入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’23年「冬」(14)

2023年01月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 きょうも入笠ではなくて、伊那谷の紹介になってしまう。中央に見えている山が西山(中ア)の経ヶ岳、標高2296㍍である。
 この山を毎日のように眺めながら大きくなり、30ウン年故郷を離れたが、また帰ってきて身近な山に戻った。ただし、山頂へ登ったのは一度しかない。中アの中心に位置する西駒(木曽駒)には何十回も登っているのに、経ヶ岳はずっと眺めるだけの山で、その一度も50歳を過ぎて、信州で暮らすようになってからだった。
 
 今は全くそんなことを思わないが、多分、標高が登るのには物足りないと考えていた可能性が高い。東京で暮らしていたころも、最も山に熱中したころだったが、やはり同じ理由で奥多摩や丹沢に足を向ける気はなかった。それをある登山家にたしなめられ、以来、丹沢はそうならなかったが、水の豊富な奥多摩は親しく登る山に変わった。思い出せばあのころも、夜間の"錬成"を得意としていた。
 そして今は、入笠に本妻の地位を認めたように(ちょっと偉そうか)、日本の中級山岳が自分には最も評価できる山だと識るようになった。西駒や空木岳には出掛けなくとも、経ヶ岳にはもう一度くらいは行ってみたいと思っている。
 
 その経ヶ岳の山頂近く、9合目だったかには、経典が埋められたという岩がある。それがこの山の名の由来だとも聞く。
 これは別の時、この山の北方の稜線を歩いていて長年愛用したピッケルをこの山域で置き忘れ、そのまま残してきた。そんな縁とも言えない縁がある。
 また、この時に連れていた愛犬小太郎の思い出とも重なる。近年はクマの出没がとやかく言われるようになったが、この時もクマと遭遇した。猟犬の中には獲物と対峙した時、威嚇はしつつも吠えない犬がいる。小太郎もそういう類の犬だった。クマは茂みの中から飛び出して来たのに、それを追い出した小太郎は一声も挙げなかった。
 
 眼下に広がる伊那谷を眺め、ここが幼いころから目に慣れ親しんできた山なのだと思ったら、他の山とはまた違った感慨が湧いてきた。半世紀もしてやっとたどり着いたふる里の山の頂だった。山頂の木々の梢を透かして眺めた夕暮れの御嶽山の堂々とした山容も目に残る、忘れない。
 
 いつかきっとそんなふうに、入笠牧場のあの丘の上から、見納めの広大な景色を見るだろう。
 本日はこの辺で。
 
コメント
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