
寒気が遠のいたのか、この時季にしては暖かい。もう午後も大分過ぎているのに、久しぶりにストーブを切っても、まだしばらくは窓から差し込む冬の日射しだけでも充分のようだ。気のせいか、ここから見える青空にも無機質な冷たさよりか、どことなく親しさのある温もりを感じる。どこかから聞き慣れない鳥の声も聞こえてくるが、それもきょうの陽気のせいだろう。
また昔話になってしまうが、子供のころは本当に寒かった。それでも寒風吹きすさぶ戸外でよく遊んだ。今の子供たちにとってはシモヤケ、アカギレと同じく、寒中休みも、校庭でのスケートも、いつにか縁のない、過去の物語、風物でしかないだろう。子供と接することなぞ絶えて久しく、仮にそんな機会があったとしても、もう、何を話したらよいのかさえも分からない。
2月の4日に上に行かないかと、東部の所長にメールで誘われているのに気付いた。まだ決めかねているが、足手まといになりはしないかという心配がある。急にそんな気持ちに襲われ、自分でも思いがけないことだと感じている。登山においても、登攀においても、これまでにこんな気遅れめいたことを思ったことなどないはず、初めてだ。
冬の法華道を登るのは単独が主だったが、同行者がいたことが無いではない。誘われれば、連れていってやるぐらいの気分で同意したこともあるし、こっちから声をかけたこともある。それが、いつの間にかすっかりその種の"から元気"が失せてしまった。愕然としている。
それにしても、一人なら、休みたいときに休み、歩けるだけ歩く。その判断は自分勝手にできるが、同行者がいて、しかも初めて一緒に登るとなると、年齢や体力のことを考えてしまう。不甲斐ない。法華道でさえこれでは、ブツブツ・・・ブツブツ(と、自虐の言葉、しばらく音声を消して呟く)。
まあ、慣れた山道であり、自分の歩き方で行きますよと断って、好きなように登る手もある。もともと一人でも行く気は充分にあるのだから、そうしてみるか。
こんなことを呟いていると、気分はすっかり山の中、例年にない深雪の中を歩いていく自分の姿が目に浮かぶ。そう、ヨロヨロと。
本日はこの辺で。