■おそらく我が国地方自治体史上最大の横領事件であろう、安中市土地開発公社を舞台に18年前に発覚したタゴ51億円事件は、当時、横領犯とされた元職員タゴと一緒に土地開発公社の監事や理事として公社の運営に関与して居ていた御仁が、現在安中市の首長に君臨していますが、安中市土地開発公社の伏魔殿化は、すでに仕上げの段階にあったことが判明しました。
これまで、安中市土地開発公社が事業を行うために、銀行から資金を借り入れる場合には、安中市が債務保証をしているため、銀行は、公社に対して安心して融資をすることが可能になると思われていました。ところが実際には、そうではなかったのです。安中市の債務保証がなくても、安中市土地開発公社は、金融機関から融資を受けていたことが確認されたからです。
当会は、この非常識な実態について、うかつにもこれまでずっと知りませんでした。このことが分かったのは、たまたま、安中市が東邦亜鉛安中製錬所周辺のカドミウム汚染土壌の除染のための公害特別土地改良事業のアンケート調査を今年1月下旬から地元関係者に対して実施し、それに関連して、事業推進の鍵となる客土用の土の確保に、安中市鷺宮にある群馬県の所有地だった安中桑園跡地の表土が最適であるという話が浮上したためです。
■安中カドミウム公害に苦しめられ続けている安中市岩野谷地区の住民らは、この負の遺産を次世代に残さないことを悲願としており、公害特別土地改良事業に係るこのアンケートに早速回答して既に安中市に提出済みです。現在、次のステップに向けた作業が行政と碓氷川流域農用地土壌汚染対策会議公害防除特別土地改良事業推進委員会により進められているものと見られますが、一向にその状況は地元関係者には明らかにされていません。一方、この汚染土壌の除染事業の鍵を握る客土の確保として、一昨年から注目されてきた群馬県人工飼料センターが保有していた安中桑園(安中市鷺宮)の跡地約10ヘクタールに存在する重金属汚染のない健全な畑地の表土の取り扱いが注目されてきました。しかし、東邦亜鉛から長年資金援助を受け、東邦亜鉛との関係が極めて強い地元安中市の岡田義弘市長が、自ら理事監事としてタゴ51億円事件の舞台となった安中市土地開発公社理事長に君臨し、タゴ事件の尻拭いである群馬銀行への和解金支払いの原資をひねり出すため、この安中桑園跡地を公社が県から買い取り、工業団地として造成して、地元のボルテックスセイグン向けの物流基地として販売することを思いつきました。そのため、タゴ51億円の103年ローンの履行と、東邦亜鉛安中公害の除染作業による東邦亜鉛の負担金支払い遅延による同社負担軽減の一挙両得を狙い、しゃにむに安中桑園跡の再開発に血道をあげています。
当会では土地開発公社を隠れ蓑に、水面下でおこなわれているこの不透明な事業の推移を明らかにするため、行政に対して情報開示を続けています。とりわけ、安中桑園跡の買取に関する敬意については、群馬県からは一部黒塗りながらも概ね関係情報が開示されましたが、安中市の岡田市長は、自ら理事長を兼務する安中市土地開発公社は別法人だとして、あくまで市民に関係情報をひた隠しにしています。
■東邦亜鉛の安中公害による汚染土壌の除染事業と、これに関連した安中桑園跡の取扱について、当会は、平成25年2月25日に、次の内容で、安中市長に行政文書開示請求を行いました。
<開示を請求する行政文書の内容又は件名>
安中市(産業部農林課を含む)が保有する公害防除特別土地改良事業推進委員会が関係する次の情報。
①平成25年1月17日付で「各位」あてに発出した「アンケート調査へのご協力のお願い」と題する書面を作成し、発送するまでの経緯を示す情報(推進委員会と事務局による調査方法に関する打合せ議事録等を含む)
②推進委員会(事務局を含む)の事務事業に関する情報(所掌を定めた規程、規約、要領、組織表、組織図、役員名簿、委員名簿、メンバー表等を含む)
③平成6年10月に行った191名対象の意向調査のためのアンケート結果(請求人関係のものも含む)
④平成8年発足以降、推進委員会における内部(事務局と役員との連絡文書を含む)及び外部(国や県や市や住民等)との会議録(「7月21日に開催された推進委員会役員会」の会議録、推進委員会名で住民に出された通知等を含む)
⑤区画整理方式による事業推進のため、平成8年ごろ作成して地元で説明した資料、及び今回の事業内容の地元向け説明資料(後者は、もしあれば。不存在であればその旨回答下さい)
⑥平成8年ごろ作成した事業計画における北野殿の事業対象区域内の地目別面積(農地、原野、住宅地、道路敷、官地、東邦亜鉛所有地がわかるもの)
⑦事業推進に欠かせない客土用の土取り場として有望視されていた市内鷲宮にある県稚蚕人工飼育センター安中桑園の表土について市公社による工業団地造成の工期の問題等により、残念ながら土取場としての利用を市が断念した経緯(上記④にも関連するが、これまで群馬県に対して買収を打診してきた協議録を含む。また、群馬県との協議ではじめて土取り場を断念したことが議題に上ったとされる平成25年1月9日の会議録も含む)
⑧平成25年2月20日の岩野谷地区における地区別懇談会で、安中市長は、既に造成のための入札を行っているかのような発言をしたが、安中桑園の買収に関する市と県とのやりとりのわかるもの(なお、群馬県では既に市と仮契約を結んでいると説明しているので、仮契約の内容も含む)
⑨上記の公社による入札に関する情報(開発計画の内容がわかる情報を含む)
■その結果、平成25年3月8日付で、次の行政文書については不存在とする決定通知書が安中市長から届きました。
<行政文書が存在しない理由>
請求内容⑧「安中桑園の買収に関する市と県とのやりとりのわかるもの」に係る情報について、企画課が保有する行政文書は不存在である。
請求内容⑧カツコ内部分「(なお、群馬県では既に市と仮契約を結んでいると説明しているので、仮契約の内容も含む)」に関しての情報及び請求内容⑨カツコ内部分「(開発計画の内容がわかる情報を含む)に関しての情報」については、安中市土地開発公社(以下「公社」という)に係る情報である。
公社が保有する情報については、安中市情報公開条例第24条第2項により、公社に対し平成25年2月26日付文書にて、上記開示請求内容に係る情報の提出を求めたが、公社から同年3月7日付文書で、『当該申し出のあった情報については、「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報」と認められたため提出できない』旨の回答がなされた。
