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スノーシューズを履いて白い森の中を歩く
ストーブを囲んで長い冬の夜話に耽る
銀河鉄道の客となって果てしない宇宙へと旅立つ・・・
そんなことがあなたにも、此処ならきっとできるでしょう
こんな文字を連ねて(一部変えてある)、冬の入笠へ誘客を試みたことがあった。もう、10年も前のことになる。
冬季営業は契約外のことで、あくまで管理人が希望して自主的に行ってきたことで、これは業務のうちには入らない。にも拘らず、なぜそんなことをして来たかといえば、きょうの写真がその理由を語ってくれてはいないだろうか。
歩行を中断して一息つく。それまで聞こえていた雪を踏む足音が途絶え、静寂に包まれる。と、遠くの方で物音がして、それが風の悪戯(いたずら)だと気付く。そして、また先程の静寂が戻ってくる。そういう一時の間に、山にあることの意識が強まり、濃縮され、その孤独感が快く胸に沁みてくる。
そんな冬の山の気分を、古い山小屋に来て味わってもらいたいと思って始めた。厳冬期は取水場の水も枯れ、雪を融かして炊事をして貰った一時期もあった。.しかしそれでは料金を貰うのだからあんまりだと配管を埋め直し、今では厳冬期でも取水場には手の切れるような清冽な水がふんだんに出ている。
何もないガランとした48畳の部屋は、それまでも12畳毎に仕切れるようにはなっていたが、少しは模様替えをして、予約客が他の組と重ならないようにした。また、管理棟にも10畳2間続きの部屋があって、少数の場合はこちらでも利用できるようにした。
原則食事の提供はしていないが、ガスコンロや冷蔵庫、炊事具などは自由に使用でき、今冬もそうだが、鹿肉も用意しておいた。許せる限り、牧場の案内もやった。
その上で、毎冬訪れる人を待ちつづけたのに、一部の会、人を除いて、残念ながらその甲斐はあまりなかった。このごろでは、山からは静かな冬の眠りを覚まさないでくれという声を聞き、迷いながらもその意を汲むことにした。
山は、特に雪の山は、持久力が求められる。それを高めるためには、数多く山に登らなければならない。牧場では、いくら「斜面を平地のように歩」いても、半日、一日をずっと登山のように歩き続けているわけではない。
体力ばかりでなく精神的にも、安気に冬の営業に応じることが難しくなってきた。そろそろ潮時だろうと今回、冬季の営業については雪の法華道を歩きながらそんなふうに考えた。ただしそれでも、もう1件入っている予約をこなすため、7日からまた上に行く。
本日はこの辺で。