■引き続き、群馬県から送られてきた乙号証を見て行きましょう。
*****乙第7号証*****
20160315r7.pdf
《全文》
【文献番号】25443998
賃借料返還等請求住民訴訟事件
最高裁判所第二小法廷平成22年(行ヒ)第175号
平成23年12月2日判決
主 文
原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
被上告人らの請求をいずれも棄却する。
訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。
理 由
上告代理人倉田巌圓の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1 本件は,三重県いなべ市(以下「市」という。)の住民である被上告人らが,第1審判決別紙物件目録記載の各土地(以下「本件土地」と総称する。)の賃借人として市が締結した賃貸借契約は,工場用地の開発に協力した住民に対して賃料の名目で協力金を支払うことを目的とするものであって違法,無効であるから,上記契約に基づく賃料としての公金の支出も違法であると主張して,市の執行機関である上告人を相手に,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,上記契約に基づく賃料としての公金の支出の差止めを求めるとともに,同項4号に基づき,平成17年から同20年までの間にいなべ市長としてその支出命令をしたAに対して支払済みの賃料相当額計4000万円及びこれに対する遅延損害金の損害賠償請求をすることを求める住民訴訟の事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)市内にある大安町(平成15年12月に合併により市の一部となるまでは三重県員弁郡大安町。合併以前の同町を以下「旧大安町」という。)門前(上記合併以前は大字門前)には,明治22年の町村制施行以前から入会集団である門前区が存在していた。門前区は,同町門前に居住する住民によって構成される団体である門前自治会に10年以上会費を納めた者によって構成される。上告補助参加人は,同町門前所在の宗教法人であるが,その意思決定を担う氏子が門前区の構成員と同一であるため,門前区は,その所有する土地について,上告補助参加人を名義人として所有権に係る登記を経由している。
(2)本件土地及びその東側に隣接する土地上には,門前区が明治時代以前から管理してきた野入溜と称される上池,中池及び下池の三つのため池(以下「本件ため池」という。)があり,特徴ある陸生植物種が植生する湿地環境が存在するとともに,農業用水としても利用されてきた。旧大安町は,平成11年7月,本件土地(上池の全部及び中池の一部が所在する。)を含む本件ため池一帯の土地に係る所有権保存登記手続をした。
(3)株式会社B(以下「B」という。)は,昭和55年頃から本件土地の近傍で工場を稼働させていたが,平成9年頃,当時旧大安町長であったAに対して上記工場の拡張を申し入れノ日大安町は,C土地開発公社(以下「公社」という。)に対し,Bの工場用地拡張のための開発を目的として,大安二期工業団地造成事業(以下「本件開発事業」という。)の実施を依頼した。公社が策定した本件開発事業に係る土地利用計画においては,当初から,本件ため池の一部を埋め立てて工場用地とすることが予定されていた。
(4)旧大安町は,Bから上記申入れを受けた後,本件開発事業の計画区域内にある自治会との間で本件開発事業への協力を得るための交渉を開始した。門前自治会を除く自治会は協力金の支払を条件として本件開発事業に同意したが,門前自治会のみは本件開発事業に反対した上,上記区域内に点在し,門前区が上告補助参加人の名義で所有する約5.7haの土地(以下「本件門前区所有地」という。)の売却も拒否した。しかしながら,旧大安町はその後も門前自治会と交渉を続け,遅くとも平成10年12月頃までには,〔1〕旧大安町が門前区に対しその要求する約10haの本件土地を本件門前区所有地の代替地として提供し,うち約4.3haについては門前区が買い取ること,[2]旧大安町が門前区ないし門前自治会に対し本件土地の賃料として今後年1000万円を支払うこと,〔3〕水利補償や代替水源の確保を行うこと等を合意した。
公社と門前自治会とは,同月頃,公社が本件ため池の水利利用権の補償金から上記約4.3haの土地に係る売買代金相当額を控除した残額12億1206万2500円を門前自治会に支払う旨の補償契約を締結し,公社は,門前自治会に対し同額を支払った。また,公社と門前区とは,平成11年10月,本件門前区所有地と,本件土地のうちこれと同面積の部分とを交換し,本件開発事業の完了時にこれらの引渡しをする旨の交換契約を締結した。さらに,旧大安町は,門前自治会に対し,他の自治会に対すると同様の算定基準に基づく協力金を支払った。
(5)三重県知事は,平成11年6月11日,公社から提出されていた本件開発事業に関する環境影響評価準備書について,本件ため池には極めて重要な湿地環境が存在しているため,これを可能な限り残存させるよう検討する必要がある等の意見を述べた。なお,上記意見は,本件開発事業に係る開発許可の条件となるものではなかった。