公社が保有する情報については、実施機関(市)からの提出依頼に対して、公社から情報提供があったときに実施機関が保有する情報になるが、本件については、公社から情報の提出がなかったため、実施機関として開示できる行政文書は不存在である。
■そこで当会では、さっそく平成25年3月18日付で、異議申立書を岡田市長宛に提出しました。
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1.異議申立に係る処分があったことを知った年月日:平成25年3月9日
2.異議申立の趣旨:
本件処分は、条例を不当に解釈し運用されたものであり、本件処分の取り消しを求めます。
3.異議申立の理由:
(1)異議申立人は安中市民であり納税者として行政文書の開示を求める権利を有しています。
(2)請求した情報は、安中市土地開発公社(以下「公社」という)に関係する情報が含まれているとしても、公社の基本金500万円を支出している安中市の管理下に置かれていることから、公社に関する情報は、安中市が必ず保有していなければならない。今回の安中桑園の買収及び造成工事は、いわゆる公拡法に基づく公社の事業ではなくプロパー事業の可能性がある。しかし公共用地の先行取得であろうが、公社のプロパー事業であろうが、公社に関わる事業について、安中市が必要な情報は全て取得していなければならない。なぜなら、公社の行う事業に対しては安中市が債務保証人として全て関与するからである。
(3)安中市長は、公社が保有する情報について、条例第24条第2項「実施機関が保有していないものについて、当該情報の公開の申出があったときは、当該法人(=公社)に対して当該情報を実施機関に提出するよう求めることができる」と定めてあることを引用して、同年3月7日付文書で『当該申出のあった情報については、「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報」と認められたため提出できない』旨の回答がなされたことを、不存在の根拠に挙げている。しかし、今回の不存在通知には、公社理事長が市長宛に出したとされる文書の内容が具体的に示されておらず、しかも、どのような当該情報が公社の経営に支障を及ぼすおそれがあるのか、個々に具体的に判断できるような理由が示されていない。また、不存在とされている当該文書のタイトルや内容、内訳についても全く示されていない。これは、明らかに条例の誤った解釈及び運用である。
(4)安中市の場合、市長が公社理事長を兼務している。これは、平成7年5月18日に公社内部でひそかに発覚した巨額詐欺横領事件を契機に、こうした不祥事の再発を防ぐために、それ以降、11年以上にわたり、公社の理事長には、市長以外の人物が就任していた。総務省においても、公社の透明性の観点から、市長が公社理事長を兼務することがないようにと指導している。まして、毎年2000万円もの公金を市民のためにではなく、元公社職員の豪遊のツケとして群馬銀行に和解金の支払をしている現状がこのあと89年間も継続される可能性があることを鑑みれば、公社に存在していて、安中市が把握できな情報というものはあってはならないはずである。
(5)しかも、安中市長が兼務している公社理事長が、安中市長の提出命令にたいして「ノー」と言えるのであれば、行政ガバナンス(統治)の観点から非常にゆゆしき問題であり、ましてや史上空前の横領事件を起こした自治体と公社という関係にある実情からすれば、公社の情報について、安中市が入手していないものが存在するということ自体、許されるものではない。さらに、公社の理事は、現在、全員が安中市の部課長クラスの幹部で占められている。このことから、公社の運営面において、安中市が情報を保有していないということはおよそありえない。
(6)今回の請求で⑨として公社による入札に関する情報として、入札結果については、安中市のホームページ上に掲載されていることが情報提供された。この入札は、「鷺宮物流団地造成工事」と銘打って、平成25年2月12日に開札されているが、この入札は、ホームページによれば「安中市発注の建設工事、測量等委託業務」とあるが、実際の入札実施機関は公社である可能性が高い。だが、公社は事業費の借り入れなどは全て安中市に依存しなければならず、債務保証人である安中市が、公社事業に必要な情報は全て保有しているのは明らかである。
(7)以上のことから、公社に関する情報が条例第24条に基づいて、安中市長から公社理事長に情報提出命令が出された場合に、公社理事長がそれを拒める立場には無く、また、公社の情報は、全て安中市が把握していなければならない。さもないと、公社を舞台にした巨額詐欺横領事件の再発防止が担保されず、再び、当該事件発覚以前の状態に安中市が置かれていることになり、非常に危険な状況になってしまうからである。
(8)よって、本件処分を取り消し、全面開示を求める。
■すると、平成25年5月10日に安中市法制課から、当会の異議申立を情報公開・個人情報保護審査会に諮問したことに関する通知と一緒に、次の内容の「お詫び」状が送られてきました。
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別紙「情報公開・個人情報保護審査会への諮問について」につきましては、ご案内のとおり実施機関において手続を進めています。
小川様から当該異議申立書の提出後、実施機関である市長において当初の決定である原処分(企画課での行政文書不存在)について再調査・再検討を行いました。結果、企画課には該当文書は存在していませんでしたが、商工観光課において小川様からの請求(平成25年2月25日付け)に対して、一部該当する行政文書が存在することが確認されました(当初において行政文書を特定する際、当時の商工観光課の担当に確認したところ、該当する行政文書はないとの報告を受けていました。)。このことは、行政文書の特定のための検索が不十分であったことに起因することであり、結果、小川様にご迷惑をおかけすることになってしまい、大変申し訳ありません。
よって、商工観光課において開示手続が完了次第、速やかに一部該当する行政文書について追加による開示を行う予定ですので、お含み置きください。
平成25年5月10日
事務局:法制課法務係(内線1043)
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■そして、平成25年6月14日に、審査会を通じて、安中市の理由説明書の送付と、当会への意見書提出依頼通知がありました。安中市の理由説明の内容は次のとおりです。
