市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

当会の後押で渋々損害賠償を提訴してタクマから2億7千万を回収した安中市と和解金の使われ方

2012-06-11 21:49:00 | オンブズマン活動
■17年前にタゴ51億円巨額横領事件の発覚で右往左往していた安中市のドサクサに紛れて、市内のゴミ焼却施設「碓氷川クリーンセンター」の建設工事指名入札で、「タクマ」(兵庫県尼崎市)が予定価格の99.76%の64億8591万円で落札し、当時から談合の疑いが取りざたされていました。


 1999年8月、公正取引委員会が大手焼却炉メーカーの談合5社(日立造船、三菱重工、タクマ、JFEエンジニアリング、川崎重工)に独占禁止法違反(不当な取引制限)に基づく排除勧告を出しました。これは我が国最大の談合事件であるゴミ焼却施設の談合問題について、1994年4月~1998年10月までの5年間で談合5社受注した60件で、公取委が談合認定を行い、今後の談合根絶を求めて、排除勧告をしたのです。

 ところが、談合5社はこの排除勧告に対して「談合はなかった」と応諾を拒否し続けたため、公取委は2006年6月28日、再び「談合をやめるように」と命じる審決を出し、談合5社に独禁法違反と認定した企業としては過去最高の総額約270億円の課徴金を納付するように命令しました。

 談合5社はこれを不服として、2008年7月に東京高裁に提訴しましたが2009年9月に敗訴したため、その後上告していたところ、2009年10月6日、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)が談合5社側の上告を退ける決定をし、談合を認定し、審決は適法だとして2008年9月27日の東京高裁判決が確定しました。

 東京高裁判決によれば、談合5社は1994年4月~1998年9月の間、自治体発注の工事87件(発注総額1兆1031億円)の工事の内、66件(同9600億円)を受注し、平均落札率は96.6%でした。

■2009年10月9日の最高裁での審決確定を受けて、全国各地で該当する談合案件で公金をかすめ取られた自治体の間で損害賠償請求の訴訟の気運が高まりました。

 しかし、当初は多くの自治体で訴訟への腰が重く、オンブズマンとして活動する住民らが先鞭を付けたのでした。

■我が安中市でも、典型的な談合入札でタクマが落札したことから、当然、安中市はイの一番で提訴すると思われていましたが、最初の動きは鈍く、当会をはじめ安中市民が訴訟を促すための住民監査請求を行い、市民に叱咤激励されて、ようやく安中市がタクマを相手取り、東京高裁に提訴したのが2011年8月22日でした。

**********毎日新聞2011年08月23日 20時13分15秒
安中のごみ焼却施設談合:「建設工事で」 市がタクマ提訴--東京高裁に /群馬
 安中市は22日、ごみ焼却施設「碓氷川クリーンセンター」の建設工事で談合があったとして、施工した大手プラントメーカー「タクマ」(本社・兵庫県尼崎市)を相手取り、独禁法25条に基づき約6億4859万円の損害賠償を求め、東京高裁に提訴した。
 訴えによると、入札は大手5社を含む9社で行われ、95年6月にタクマが落札して64億8591万円で契約した。公正取引委員会は大手5社が談合を行っていたと認定しており、同市は不当に高い価格で工事が行われ、契約金額の10%の損害を受けたとしている。
 岡田義弘市長は「談合の疑いがあることから、行政として説明責任を果たさなければならず、第三者機関の判断を仰ぐため提訴した」とのコメントを出した。
 タクマは「訴状が届いていないのでコメントは差し控える」としている。
 この問題を巡っては市民が、岡田市長を相手取り、同社に13億2500万円の損害賠償請求をするよう求めて前橋地裁に提訴しており、審理が続いている。【増田勝彦】
**********東京新聞2011/08/24
安中市が「タクマ」に6億円請求 ごみ焼却施設建設談合で
 安中市は、市ごみ焼却施設「碓氷川クリーンセンター」建設工事の入札で談合があり、不当に高い価格で契約を結ばされたとし、工事を受注した「タクマ」(兵庫県尼崎市)に対し、契約金額の10%にあたる約六億四千八百万円の損害賠償などを求め二十二日、東京高裁に提訴した。
 同センターの建設では、当時の安中市と松井田町でつくる安中松井田衛生施設組合が一九九五年、指名競争入札を実施、大手メーカーのタクマが予定価格の99・76%、二番札とは二百万円差の約六十四億八千六百万円で落札し、九八年三月に完成した。
 市では、タクマを含む大手五社が絡む談合があったとする公取委の審決を受け、同社に対し弁明書の提出などを求め審議していた。審決で明らかになった大手五社以外の落札率89・76%との差、約10%について、昨年十月、同社に損害賠償請求したが応じなかったため、三月市議会で提訴が承認されていた。
 岡田義弘市長は「談合の疑いがあり市民への説明責任と第三者機関の判断を仰ぐため提訴した」、同社は「訴状が届いていないのでコメントは控えさせていただく」としている。
**********