Aは,同年9月,公社の理事長として,三重県知事との開で自然環境保全協定を締結し,本件開発事業の実施に当たって,自然の改変を最小限にとどめるとともに植生の回復その他適切な措置を講ずること,その措置として公園,緩衝緑地,造成森林及び残存緑地計18.3ha余りを確保すること等を約した。公社は,同年11月11日,同知事から本件開発事業に係る開発行為の許可を受けたが,本件土地は,本件開発事業に係る土地利用計画において,旧大安町が門前区から賃借することを前提に,全て残存緑地に含まれていた。
(6)公社は,平成12年9月に旧大安町から所有権移転登記手続を受けていた本件土地につき,同14年7月2日,上告補助参加人に対する所有権移転登記手続をし,市は,同16年4月1日,賃貸人を門前区(契約書上の名義人は上告補助参加人),賃借人を市として本件土地を借り受ける旨の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結した。本件賃貸借契約においては,〔1〕市は,本件土地を緑地帯として使用し,その環境保全に努めること,〔2〕本件賃貸借契約の存続期間は平成16年4月1日から6年間とするが,期間満了の日前1か月までに賃貸人から何らの申人れもないときは,当該期間満了の目の翌日から更に1年間当該契約を更新したものとみなすこと,〔3〕当該契約の存続期間中でも,賃貸人から解約の申出があった場合には,市は整地後速やかに解約に応ずるものとすること,〔4〕賃料は年額1000万円とし,当事者間の協議の上で3年ごとに経済状態に応じて変更することができるが,当初の額は下回らないものとすること,〔5〕本件土地は門前野入管理委員会(その実体は門前区ないし門前自治会)の管理によって維持すること等が約定された。
(7)市は,門前野入管理委員会に対し,本件土地の具体的な環境保全のための管理について指示はしておらず,調査等のための措置を講じていない。なお,公社は,3年に1回程度,本件開発事業による本件ため池の環境への影響について事後調査を行っている。
(8)Aは,平成17年から同20年までの毎年,市長として,本件賃貸借契約に基づく門前区に対する賃料としての1000万円の支出命令をし,市は,上記期間内に,これに基づいて門前区に対し計4000万円を支払った。
(9)上告人は,本件開発事業の結果,本件賃貸借契約に基づく賃料を大きく上回る税収増加が見込まれ,住民の雇用機会も増大したところ,本件土地を代替地として提供しない限り本件門前区所有地を取得して本件開発事業を実施することはできず,また,市が本件土地を本件開発事業に係る土地利用計画における残存緑地として管理する必要もあったから,本件賃貸借契約の締結には合澄吐がある旨を主張している。なお,記録によれば,本件開発事業によって,市の固定資産税収入は年約4500万円,法人住民税収入は年約5億円それぞれ増加したほか,約700人分の雇用が創出されたことがうかがわれる。
3 原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり判断して,本件賃貸借契約が私法上無効であり,これに基づく賃料の支払が違法であることを理由に,その賃料としての公金の支出の差止め及びAに対する損害賠償の請求を求める被上告人らの請求を認容すべきものとした。
本件開発事業を行うためには本件門前区所有地の買収が不可欠であったこと,本件賃貸借契約が門前区側の要求を受け入れる形で成立した合意を基礎としていること,市がその賃料に見合うだけの自然環境保護のための措置を講じている形跡が認められないことなどに照らせば,本件賃貸借契約は,自然保護を名目としてはいるものの,真実は本件門前区所有地の買収に応じてもらうことにより本件開発事業を実施することのみを目的に締結されたものと解される。門前区ないし門前自治会は,本件ため池の水利権に対する補償金及び本件開発事業に対する協力金の支払を受け,新たな水源の確保も約束された上,本件門前区所有地の買収についても有利な条件で契約に至ることができたのであるから,これに加えて市が本件賃貸借契約の存続する限り賃料を支払い続けることは門前区ないし門前自治会を不当に優遇するものであるのみならず,今後の経済変動の状況によっては本件開発事業による税収入や雇用の確保も確実であるとはいえない。これらの事情を総合考慮すると,本件賃貸借契約を締結した市の判断には裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり,本件賃貸借契約は私法上無効である。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)本件において,仮に本件賃貸借契約を締結した市の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があり,かつ,これを無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められるという場合には,本件賃貸借契約は私法上無効になり,上告人は,これに基づく賃料としての公金の支出をしてはならないという財務会計法規上の義務を負うことになるものというべきである(最高裁平成17年(行ヒ)第304号同20年1月18日第二小法廷判決・民集62巻1号1頁参照)。