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【安中市からの理由説明書】
情報公開に係る異議申立てに対する理由説明書
異議申立人小川賢(以下「異議申立人」という。)が、平成25年3月19日付けで提起した安中本情報公開条例(以下「本件条例」という。)第11条第2項の規定による行政文書不存在決定及び入札に関する情報提供に係る異議申立てについて、行政文書不存在とした理由を次のとおり説明します。
1.異議申立ての理由に対する諾否
(1)については認める。
(2)につき
「公社に関する情報は、安中市が保有していなければならない。」の部分は否認する。「今回の安中桑園買収及び造成工事は、いわゆる公拡法に基づく公社の事業ではなくブロパー事業の可能性がある。」の部分は認める。「しかし公共用地の先行取得であろうが、公社のブロバー事業であろうが、公社に関わる事業について、安中市が必要な情報は全て取得しなければならない。」の部分、「なぜなら、公社の行う事業に対しては安中市が債務保証人として全て関与するからである。」の部分は否認する。
(3)につき
「安中市長は、(中略)『当該申出のあった情報については、「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報」と認められたため提出できない』旨の回答がなされたことを、不存在の根拠に挙げている。」の部分、「しかし、今回の不存在通知には、公社理事長が市長宛に出したとされる文書の内容が具体的に示されておらず」の部分及び「しかも、どのような当該情報が公社の経営に支障を及ぼすおそれがあるのか、ここに具体的に判断できるような理由が示されていない。」の部分についても詰める。「また不存在とされている当該文書のタイトルや内容、内訳についても全く示されていない。これは明らかに条例の誤った解釈及び運用である。」の部分は否認する。
(4)につき
「安中市の場合、市長が公社理事長を兼務している。」の部分は認める。
「これは平成7年5月18日に公社内部でひそかに発覚した巨額詐欺横領事件を契機に、こうした不祥事の再発を防ぐために、それ以降、11年以上にわたり、公社の理事長には、市長以外の人物が就任していた。」の部分は否認する。「総務省においても、公社の透明性の観点から、市長が公社理事長を兼務することがないようにと指導している。」の部分は不知。「まして、毎年2000万円もの公金を市民のためにではなく、元公社職員の豪遊のツケとして群馬銀行に和解全の支払いをしている現状がこのあと89年間も継続される可能性があることを鑑みれば、公社に存在して、安中市が把握できない情報があってはならないはずである。」の部分は否認する.
(5)につき
「しかも、(中略)公社の情報について、安中市加入手していないものが存在すること自体、許されるものではない。」の部分は否認する。「さらに、公社の理事は、現在、全員が安中市の部課長クラスの幹部で占められている。」の部分は認める。但し、「部課長クラス」ではなく「部長クラス」である。「このことから、公社の運営面において、安中市が情報を保有していないということはおよそありえない。」の部分は否認する。
(6)につき
「今回の請求で⑨として公社による入札に関する情報として、入札結果は安中市のホームページ上に掲載されていることが情報提供された。この入札は、(中略)実際の入札実施機関は公社である可能性が高い。」の部分は認める。
「だが、公社は事業費の借り入れなどは全て安中市に依存しなければならず、債務保証人である安中市が、公社事業に必要な情報は全て保有しているのは明らかである。]の部分は否認する。
(7)につき
「以上のことから、公社に関する情報が条例第24条に基づいて、安中市長から公社理事長に情報提出命令が出された場合に、公社理事長がそれを拒める立場には無く、また、公社の情報は、全て安中市が把握していなければならない。さもないと、公社を舞台にした巨額詐欺横領事件の再発防止が担保されず、再び、当該事件発覚以前の状態に安中市が置かれることになり、非常に危険な状況になってしまうからである。」の部分は否認する。
(8)について否認する。
2.本件の経過
(1)平成25年2月25日、異議申立人は「安中市(産業部農林課を含む)が保有する公害防除特別土地改良事業推進委員会加関係する次の情報」①から⑨について、本件条例第5条及び第6条第1項の規定により安中市長(以下「実施機関」という。)に対し行政文書開示請求(以下「本件請求」という。)をした。
(2)同日、行政文書開示請求書を所管課である企画課にて受理した。実施機関は本件条例第24条第2項の規定に基づき、行政文書開示請求書の内容⑧及び⑨について、安中市土地開発公社(以下「公社」という。)に対し、同年2月26日付け文書で、保有する情報の提出を依頼した。
(3)同年3月7日、公社より(2)については「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報」であるため、提出できない旨の回答の提出を受けた。
(4)同年3月8日、請求のあった文書については、公社から情報の提出がなかったため実施機開には文書が存在しないので、行政文言不存在決定をし、異議申立人に対して行政文書不存在通知書を送付した。また、開示請求書の内容⑨「公社による入札に関する情報」については、安中市ホームページ【入札・契約情報】にて確認できることの情報提供も併せて行った。
(5)同年3月18目、異議申立人は本件文書の不存在決定に対し、条例を不当に解釈し運用したものとして、処分の取消しを求めた。
(6)同年3月25日、上記(5)の異議申立てを受け、実施機関は再度、公社に対し、本件条例第24条第2項の規定に基づき、本件請求に関して保有する情報の提出を求めた。
(7)同年4月26日、実施機関は公社より上記(引に対する回答を受けた。
本件請求の⑧安中桑園の買収に関する市と県とのやりとりのわかるもの(なお、群馬県では既に市と仮契約を結んでいると説明しているので、仮契約の内容も含む)、⑨上記の公社による入札に関する情報(開発計画の内容がわかる情報を含む)について、再び「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報」であるため、提出できない旨の回答の提出を受けた。
3.本件請求文書の開示について(追加して開示した情報について)
本件処分のうち、実施機関(企画課)が不存在とした③「安中桑園の買収に関する市と県とのやりとりのわかるもの」の情報については、商工観光課にて保有する情報であったため、平成25年6月4日に開示しております。
