奥に僅かに見えているのは仙丈岳
1936年の2月26日、つまり88年前の昨日、後に言う「2.26事件」が起きた。日本軍という体制内で起こった反乱であり、クーデターである。「上がる軍旗に手向かうな」というアドバルーンの写真は日本史の教科書にも載っていた。
そのことを昨日の散歩中に突然思い出し、中心人物になった軍人の名前を何人か思い出そうとして、錆び付いた頭に苦労をかけてしまった。
歩いていて、誰かが言ったことを脈略もなく思い出して、さてその人が誰だったかと頭を悩ます、そういうことが最近とみに増えた。記憶が衰えつつあることを意識させるために本人の承諾もなく、脳がこういう注意喚起の信号を送っているのだろうか。もしそうだとしても、今さら手の施しようはないのだが。
そんなことを思いながら長い坂を下り、畑中の道を折り返し掛けたら、前方から犬を連れて同じく散歩中の人が見え、次第に近付いてきた(今日の写真の辺り)。犬は白い大型のハスキーで、見覚えがあった。その時は20台前後の男の人だったが、以前に2回ほど出会った時は、その人の妹さんか姉さんか、女性だった。
その時も、この時も、犬に軽く合図を送って、犬の引率者にも挨拶した。すると昨日は、犬がクーンという甘えた鳴き声をして、近寄ろうとしてきた。
初めて会った時は何の反応も見せなかったのに、その時も含めればたった3回の出会いで、しかも大分日が経っていたのに、覚えてくれていたようだった。
飼い主がこちらに警戒心を持てば、それが犬にも伝わる。時には吠えてくるが、しかし、その犬はそういう態度を見せなかった。
今の時季、まだ野良に出る人などいない。あんな人の通らない場所でも有難いことに飼い主は二人とも、こちらを単に通りすがりの人と見て、特によそよそしいふうを見せなかった。だから、犬も安心していた。
ハスキー犬を見ると、「アラスカのメメ」を思い出す。調べたら、あれから35年も経っている。
彼女の連れていた大きなハスキー犬が、小さな村の駅前にある広場で、山を目指すドイツ隊にからかわれていたのを庇ってやって知り合った。それがキッカケで彼女の通う学校まで一緒に散歩をしたことも覚えている。
その後にもこの村を訪れる機会はあったが、会えなかった。今ごろは結婚してきっといい母親になっているだろう。Nよ、覚えているか。
光陰矢の如し、本日はこの辺で。