■その後、約9か月が経過した2012年5月29日、安中市がタクマに約6億4千万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁(青柳馨裁判長)から、タクマ側が安中市に和解金2億7千万円を支払う和解勧告が出されて、安中市がこれを受け入れる方針であることが報じられました。

**********東京新聞2012年5月30日群馬版
安中ごみ焼却場談合 2億7000万円賠償で仮同意
 安中市が、同市ごみ焼却施設「碓氷川クリーンセンター」の建設工事を受注した大手プラントメーカー「タクマ」(兵庫県尼崎市)に対し、入札で談合があったとして契約金額の10%、約六億四千八百万円の損害賠償を求め提訴していた問題で二十九日、タクマ側が同市に二億七千万円を支払うとする東京高裁の和解勧告に双方が仮同意した。(樋口聡)
 同センターの建設をめぐっては、一九九五年に当時の安中市と松井田町でつくる安中松井田衛生施設組合が工事発注の指名競争入札を実施。タクマが予定価格の99・76%、二番札とは二百万円差の六十四億八千五百九十一万円で落札し、九八年三月に完成した。
 同市は、九四年以降に行われた全国の焼却場建設工事でタクマを含む大手五社による談合があったとする公正取引委委員会の審決の最高裁確定を受け、タクマに対し事実確認とともに弁明書の提出を求め協議。二〇一〇年十月、同社に損害賠償を求めたが応じなかったため、一一年八月、確定審決に基づき、損害賠償を求め一審提訴先の東京高裁に提訴していた。
 仮同意について、同市の岡田義弘市長は「結果として高い評価に値する。当初の目的が達せられた」と述べ、タクマ側は「早期解決に向け総合的に判断した」と話した。和解には、同市は市議会、タクマ側は取締役会の議決が必要で、双方で議決されしだい、同高裁での手続きを経て正式に和解が成立する。
**********産経新聞2012.5.30 02:02
高裁が和解金提示 談合疑惑で安中に 群馬
 安中市は5月29日、ゴミ焼却施設「碓氷川クリーンセンター」建設工事の入札談合疑惑にからみ、プラントメーカー「タクマ」(兵庫県尼崎市)に約6億4千万円の損害賠償を求めた訴訟の和解勧告内容を明らかにした。
 東京高裁(青柳馨裁判長)で、タクマ側が同市に和解金2億7千万円を支払う和解勧告が行われた。
 同市は和解に応じる方針を決め、6月5日に開会予定の市議会定例会に和解決議に関する議案を提案する。
 クリーンセンターは平成7年6月に計9社による指名競争入札が行われ、タクマが工事を請け負った。
 21年にタクマを含む大手5社が自治体発注のごみ処理施設建設工事で談合を繰り返していたとする公正取引委員会の審決が確定した。
 このため、同市は昨年8月、クリーンセンターの入札時に談合が行われた疑いがあり、不当に高い価格で工事が行われたと推認されるとして、タクマを相手取って差額分の支払いを求める訴えを起こしていた。
**********毎日新聞 2012年05月30日 地方版
安中のごみ焼却施設談合:損賠訴訟で東京高裁、和解勧告 来月、市議会提案へ /群馬
 安中市が、ゴミ焼却施設「碓氷川クリーンセンター」の建設工事をめぐり談合があったとして、施工した大手プラントメーカー「タクマ」(本社・兵庫県尼崎市)を相手取り6億4859万円の損害賠償を求め提訴した問題で、東京高裁は5月29日、和解金2億7000万円とする和解を勧告した。同市は勧告受け入れの議案を6月5日開会の定例市議会に提案することを決めた。
 訴えによると、入札は1995年6月に大手5社を含む9社で行われ、タクマが64億8591万円で落札した。大手5社については94年4月から98年10月までの間、地方公共団体発注のゴミ焼却施設建設工事で談合を繰り返したと公正取引委員会が審決しており、同市の施設も不公正な価格で落札された、としている。市は2011年8月、独占禁止法に基づき東京高裁に提訴した。【増田勝彦】
**********産経新聞5月30日(水)7時55分配信
高裁が和解金提示 談合疑惑で安中に 群馬
 安中市は29日、ゴミ焼却施設「碓氷川クリーンセンター」建設工事の入札談合疑惑にからみ、プラントメーカー「タクマ」(兵庫県尼崎市)に約6億4千万円の損害賠償を求めた訴訟の和解勧告内容を明らかにした。
 東京高裁(青柳馨裁判長)で、タクマ側が同市に和解金2億7千万円を支払う和解勧告が行われた。
 同市は和解に応じる方針を決め、6月5日に開会予定の市議会定例会に和解決議に関する議案を提案する。
 クリーンセンターは平成7年6月に計9社による指名競争入札が行われ、タクマが工事を請け負った。
 21年にタクマを含む大手5社が自治体発注のごみ処理施設建設工事で談合を繰り返していたとする公正取引委員会の審決が確定した。
 このため、同市は昨年8月、クリーンセンターの入札時に談合が行われた疑いがあり、不当に高い価格で工事が行われたと推認されるとして、タクマを相手取って差額分の支払いを求める訴えを起こしていた。
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■当初の損害賠償請求金額が落札金額のほぼ1割に相当する約6億4859万円だったことから、裁判所からの和解金の提示額2億7千万円は、請求額の4.2%に過ぎない値であり、これを安中市がすんなり受け入れたのは、何か理由があるのかもしれませんが、とにかく、一定の成果を上げる結果となった事はご同慶の至りです。

