
きょうはなかなか読書の列車が出発せず、日溜りの中で無為な時間だけが過ぎていく。時代を行ったり来たりしているうちに、少々旅疲れをしただけでなく、どうも悪酔いまでしたような気がする。行った先が良くなかったせいだろう。
旅の方角を考えるべきだと思いつつ、どうもこれはなかなか簡単にはできない。困ったことながらそのせいで、入笠からはますます遠い所へ行ってしまう。まあ、これは一人旅だから気にすることもないのだが、たまには遊子らしく温泉に浸かりゆっくりとしたい。(1月21日記)
先日、八ヶ岳の一峰、天狗岳で遭難事故があった。この山は牧場の第1牧区からも良く見え、そこに案内した人たちには天狗と言うより「サルが空を眺めているような形」という説明をしている山だ。
九州の佐賀から来た70歳を過ぎた年配の人たちで、遭難した人は確か80歳を過ぎていたと記憶している。今冬は寒く、積雪もいつになく多いということは当然知っていただろうに、それでも敢えて出掛けていくほどだから、山に対しては自信があったのだろうか。
冬山では、遭難の原因としてよく雪崩、滑落が挙げられるが、年配者の疲労凍死も見逃せない。今ここでその遭難の状況を詳しく知るわけではないにしても、特に高齢者には天候の影響は大きいと思う。晴天ならまだしも、吹雪にでもなればば脆いもので、方向が分からなくなったり、すぐに動けなくなったりする。それでいて、装備が進歩したせいでか、年配者が結構気軽に冬山へ行くようになった。
同じころ、やはり八ヶ岳の横岳へ行ったというTDS君の子息F君の話では、雪は深くても歩くには少しも支障がないくらいたくさんの登山者がいたという。あそこはゴンドラが利用できるから、その中には中高年の姿もあっただろうし、恐らく登山やスキーが目的の人ばかりか、雪山や樹氷見物の観光気分で来た人たちもいただろう。
誰も死にたくて山に行くわけではないから、それなりの準備や注意もしての入山だったろう。それでもこうした事故は起きる。いくら注意が喚起されても、covid-19の感染防止が進まないのと同じく、山の事故は後を絶たない。それも、原因は似たか寄ったか、言っては悪いがありきたりだ。その珍しくない罠に嵌まる可能性は、ここで炬燵に当たり雪の法華道を思い描いている者も含めて、誰にでもある。
それにしても、八ヶ岳は冬山としては中級程度の山と見做されているのだろうか。独立した連峰であり風も強いし、気温も低い。岩峰が連なり、岩場が多く足場の悪い所も少なくない。これまでも遭難事故は多発していて、決して「お手軽な山」なぞではないと思うが人気は高く、入山者も多いようだ。
80歳を過ぎたら、冬の入笠へさえ歩いていくことはないと断言する一方で、高齢を押してあの雪山に向かった人の気持ちを、複雑な思いで想像している。
本日はこの辺で。明日は沈黙します。