4.本件処分をした理由
(1)本件処分のうち、実施機関(企画課)において行政文書不存在について
安中市と公社は別法人である。当市が保有する情報については、安中市情報公開条例に則り、また公社が保有する情報については、安中市土地開発公社情報公開規程に則って、それぞれの情報開示決定を行っている。公社は、その設立において「市が2分の1以上を出資している法人」であるため]貴報開示請求において、本件条例第24条第2項の規定に基づき、平成25年2月26日付で実施機関たる安中市は公社に対し、その保有する情報の提出依頼を行った(別紙1)。
しかし、同年3月7日付けで公社よりなされた回答において、「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報であり提出できない」旨が示され(別紙2:安土開発第26号)、情報の提出を受けなかったことから、実施機関としては情報を保有しておらず不存在であったため、開示できなかったものである。本件請求においては、その後、請求者から同年3月18日付で異議申立てがあり、同年3月25日付で公社に対して、再度情報の提出を強く求めた(別紙3)ところ、公社からは、同年4月26日付けで回答があり(別紙4:安土開発第6号)、再度「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報」であることから提出できない旨の回答がなされた。実施機関としては、本件条例の規定に基づき、公社に対して情報提出依頼を行ったが、情報を入手することができず、
現に保有する情報が存在しないため、開示することができないものである。
(2)不存在処分の適法性
以上のことから、公社が保有する情報については実施機関からの提出依頼に対して、公社から情報提供があったときに実施機関が保有する情報となる。本件条例第24条第2項の規定は、公社に対して情報提出に関し任意の協力を求めることができる旨を定めたものであって、情報の提出について強制力はないため、公社の任意の協力が得られない以上、実施機関としては情報を取得することができない。
本件については、公社から情報の提出がなかったため実施機関としては保有する情報が存在せず、開示することができなかったものであり、本件処分は条例に照らし合わせても違背するものではなく適法である。 以上
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■ところが、安中市から理由説明書が審査会に出された直前のタイミングで、平成25年6月4日に、次の情報が部分開示されました。ようするに安中市が得意とする後出しジャンケンです。岡田市長の匿名を受けた特定の市幹部が、安中桑園跡の払下げに関する手続きを一手に扱っており、その情報を庁内で共有化しようとしていなかったのです。
【行政文書開示請求に関する写しの一覧】
<開示請求の件名>
別紙行政文書開示請求書の開示を請求する行政文書の内容又は件名のうち、⑧に係る行政文書
行政文書の名称/開示の別/不開示とした箇所/該当条項/開示しない理由/枚数
(1)鷲宮「安中桑園」払い下げ・工業団地造成に係る打合せについて/開示/-/-/-/4
(2)業務報告書(安中桑園の払い下げについて)/部分開示/法人名、法人担当者名/安中市情報公開条例第7条第2号及び第3号/個人情報のため。法人に関する情報であって、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。/5
(3)安中桑園払い下げに係る打合せについて/部分開示/法人名、法人担当者名/安中市情報公開条例第7条第2号及び第3号/個人情報のため。法人に関する情報であって、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。/7
(4)県所有「安中桑園(鷲宮)」工業団地創設に係る連絡会について/開示/-/-/-/5
(5)新工業団地計画について/開示/-/-/-/3
(6)稚蚕人工飼料センター(安中市)売り払い手続きの見込み/部分開示/法人名/安中市情報公開条例第7条第3号/法人に関する情報であって、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。/3
(7)県有地の買取希望について/開示/-/-/-/5
(8)現時点における安中桑園払い下げの県の方針/開示/-/-/-/1
(9)新工業団地計画について/開示/-/-/-/1
(10)「安中桑園」払い下げ・工業団地造成に係るスケジュール/開示/-/-/-/1
(11)群馬県稚蚕人工飼料センター安中桑園の活用・処理に係る打合せ/部分開示/法人名、法人代表者名、住所、資本金、従業員、事業内容/安中市情報公開条例第7条第2号及び第3号/個人情報のため。法人に関する情報であって、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。/2
(12)安中桑園の評価額/開示/-/-/-/3
該当行政文書/計42
写しの費用 420円
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■こうした経緯が判明したため、当会は、市の理由説明に対する反論等について、平成25年7月16日に、審査会宛に意見書としてまとめ、提出しました。
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意 見 書
平成25年7月16日
安中市情報公開・個人情報審査会
会長 采 女 英 幸 様
異議申立人
郵便番号 379-0114
住 所 安中市野殿980番地
氏 名 小川 賢 (61歳)
連 絡 先 TEL:090-××××-××××
平成25年6月14日付貴状にもとづき、安中市長の理由説明書に関して次のとおり意見書を提出します。
1. 異議申立ての理由に対する実施機関(安中市長:総務部企画課)の諾否に関する意見
(1)異議申立人は安中市民であり納税者として行政文書の開示を求める権利を有していることについて、実施機関が認めるのは当然である。
(2)実施機関が異議申立人の主張する「公社に関する情報は、安中市が保有していなければならない」という部分を否認したことは言語道断である。