 さっそく、安中市は6月8日の定例市議会の常任委員会でこのことを報告し、どのような討議があったのか不明ですが、市議会もこの和解金額を承認したことが6月9日の新聞で報じられています。

**********東京新聞2012年6月9日群馬版
タクマと和解へ 市議会委が承認 安中、談合問題
 安中市議会は6月8日、福祉民生常任委員会を開き、市ごみ焼却施設「碓氷川クリーンセンター」建設工事をめぐる談合問題で、受注した「タクマ」(兵庫県尼崎市)との和解案を全会一致で承認した。
 市は同工事の入札があったとして、タクマに契約金額の10%、約6億4800万円の損害賠償を求めて提訴、東京高裁は、同社が市に2億7千万円を支払うとする和解勧告案を示し、双方が仮同意していた。市は市議会、同社側は取締役会の議決が必要とされていた。
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■実質的に勝訴した背景としては、やはり全国的なオンブズマン活動が功を奏しており、タイミング的にも、最高裁の審決確定の判断が出て、全国的にもいろいろな自治体が、談合5社を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こしていて、談合5社も株主の手前、訴訟したという形を採らなければならない事情があるとはいえ、数多くの訴訟に対して、いちいちまともに応訴していられないという状況があったと考えられます。

 ゴミ談合問題に関して、最近の例をあげてみると、次のような事案があります。

■安中市とよく似たケースでは、山口市があります。

 山口市は、タクマに対して、2012年3月28日に、タクマに約9億1400万円の損害賠償を求める訴えを東京高裁に起こしています。山口市も1995年、同市など4つの市と町でつくる一部事務組合がゴミ焼却施設の建設工事を受注し、焼却炉メーカー6社による指名競争入札の結果、タクマが119億円で落札しました。119億円に対して損害賠償金額は7.6%相当ですから、安中市の10%に比べると、最初から遠慮している感じがします。

 この他、近隣でタクマを相手取ったゴミ焼却炉談合訴訟では、埼玉県加須市のケースがあります。同市は1995年5月のゴミ処理施設建設工事について、82億4515円で落札したタクマに2010年3月、7億8823万円の損害賠償を求めて、東京高裁に提訴していましたが、2011年8月に交際が和解勧告を出し、同年9月に同社が承認し、加須市議会も同年10月3日、和解勧告を可決し、10月5日タクマから5億243万円で和解金が支払われています。タクマは2012年10月31日までに和解金を支払いました。落札額の9.6%を損害額として請求し、和解金は6.1%相当額となっています。4.2% しか回収できなかった安中市に比べると、1.5倍の好成績です。