そして,上告人は,本件賃貸借契約の締結は本件開発事業の実施や本件土地の環境保全のために必要不可欠であったとの趣旨をいうところ,本件開発事業によって得られる税収入や雇用の増加といったいわゆる開発利益を実現したり,本件開発事業によって影響を受ける自然環境を保全したりするためにどの程度の公費を支出するか,これらの相対立する利益をいかに調整するかといった事柄に関する判断に当たっては,住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う地方公共団体(地方自治法1条の2第1項)である市に,政策的ないし技術的な見地からの裁量が認められるものというべきである。したがって,本件賃貸借契約を締結した市の判断については,それがこれらの見地から上記のような事柄に係る諸般の事情を総合的に勘案した裁量権の行使として合理性を有するか否かを検討するのが相当である。
(2)前記事実関係等によれば,旧大安町が本件開発事業の実施を確保するために本件門前区所有地を任意に取得しようとしたところ,当初これに反対し売却を拒否していた門前区は,その後の交渉の結果,代替地として本件土地を要求したものであり,旧大安町がその要求に応じなければ本件開発事業は実施することができない状況にあったものといえるし,旧大安町が上記要求に応じ,門前区が本件土地を取得するに至った経緯に照らし,門前区による本件土地の取得に何らかの無効原因が存在したことをうかがわせる事情もない。また,これにより実施が可能となった本件開発事業によって,現に相当程度の税収入の増加と雇用の創出が図られたというのである。
そして,前記事実関係等によれば,本件土地は,本件開発事業に係る土地利用計画において残存緑地として組み込まれていたのであり,公社の理事長としてのAが三重県知事との間の自然環境保全協定に基づき本件開発事業の区域内において本件上地を含む緑地を確保すべき責務を負っていたことをも併せ考慮すれば,本件土地の現状を残存緑地として維持し保全することは,本件開発事業の円滑な継続のために必要であるとともに,本件土地上に存在する特徴ある陸生植物種が植生する湿地環境の保全にも資するものということができる。そうすると,上記のとおり本件土地を代替地として門前区に提供せざるを得なかった以上,同区の所有に帰した本件土地の現状をできる限り維持し保全するために本件賃貸借契約を締結しその賃料として公費を支出することには,一定の公益性が認められるというべきである。もっとも,本件賃貸借契約は,存続期間を6年間とし,賃借人である市の側から更新をすることができず,存続期間中であっても賃貸人から解約の申出ができる内容となっており,本件上地の現状を長期にわたり残存緑地として保全する方策としては万全なものとはいい難い点があり,また,賃料の減額も制限されるなど,かなり門前区に有利なものであった。しかしながら,本件賃貸借契約の締結に際して市がこれらの約定に応じたのは,賃借人の側からの更新の約定を設けることに応じない門前区が自ら契約を更新する動機付けとなるに足りる金額の賃料を支払うことによって事実上その永続的な更新を確保する趣旨によるものと解され,本件土地の現状の維持及び保全という観点からは現実的でやむを得ないものであって,次善の策ともいえ,当該契約の目的に照らして不合理であるとはいえない。さらに,その賃料が特に高額であるといった事情があるともいえない。このほか,門前区が本件ため池の管理を明治時代以前から行ってきた経緯に加え,公社が本件開発事業による本件ため池の環境への影響について継続的に事後調査を行っていることをも併せ考慮すると,本件賃貸借契約において本件ため池の管理が門前区ないし門前自治会に委ねられている点も特に不自然であるとまではいえない。
以上によれば,本件土地の現状を残存緑地として維持し保全するために門前区との間で本件賃貸借契約を締結した市の判断には,本目応の合理性があるというべきであり,裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があるということはできず,本件賃貸借契約が私法上無効になるものとはいえない。
(3)そして,前記事実関係等に照らせば,門前区ないし門前自治会が本件門前区所有地の存在を奇貨として旧大安町ないし市に対し権利の濫用に当たるような著しく不当な要求をしたなどの事情があるとはいえず,他に,本件賃貸借契約が違法に締結されたものであるとか,それが著しく合理性を欠くためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するなどといった,本件賃貸借契約に基づく賃料としての公金の支出が違法なものになることをうかがわせる事情(前記第二小法廷判決参照)も存しない。
(4)したがって,本件賃貸借契約に基づく市の義務の履行として,Aが門前区に対する約定の賃料としての公金の支出命令をしたこと及び上告人が門前区に対する上記賃料としての公金の支出をすることに,財務会計法規上の義務に違反する違法な点はないものというべきである。