公社を舞台にした地方自治体としては史上空前の巨額詐欺横領事件が平成7年5月18日に発覚した後、実施機関は同年9月19日に安中市事故対策委員会が安中市議会全員協議会に再発防止対策を記した報告書を提出した。それによると、実施機関は、事件の背景原因理由として「公印管理」「人事管理」「文書管理」の不徹底を上げた上で、公社側の再発防止対策と市側の再発防止対策を列挙している。
この中で実施機関は、市側の再発防止対策として、「職員研修の充実:市職員と公社職員が併任の為、公務員倫理研修を更に充実すること」(即時実施)、「金銭消費貸借契約証書(金証)のチェック:金証の綿密なチェックを実施、借入期間延長、利率変更等の契約変更証書にも市の債務保証に関わる市長印が必要」(即時実施)、「市長公印管理:変更契約証書に紛れ込ませていた偽造の金証に、秘書課が押印してしまったので、決算書類と金証を綿密にチェック」(既に実施済)、「定期的人事異動:適材適所で同一職場で長期にわたらぬよう異動を実施する」(次期=平成8年度の異動から実施)、「市の監査委員:地方自治法第199条第7項に基づく市の定期監査を実施する」(公社役員改選後実施)、「公社管理の充実:公拡法19条に基づく市の監督権を充実するため、総務部企画課が公社の連絡調整事務を行うよう事務分掌規則を改正する」(平成8年度から実施)、「各課専用印管理:専用印は鍵のかかる所に保管。課長の机上で押印すること。税務課・市民課は市民サービスと事務能率維持の為、市民課の諸署名は窓口係長席で、公印台帳管理は一括とする」(既に実施済)を市民の代表である議会に報告して了承された。
今回の実施機関の理由説明書は、上記の「公社管理の充実」にかかる公拡法19条の市の監督権を放棄したものであり、全国に安中市政の恥をさらした事件から18年しか経過しておらず、さらにあと89年間も群銀への和解金のローンが残っているというのに、早くも実施機関は事件当時の状態に戻ってしまったらしい。猛省を促したい。
きわめつけは前項(2)の最後の部分で、実施機関が「公社の行う事業に対しては安中市が債務保証人として関与しない」と主張していることだ。安中市の後ろ盾がなければ、公社は銀行から融資を受けたり、市から事務費を支払ってもらったり、事業委託を受けたりすることは一切できないはずだ。にもかかわらず、これを否認するとは、18年前に逆戻りをしているのも同然だ。第二のタゴ事件の温床は既に醸成されているといえよう。猛省を促したい。
(3)実施機関が異議申立人の主張する「また不存在とされている当該文書のタイトルや内容、内訳についても全く示されていない。これは明らかに条例の誤った解釈及び運用である」という部分を否認しているのは言語道断だ。
前項(2)にも関連するが、安中市の後ろ盾なくしては、公社はなにもできないのである。公社が事業を実施するには、安中市からの債務保証や金銭消費貸借契約証書(金証)を得るため、必要な手続きと、そのために提出しなければならない文書があるはずだ。それらを明らかにせず“不存在”として無視しようとする実施機関の対応は言語道断だ。猛省を促したい。
(4)実施機関が異議申立人の主張する「巨額詐欺横領事件を契機に、こうした不祥事の再発を防ぐために、それ以降、11年以上にわたり、公社の理事長には市長以外の人物が就任していた」という部分を否認しているのは言語道断だ。
さらに「総務省においても、公社の透明性の観点から、市長が公社理事長を兼務することがないように指導している」という部分を不知だと主張する実施機関の非常識なコメントは、およそ地方公共団体としての資質を自ら否定しているといえよう。これでは、18年前に逆戻りをしているのも同然だ。第二のタゴ事件の温床は既に醸成されているといえる。猛省を促したい。
その後の「和解金の支払いをしている現状がこのあと89年官も継続される可能性を鑑みれば、公社に存在して、安中市が把握できない情報があってはならないはずだ」という異議申立人の主張部分をも、実施機関は否認していることも、第二のタゴ事件の温床は既に醸成されているといえる。猛省を促したい。
(5)実施機関が異議申立人の主張する「公社情報について、安中市が入手していないものが存在すること自体、許されるものではない」という部分を否認しているのは言語道断だ。このことも、公社の伏魔殿化ぶりを如実に示すものであり、18年前の逆戻りをしているのも同然だ。第二のタゴ事件の温床は既に醸成されているといえよう。猛省を促したい。
また、「部課長クラス」ではなく「部長クラス」により、公社の理事が占められていることは、部長が公社理事を併任していることと同じ意味だから、第三者の監視と統制が効かないことを自ら認めている。市長も理事長を兼務しており、これは民法で禁止されている双方代理にあたり、違法行為である。コンプライアンスもへったくれもない安中市と公社がこうしたルーズな相互関係にあることは、第二のタゴ事件の温床が既に醸成されているといえる。猛省を促したい。
(7)実施機関が異議申立人の主張する「情報公開条例24条に基づいて、市長が理事長に提出命令を出せば、理事長はそれを拒める立場にはなく、公社の情報は、全て安中市が把握していなければならない。さもないとタゴ事件の再発防止が担保されず、18年前と同様に危険な状況に陥る」という部分を否認しているのは言語道断だ。このことも、公社の伏魔殿化ぶりを如実に示すものであり、18年前の逆戻りをしているのも同然だ。第二のタゴ事件の温床は既に醸成されているといえよう。猛省を促したい。
(8)以上のように、現在の安中市長が推し進める公社の伏魔殿化は、18年前の公社の状況を髣髴とさせる。第二のタゴ事件の温床がこれ以上醸成されないように、速やかに公社関連情報を開示すべきだ。
2.本件の経緯に関する実施機関の理由説明に対する意見
とくになし。
3.本件請求文書に関連した後付けの追加開示情報に関する実施機関の理由説明内容について
(1)実施機関は、平成25年6月4日になって、突然、隠していた情報の一部と見られる公文書を開示してきたが、このまま隠し続けると、異議申立人が次の段階で住民訴訟をするのではないかと慮ったためと見られる。その場合でも、裁判所は、ことタゴ事件と市民がよぶ公社を舞台にした巨額詐欺横領事件に関連したこれまでの行政訴訟で、ことごとく住民側を敗訴させたことから、通常であれば、実施機関は心配する必要がないはずだ。だが、情報開示条例を巡る行政訴訟の場合、ほんの僅かだが住民側勝訴の確率が良くなる傾向にある。だから、長考の末、突然追加開示をしてきたものとみられる。
(2)この言い訳が振るっている。安中桑園に関する情報は造成した工業団地のセールス業務となるため、「商工観光課」が担当していたが、そのときの担当者であった課長補佐が、その後、異動を経てもなお、本件に関して担当をしていたというのである。
