰ろう。明日は沈黙します。