Photo by Ume氏
昨夜ここへ登ってくる途中に感じたことは、同じ荒れ放題の山道ではあっても、いつものように仕事を終えて家路につくあの気分、安堵と平安、それが逆の場合には全くないことだった。疲労のせいもあったが何となく重く、夜道に気の滅入るような思いがした。「山の人」になるために決めたことだが、毎日夕暮れの山道を帰るのも、大いなる慰安であったことがしみじみと分かった。
家に帰っても一人だし、ここにいても一人だが、家にはあってここにないもの、ここにあって家にないもの、今夜の振子はどちらを指そうとするのだろう。どちらを指そうと、今夜もここで夜を迎え、一日を終えるわけだが。
G君が昨夜F君を連れてここへ着いたのは10時ごろだった。彼女、そうF君は20代後半の女性、に鹿の止め刺しと、その解体を実習させることが目的で3時間もかけて来たのだ。印象の悪い女性ではなかったが、それだけにこんな若い娘がはたして、そんな野蛮なことができるものだろうかと怪しんだ。
ところがF君はよく頑張った。「止め刺し」というのは、捕獲した鹿の頭部を鈍器で叩いて失神させ、素早く急所を刺して殺すことだが、そういうことを初めて体験しようとすることに不安や、揺らぎは見えなかった。さすがに急所を突くのはうまくいかず、苦しめてはいけないと手伝ったが、その後の解体もG君の指示に従い、ほぼ独力で成し遂げた。
もう一つ驚いたのは、その後小宴を張ったが、F君はよく食べ、そしてよく飲んだ。あれほど鹿の内臓と奮闘した後だったのに、「立派、合格!」と言ってあげたいが、あんなことをか弱き女性に、させてもいいのだろうか。今度は罠の設置の実習もやることになっているのだが。
おっ、牛たちが一斉に草を食べ始めた。そろそろ囲い罠から出して、もっと広い放牧地に移動させねば。今夜は久しぶりに星空を見ることができそうだ。
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