(3)そもそも、公社の監督権は、前項1.(2)のとおり安中市にあり、「公社管理の充実」は「公拡法に基づく市の監督権を充実するため、総務部企画課が公社の連絡調整事務を行うように事務分掌規則を改正すること」となっており、平成7年9月19日時点で、そのような市役所内での体制になっていたはずだ。
(4)異議申立人も、公社のことはすべて企画課が掌握しているものと信じていたので、平成25年6月4日の追加開示情報の公開手続の際に、今回の「不存在のはずが存在」となった経緯を総務部の法制課にたずねた。
(5)その結果、法制課の説明では「とにかく、これは検索が不十分という言葉につきる。企画課の当時の担当職員(=現在の総務部長)にきいたら、『何もない』という言葉を鵜呑みにしてしまったのが要因。『ないわきゃないよね』という話をしていたが、当時の担当は、現在の総務部の田中毅部長なのだが、商工観光課の係長時代から本件に関わっていて、企画課長に異動になったときにも本件の仕事を持っていった。だから法制課は企画課に文書があると考えて同課に訊ねたが『何もない』というので、念のため、当時のことを担当者として知っているはずの現・総務部長に関連文書の有無を確認したところ『いや、特に文書に残していないから、何もないと思う』ということで、法制課としては不存在という形で通知をした」という。
(6)法制課担当者は「本当に田中総務部長はこのことを忘れていたらしい」と記憶の問題であることを強調したが、問題なのは、田中毅職員(商工観光課係長→企画課長→総務部長)の本人に帰属する情報として本件情報が管理されていたことである。このことについて、情報開示担当部署の職員らに尋ねたところ「当該文書が残っているから、特に問題ではない」とのコメントであった。
(7)このように、かつて公社監事として、元職員が前年度の決算書の残額を、翌年度の決算書でチャラにしたのに、それを見逃した現・安中市長でもある公社の岡田理事長の命を受けて、平成19年9月から鷺宮の県有地の桑園跡地を安中市に払い下げる件について、県と交渉してきた現・総務部長が、公社に払い下げる計画で最初から本件にタッチしてきたにもかかわらず、公社を監督する立場の企画課に情報を流してこなかった。
(8)さらに、自身が企画課長として異動していたことがあるのにもかかわらず、企画課にファイルを残していなかったことは、鷺宮の桑園跡地を公社のプロパー事業としてなんとしてでも取り込んで、事業費の一部を事務費として安中市から支払われる公金をタゴ事件の尻拭いに充当するための思惑があり、外部から妙な雑音が入らないように、情報コントロールをしていたことがわかる。
(9)そして、ついに総務部長になっても、本件に関する情報秘匿に心をくだき、異議申立人が桑園跡地の利活用について情報開示請求をしてもなお、開示担当の法制課職員にウソをついてまで、情報開示をしたがらなかった。このことは、タゴ事件=巨額詐欺横領事件の再発防止の観点からせっかく当時、事務分掌規則を改正したのに、すでに骨抜き状態になっていることをうかがわせる。このことも、公社の伏魔殿化ぶりを如実に示すものであり、18年前の逆戻りをしているのも同然だ。第二のタゴ事件の温床は既に醸成されているといえよう。猛省を促したい。
4.本件処分をした実施機関の理由について
(1)今回の公社関係情報の開示に関する実施機関の対応姿勢は、以前、異議申立人が、公社事件で横領した公金を資金にして購入された絵画等6点を巡り、4年前に元職員が刑期を終えて出所後、3年前の安中市長選の後、絵画等6点が友人から元職員の配偶者に返却され、元職員の配偶者が公社に寄付を申し入れたことに関連して、絵画等6点のビジュアル情報を開示請求した際にも、実施機関は、異議申立人に対して、同じように、市長が公社理事長に文書で開示を要請したが、理事長が市長に対して、開示を拒絶した時と同じである。
(2)史上空前の巨額詐欺横領事件を公社で起こしておきながら、公社の理事長や理事を兼務している安中市長や部長が、公社の内情を知り尽くしているのに、それを安中市の立場として知らないと言い張るのは滑稽であり、そのような理屈が役所では通用するものだと信じているらしい(本当は、通用しないと思っていても首長ににらまれるのが怖くて何もいえないのが実態なのかもしれないが)。
しかし、こうしたバカバカしい屁理屈をこね回してまでも「不存在処分の適法性」などと言い張り続け、公社の実態についてなんとしてでも市民に知られたくないとする安中市と公社の体質は、現在の安中市長が推し進める公社の伏魔殿化が日に日に進捗してしまい、既に18年前の公社の状況と同じになってしまっていることを異議申立人は痛感する。第二のタゴ事件の温床がこれ以上醸成されないように、速やかにあらゆる公社関連情報は開示されなければならない。
よって、本件処分を取り消し、全面開示を求める。 以上
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■そしてこの度、平成25年8月19日付で、審査会から当会の異議申立に関する答申を安中市長に行ったという通知が届きました。
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【審査会からの送付状】
平成25年8月19日
異議申立人
小 川 賢 様
安中市情報公開・個人情報保護審査会
会 長 采 女 英 幸
情報公開の異議申立てに関する答申について(送付)
安中面長から、あなたの情報公開の異議申立てに関する諮問があり、提出された関係資料等をもとに平成25年8月1日開催の蜜査会において、審査した結果、別紙のとおり答申しましたので、安中市情報公開・個人情報保護審査会規則第5条によりその写しを送付します。
なお、後日、答申結果を参考として諮問機関である安中市長から今回の処分の異議申立てに対する正式な決定があります。
事務局:法制課 法務係
TEL382-1111内線(1043)
【審査会から市長への答申書】
平成25年8月19日
実施機関
安中市長 岡 田 義 弘 様
安中市情報公開・個人情報保護審査会
会 長 采 女 英 幸
⑧安中桑園の買収に関する市と県とのやりとりのわかるもの(なお、群馬県では既に市と仮契約を結んでいると説明しているので、仮契約の内容も含む)及び⑨上記の公社による入札に関する情報(開発計画の内容がわかる情報を含む)に関係する行政文書不存在による不開示決定処分に対する異議申立てについて(答申)