 談合メーカーのタクマの本社のある尼崎市でもゴミ焼却施設工事を巡る談合で落札額が不当に吊上げられたとして、地元のオンブズマンが大手プラントメーカーを相手に約8億4千万円の損害賠償を求めていましたが、2010年7月23日に大阪地裁は談合を認定し6社に約3億3千万円の支払いを命じました。この時は、遅延損害金約1億7千万円も入れて、合計約5億円が支払われましたが、オンブズマンの11年間で担当した弁護士20人分の費用約4100万円の支払いを尼崎市が、2012年2月「請求額が妥当かどうか判断しかねる」として、支払いを拒否したため、市民オンブズ尼崎が2012年3月29日に、神戸地裁尼崎支部に提訴しています。

 これと似た例が鳥取県米子市でも発生しています。同市発注のごみ焼却場建設工事の談合を巡る住民訴訟の結果、受注企業から約15億円の返還を受けた同市に対し、住民側が弁護士報酬1億円の支払いを請求した訴訟の判決で、鳥取地裁米子支部の上杉英司裁判長は2012年3月27日に、同市に8000万円の支払いを命じました。地方自治法は、受注企業から損害賠償金を得た自治体に対する弁護士報酬請求権を定めており、同市は他の訴訟を例に「5000万円を大幅に下回る額」を主張していました。同種の訴訟では、東京高裁が201111月、横浜市に1億円の支払いを命じています。上杉裁判長は、理由として住民訴訟が勝訴確定まで8年6カ月かかり、談合立証が大変困難だったことを挙げました。

■この他にも、福島県いわき市が1997年8月に実施したゴミ焼却施設建設工事の入札で、7社が参加し、三菱重工が214億8千万円、落札率99.86%で落札した件で、いわき市のオンブズマンが、談合企業の三菱重工(東京)に約12億円の賠償を求めていました。その後、2008年1月に契約額の5%を損害と認めて約11億円の支払いを命じた一審福島地裁の判決で、この分は支払われましたが、オンブズマンは「公取委の統計資料などから、損害は予定価格の10.1%相当で差額を補てんすべきだ」と主張して東京高裁に控訴していましたが、2011年12月27日に、東京高裁で和解をしました。和解の内容は不明と報道されています。

 北海道苫小牧市では、ごみ焼却炉建設工事の談合で損害を受けたとして、受注したJFEエンジニアリング(東京)に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、札幌高裁(井上哲男裁判長)は2012年3月22日、約6億3600万円の支払いを命じた一審札幌地裁判決を支持し、JFE側の控訴を棄却しました。

 最近では、新潟県佐渡市中原のごみ処理施設「佐渡クリーンセンター」の建設工事で、談合によって不当に高い価格で落札したとして、佐渡市が、受注した川崎重工業(神戸市)に6億2149万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が2012年5月24日、東京高裁でありました。園尾隆司裁判長は、1審の判断(2億7383万円)をわずかに下回る2億6451万円の支払い義務を認めました。ただ、同社はそれを上回る供託金を1審判決後に納めており、同社の支払い義務は履行されたとして、同市の請求を棄却しました。このケースでは、認定額が同市の請求額の半分以下のため、甲斐元也佐渡市長は「市の主張が認められず残念。弁護士と協議して今後の対応を検討する」としています。川崎重工は2011年10月の1審判決後、談合を認めて、利息を含めた4億5755万円を支払うと佐渡市に申し出たが、同市が断ったため、同社は2011月11月、新潟地方法務局佐渡支局に同額を納めていました。

■このように、焼却炉談合事件では、全国各地の市民オンブズマンが先鞭を付けて法廷闘争で勝利を重ねて来ました。言ってみれば、初めは乗り気でなかった安中市も、当会をはじめとする市民が、住民監査請求で損害賠償請求を促したことで、結果的にその流れに乗って勝訴を勝ち取ったことになります。

