寒い。今朝も寒い。どんよりとした灰色の空、それでも経ヶ岳の山頂は見えている。室内の温度もストーブの設定温度までなかなか上がらずもどかしい。カーテンを閉めれば少しは保温効果が上がるのだろうが、外の様子も見ていたいので、恥ずかしながらエアコンの応援まで求めたりしている。
庭の餌鉢には鳥が来て、その声がしていた。行って見ると、リンゴは皮だけになっていた。近くに鳥の気配がしたので、また四つ切にしたのを持っていってやる。今は姿も見えず声もしないが、そのうちにまた来るだろう。
滅多に読まない小説、それも作者が女性の本を読んでいる。飲み屋の主から貸してもらったのだが、酔っぱらっていてその辺りのいきさつはよく覚えていない。友人の親しくしている人だ。文庫本でも600頁くらいある。題名は「類」著者は朝井まかて、初めて知る名前だ。
普段、飲み屋になどへは行かないのだが、この時は親しい友人に誘われて、いつになく大酌した。どうしても外で飲むとこうなる。
小説と言っても、主人公はよく知られた森鴎外の子息で、その「類」という人のことは知らなかったが、姉や妹の名前は知っていたし、本を読んだこともあった。
これがいつも読んでいるような内容の本だったら、時々息抜きが必要になるが、小説の内容、書きぶりは好みではなくも、どんどんと読んでいける。鈍行列車から窓外を眺めるというよりか、急行列車か特急からのそれだろう。ということは、面白いという小説の要件は満たしているということか。
こんな冬の一日、先程の譬えで言えば、鈍行列車は変わり映えのしない景色の中を過ぎていく。時に途中下車してみたくなり、時に路線を変えてみたくなるがそれを思い留まり、一日の大方を自動運転に任せ、貰い過ぎた時間を何に活用するというわけではなく過ごしていくのだ。
昼近くになって風も止んだようだ。ストーブは風呂に入っている間に自動的に消えていた。エアコンもそれに気付いて切ったが寒くない。
それから自動運転化した時間はちゃんと運行を続けて、いつの間にか太陽が稗蔵の屋根の向こうへ落ちていこうとしている。もう、散歩に出る気は失せたが、こうしていても空虚な気がしてこない。これから迎える空白にも同調できそうだ。(2月2日記)
本日はこの辺で。あすは沈黙します。