記
平成25年5月9日付けで諮問のあった標記の件について、平成25年8月1日開催の審査会において審査した結果に基づき、別紙のとおり答申します。
(別紙)
諮問第1号
⑧安中桑園の買収に関する市と県とのやりとりのわかるもの(なお、群馬県では既に市と仮契約を結んでいると説明しているので、仮契約の内容も含む)及び⑨上記の公社による入札に関する情報(開発計画の内容がわかる情報を含む)に関係する行政文書不存在による不開示決定処分に対する異議申立てについて(答申)
1 審査会の結論
平成25年2月25日付けで、安中市情報公開条例(以下「条例」という。)第6条第1項の規定により、開示請求された行政文書のうち、安中市土地開発公社が保有する情報について、実施機関が保有していない情報として、行政文書不存在通知書により不開示決定処分としたことは妥当である。
2 異議申立ての主張の要旨
安中市土地開発公社(以下「公社」という。)は、基本金500万円を支出している安中市の管理下に置かれており、公社の行う事業に対しては安中市が債務保証人として全て関与するのだから、公社に関する情報は安中市が必ず保有しなければならない。また、公社の経営面において、安中市長が公社理事長を兼務し、理事についても市の部長で占められていることから、公社に開する情報は、安中市が情報を保有していないということはおよそありえないし、安中市長から公社理事長に情報提出命令が出された場合に、公社理事長がそれを拒める立場にはない。
また、公社が保有する情報について、安中市長は公社に条例第24条第2項により当該申出のあった提出を求め、公社からF公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報」との理由で情報が安中市長に提出されず、結果、不存在としている。行政文書不存在通知書には、公社理事長が安中市長宛に出したとされる文書の内容が具体的に示されておらず、しかも、どのような当該情報が公社の経営に支障を及ぼすおそれがあるのか、個々に具体的に判断できるような理由が示されていない。さらには、不存在とされている当該文書のタイトルや内容、内訳が示されておらず、これらは明らかに条例の誤った解釈及び運用である。
以上により、安中市長が公社の保有する情報を当該行政文書として保有していなければならないのであるから、本件処分を取り消し、全部開示を求める。
3 異議申立てに対する実施機関の説明要旨
安中市と公社は別法人であり、市が保有している情報は条例に則り、公社が保有する情報については安中市土地開発公社情報公開規程(以下「公社規程」という。)に則って、情報公開決定を行っている。公社は安中市が2分の1以上出資している法人に該当するため、安中市情報公開条例第24条第2項に基づき、その保有する情報の提供を求めた。
公社に対し平成25年2月26日付けで当該情報の提出依頼を行ったが、平成25年3月7日付けの公社の回答により「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報であり提出できないl旨(公社規程第2条)が示された。情報の提出を受けなかったことから実施機関である安中市長は情報を保有しておらず不存在であったため、開示できなかった。安中市情報公開条例第24条第2項の規定は、公社に対して情報提出について任意の協力を求めることができる旨を定めるものであって、情報の提出について強制力はないため、公社の任意の協力が得られない以上、実施機関である安中市長は情報を取得することができない。なお、本件異議申立てがなされた後、丙度、平成25年3月25日付けで公社に対し同規定に基づく当該情報の提出依頼を行ったが、平成25年4月26日付け回答により情報の提出を受けることはできなかった。
行政文書不存在通知書において、「公社の経営に支障を及ぼすおそれがある情報」などの具体的な説明が表記なされなかったことは認めるが、そもそも具体的な説明や不存在とされている当該文書のタイトルや内容、内訳そのものが公社から示されていない情報であった。なお、異議申立て後の再度の平成25年3月25日付け当該情報の提出依頼に当たって、提出ができない場合については具体的な理由を文書で明示するよう公社に要請し、平成25年4月26日付け回答により当該情報の提供は受けられなかったが、公社の保有する情報の件名及び具体的な理由を付した回答を得た。
よって、公社から当該情報そのものの提供がなかったため、実施機関としては不存在により情報が開示できなかったものであるから、条例に違背したものではなく適法である。
4 審査会の判断
実施機関(安中市長)の説明によれば、開示請求のあった安中桑園の買収に関する市と県とのやりとりのわかる情報及び公社による入札に関する情報については、実施機関として全く保有していなかった。次に条例第24条第2項に基づき公社に提出を求めたが、公社規程第2条により「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報」とされて、提出を受けることができなかったため、行政文書の不存在を理由に不開示決定処分としたとのことである。
その後、異議申立人から本件異議申立てがなされたことから、行政文書が不存在であることについて詳細な調査をしたところ、安中桑園の買収に関する市と県とのやりとりのわかる情報については、総務部企画課ではなく、産業部商工観光課が保有する行政文書として存在することが判明し、異議申立人に事情を説明するとともに、当該行政文書については平成25年6月4日に追加して開示した。
また、公社に対しても、再度、情報の提出を強く求め、あわせて提出ができない場合は、公社が保有する開示請求内容に係る行政文書ごとに、提出できない具体的な理由を文書で回答するよう指示している。
その回答文書から、公開の申出があった情報は、「公社の経営に支障を反ぼすおそれのある情報」と認められること、公社内に保有する当該情報は、平成24年10月25日起案「県有財産譲渡申請書」、平成24年11月20日付「土地売買仮契約書」、平成25年1月21日起案「開発行為許可申請書」であること、公社は鷲宮物流団地分譲事業(旧安中桑園用地)として事業を継続中であること、当該事業については公社がブロパー事業として群馬県から用地を取得し、造成して買取希望企業に売却する予定であること、既に用地購入費、造成工事費等の前払金等で多額の資金が投入されており、同団地の造成計画は買受希望企業の意向を反映したオ一ダーメイド方式で進められていること等の事実が認められ、さらに、安中市の予算書を確認したところでは、当該事業について、公社は安中市の債務保証を受けていない。