 産経新聞の記事によれば、平成22年6月25日時点で、全国で争われていた焼却炉談合事件について、次のように報じていました。

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談合事案名 / 地裁(2005年~2007年)→高裁(2006年~2009年)→最高裁(2007年~2009年)
熱海市ごみ焼却炉談合/原告敗訴→原告敗訴→上告棄却(高裁判決確定)
京都市ごみ焼却炉談合/11億4,450 万円→18億3,000 万円
上尾市ごみ焼却炉談合/8億8,580 万円→逆転敗訴→敗訴確定
福岡市ごみ焼却炉談合/20億8,801 万円→20億8,801 万円→高裁判決確定
横浜市ごみ焼却炉談合/30億1,790 万円→30億1,790 万円→高裁判決確定
米子市ごみ焼却炉談合/原告敗訴→11億4072万円→高裁判決確定
新潟豊栄郷清掃組合ごみ焼却炉談合/4,892万円→4,892万円→高裁判決確定
神戸市ごみ焼却炉談合/約13億6,000万円→約16億3,370万円→高裁判決確定
尼崎市ごみ焼却炉談合/約5億3,000万円→逆転敗訴→高裁に差し戻し
東京都ごみ焼却炉談合/約97億円→約44億円→高裁判決確定
南河内清掃組合ごみ焼却炉談合/約7億860万円→約7億860 万円→高裁判決確定
いわき市清掃組合ごみ焼却炉談合/約11億3,000万円→被告が控訴取り下げ(確定)→―
公取委は、談合5 社に対し課徴金総額269 億円の納付を命じる審決を出した。
(注)三菱重工約64億円、JFE約57億円、川崎重工約51億円、日立造船約49億円、
タクマ約47億円。(2010年11月12日 朝日)

■今回、安中市がタクマを相手取って得た和解金2億7千万円の経緯と背景がどのようなのか、検証する必要があります。なぜなら、弁護士費用としていくら支払われ、安中市が手にした和解金の金額がいったいいくらなのかが、定かでないからです。

 さらに、この臨時収入がどのように使われるのかも、我々住民としてはよく監視しなけれればなりません。なにしろ、原資は我々住民が支払った血税ですから、当然、市民に還元するような使い方が為されるべきです。

■今回のゴミ焼却施設巡る談合は、1999年に公正取引委員会が大手焼却炉メーカー5社(日立造船、三菱重工、タクマ、JFEエンジニアリング、川崎重工)に排除勧告を出したのがきっかけです。

 談合5社は、公取委の排除勧告を応諾せず、審判に持ち込み、勧告から7年後、公取委の審決で談合が決定し、それを受けて、談合によって余分に支払った自治体の住民が、過払い分の返還を求めて住民訴訟を行い、自治体の中には、同様の返還請求を行うところもでて、約半数の自治体で談合による損害分の請求訴訟が起こりました。証拠資料が少なかった事例を除き、多くの裁判で住民や自治体が勝訴し、2009年時点で、返還させた総額は、約250億円に上りました。

 とかく、行政にうとまれがちなオンブズマン活動ですが、こうして、談合による公金の無駄遣いにメスを入れることができ、結果的に自治体にも思わぬ臨時収入をもたらす結果となったのです。

 こうした亡国の談合が全国的に行われた実態について、マスコミはこれまであまり熱心に報道してきませんでした。5%相当の課徴金だけで、約270億円にも上る、建設費の総額5000億円強の我が国最大の談合事件の報道をまともにしてこなかったのです。

 おそらく、こうした現状を大々的に報道すれば、まだ返還請求をしていない自治体も請求手続きを取ることになり、談合5社の指名や入札参加を禁止する行政措置も行われることになります。さらにこの事件は、建設費に補助金や交付金を出した国や県に対して、その分の返還問題へと連鎖していくため、マスコミが報道する重要性は明らかです。

■談合事件が発生した場合、該当企業の社長ら幹部が謝罪会見をし、マスコミのフラッシュが焚かれる前で、頭を深々と下げるのが常です。談合5社の社長は、謝罪会見で、「談合が勧告の対象とされた5年間だけだったのか?」と記者団から説明を求められるはずです。しかし、マスコミはそうした報道をなぜか行いません。

 今回のゴミ焼却炉談合事件で、談合対象となった期間はわずか5年間でした。公取委の談合勧告後も、最大で年間8千億円に上るごみ焼却炉建設が毎年行われ、談合5社は「公取委の審判中だ」とか「裁判中だ」として、談合が確定したわけではないと主張して建設工事を行ってきました。勿論、談合事件が、民間の談合5社だけで実施できるわけではありません。そこには、役人や政治家らが関与したり、たかっていたからこそ、落札率平均が96.6%などという非常識がまかり通っていたのでした。

 現在の談合問題は、「総合評価方式」という仕組みなどが考案されて官製談合として面々と続いています。天下り役人らと談合事件の関連性に着目し、実態を白日のもとに曝さない限り、環境・廃棄物行政が正常化できる可能性はありません。特に、群馬県は政治家の利権意欲がとりわけ強い土地柄です。役人が目の前で行われる不正について、告発するケースも全国的に見て群馬県は非常に低調です。少しでも改革に一歩を歩みだせるよう、引き続きオンブズマン活動の重要性が認識されています。

【ひらく会情報部】

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