以上をもとに、群馬県から安中桑園用地を買収したのは、実施機関ではなく公社であって、それ以後も公社の分譲事業として継続中であり、安中市の債務保証を受けている事業でもないため、異議申立人が開示請求した仮契約の内容やそれ以後の群馬県とのやりとり、公社による入札に関する情報は、実施機関に存在せず、公社が保有していることは明らかである。
なお、本件に係る異議申立書及び意見書の内容を検討する限りでは、安中桑園の買収に関する市と県とのやりとりのわかる情報について、異議申立人は開示請求をした行政文書が当初、実施機関に不存在であるとされ、後で追加により開示されたことに対しては、その理由には納得していないものの、特段の不服申立てはなく、公社が保有する情報が不開示であることを問題としていると思われる。
したがって、本審査会としては、実施機関における情報公開制度の根幹となるべき文書管理並びに開示請求文書の特定及び検索方法について改善の必要は認めるものの、追加で開示された文書の妥当性については、審査の対象とはせず、公社が保有する情報が実施機関に不存在であって、実施機関として開示できないことの適法性について、以下のとおり検討する。
公社は、群馬県知事の認可手続を経て、市とは別個の独立した法人として設立された組織であって、条例第2条第1項の実施機関には含まれていない。
しかし、公社は資金等の面において市と密接な関係を有するため、情報公開制度が及ぶ範囲として、安中市においては条例第24条に規定する「出資法人等」としての位置付けとなっている。
異議申立人が主張するように、公社が市の出資法人としての透明性を高めるべきであることに審査会としても異論はないが、どんなに強い関係があっても市と公社が別法人であることは厳然たる事実であって、公社に対しては、条例第24条第2項により情報提出に関し任意の協力を求めることはできるものの、情報の提供についての強制力はないことは、異議申立人が原告となって争った平成23年(行ウ)第10号公文書不公開処分取消請求事件及び平成23年(行コ)第306号公文書不公開処分取消請求控訴事件の判決で司法の判断が出されている。
このため、異議申立人が開示を求めている、安中桑園の買収に関する群馬県との仮契約締結以後に係る情報は、上記の事実から公社には存在するが、市の債務保証も公社からの関係文書の提出もないため、実施機関には不存在であって、不開示決定処分としたことに違法性はないと考える。
ただし、審査会として、条例上の実施機関ではない公社の情報公開についてまで審査権限が及ばないため、結論としては変わるものではないが、本件における公社の情報提供については問題があったと言わざるを得ない。
公社は、異議申立人による開示請求対象となった文書の全てについて、情報の提供を拒んだようであるが、その妥当性には甚だ疑問が残る。
例えば、異議申立人は、平成25年2月25日付けで「群馬県では既に市と仮契約を結んでいると説明しているので、仮契約の内容も含む」として開示請求しており、群馬県では平成25年2月定例会の議案として同日前に仮契約の内容が議案として提出されているにもかかわらず、公社から仮契約に関連する情報の提出は全くなされなかった。
また、公社による入札に関する情報が市のホームページの情報のみであるとは、考えられず、既に入札が終了していることを勘案すれば、当該情報の提供に支障はなかったはずである,
公社規程第2条によれば、「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報については、市との協議のうえ提出しないものとする」とあるが、当該|市との協議」において、市側が責任を果たさず、一方的な公社の恣意的な解釈・運用を認めてしまうと、租税負担者である住民への公費支出についての説明責任の観点から、出資法人等の情報公開を要請している条例第24条が形骸化してしまう結果になりかねない。
実施機関においては、平成23年(行コ)第306号公文書不公開処分取消請求控訴事件で、「当該法人の任意の協力が得られない以上,実施機関について文書(情報)が存在しないのは,やむを得ない」という一審判決が、「当該法人の任意の協力が得られず、当該法人(公社)の協力できないとする理由が一概に根拠のないものと断定することはできず、実施機関(安中市長)がさらに当該法人に協力を求めるべきであるともいえないことから,実施機関について文書(情報)が存在しないのは,やむを得ない」と変更されている点について十分留意し、公社の協力できない理由について合理的な根拠があるのか、きちんと判断の上、市としての「協議」の責任を果たすべきである。
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■驚きました。全国各地で、土地開発公社を解散する動きが活発化している中で、安中市土地開発公社は、解散どころか、独自で事業を展開し続けています。
この背景理由としては、安中市土地開発公社が解散すると、公社の莫大な債務(当然、これにはタゴ事件の尻拭いである群馬銀行への和解金の103年ローンの残額89年分が含まれる)が浮上し、その損失補償義務を安中市が負わなければならなくなることが挙げられます。
そうすると、これまで、公社は安中市と別法人だから安中市民には損害が及ばないと安中市が住民に対して説明し、事件の真相解明と責任の所在をハッキリさせようとして当会が住民訴訟をしても、裁判所まで、安中市の主張を認めて住民敗訴としてきた構図が崩壊するのです。
それにしても、タゴ51億円の尻拭い組織になり下がった安中市土地開発公社が、巨額の債務を抱えているにも関わらず、安中市の債務保証を求めずに、倒産同然の公社に融資をする金融機関が存在すること自体、信じられません。安中市は一刻も早く、この異常な状況を市民に公表する必要があります。
そのためにも、岡田市長は、とかく行政の御用機関同然となりがちな審査会の答申内容(最後の方に、弁護士の良心としてなのか、審査会の采女会長の追記が述べられているが)に安住せず、公社の経営実態がどうなっているのかについて、自ら説明責任を果たさなければなりません。
■当会としては、今回の異議申立が棄却もしくは却下された場合には、あらためて土地開発公社の債務に関する情報開示請求を安中市に提起し、公社がどの金融機関に対してどれくらいの債務を負っているのかを早急に明らかにしていく所存です。
【ひらく会情報部・タゴ51億円事件18周年調査班】