5 以上と異なる見解に基づき,前記事実関係等の下において,被上告人らの請求を認容すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,被上告人らの請求は理由がないから,第1審判決を取消し,被上告人らの請求を棄却すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 竹内行夫 裁判官 古田佑紀 裁判官 須藤正彦 裁判官 千葉勝美)
*****乙第8号証*****
20160315r8.pdf
《全文》
【文献番号】25445468
損害賠償等請求住民訴訟事件
最高裁判所第一小法廷平成23年(行ヒ)第452号
平成25年3月28日判決
主 文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人西滓博ほかの上告受理申立て理由第2について
1 本件は,三重県の志摩市等により組織される鳥羽志勢広域連合(以下「本件広域連合」という。)が締結したし尿及び浄化槽汚泥の積替え保管場所等の賃貸借契約について,志摩市の住民である被上告人が,上記契約に定められた賃料は不当に高額でありその賃料の支出のうち適正額を超える部分は違法であると主張して,本件広域連合の執行機関である上告人を相手に,地方自治法292条により準用される同法242条の2第1項1号に基づき,上記賃料のうち本件広域連合の監査委員が適正額として勧告した額を超える部分に係る公金の支出の差止めを求めるとともに,同項4号に基づき,平成19年2月から同23年6月までの間に本件広域連合の長の職にあった者2名に対して各在任期間中の上記賃料に係る公金の支出額のうち被上告人が主張する適正額を超える部分に相当する金額及び遅延損害金の損害賠償請求をすること等を求める住民訴訟である。
2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)本件広域連合は,し尿処理等の広域的処理を行うこと等を目的として平成11年4月1日に三重県の鳥羽市,当時の志摩郡磯部町,阿児町,浜島町,大王町及び志摩町(平成16年10月1日以降は合併により志摩市)並びに当時の度会郡南勢町及び南島町(平成17年10月1日以降は合併により南伊勢町)により組織され,上記各合併を経て現在は志摩市,鳥羽市及び南伊勢町により組織される特別地方公共団体である。上記合併前の志摩郡においては,各家庭からし尿等の積替え保管施設であるし尿中継槽までの運搬距離を平準化し各町のし尿くみ取り料金に格差が出ないようにするなどのため,各町にそれぞれ1か所ずつし尿中継槽が設けられており,業者が各家庭からくみ取ったし尿をし尿中継槽まで運搬し,本件広域連合がし尿中継槽からし尿処理施設までの運搬を行っていた。このうち,志摩町のし尿中継槽(以下「旧し尿中継槽」という。)は,容量が20k1のものであった。
(2)本件広域連合は,平成12年頃,旧し尿中継槽の近隣住民から臭気に対する苦情を多数受けるようになったが,脱臭装置の設置等による対策のみで解決する見込みが低く,かつ,当時の住民規模に照らして旧し尿中継槽の増改築が必要であるにもかかわらずその敷地が狭小で増改築が困難であったことなどから,旧し尿中継槽を閉鎖して別の敷地にし尿中継槽を建設することを検討するようになった。また,本件広域連合においては,志摩町内に新たなし尿中継槽を建設する必要があるとされていたが,その理由はノ
中継槽を建設しなければならず,建設中であるし尿処理施設の処理能力との関係で,し尿等の海洋投棄が全面禁止される平成19年1月までに新たなし尿中継槽を完成させる必要があるとの認識によるものである。
(3)さらに,本件広域連合は,平成15年7月,旧し尿中継槽の周辺住民から強い苦情と旧し尿中継槽の閉鎖を求める要望を受けた。そのため,当時,志摩町の町長で本件広域連合の副連合長を務めていたBは,旧し尿中継槽を利用していたくみ取り業者であるA協業組合(以下「A協業組合」という。)に対し,旧し尿中継槽の閉鎖について理解を求め,当分の間は大王町のし尿中継槽を代替使用することを提案するとともに,志摩町内に建設する新たなし尿中継槽の用地の確保についても相談をした。これに対し,A協業組合は,旧し尿中継槽の閉鎖後新たなし尿中継槽が完成するまでA協業組合が志摩町内に有する貯留槽(以下「本件貯留槽」という。)を本件広域連合に無償で貸すことを提案するとともに,新たなし尿中継槽の用地としてA協業組合所有の土地を貸すことを提案した。本件広域連合は,これを受けて,同月22日に旧し尿中継槽を閉鎖し,本件貯留槽の代替使用を開始した。なお,本件貯留槽の代替使用については,平成17年3月10日,本件広域連合とA協業組合との間で賃貸借契約が締結され,契約期間は本件広域連合が借用を開始した日から新たなし尿中継槽が完成する日まで,賃料はその全期間を通じて50万円とされた。
(4)新たなし尿中継槽の用地に関するA協業組合の提案を受けて,本件広域連合においては,平成15年10月頃から第1審判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)の一部を賃借することについて検討を開始し,本件広域連合の議会の定例会で担当課長から本件土地の一部を賃借して200t規模のし尿中継槽を設置することを考えていることなどが説明された。本件土地は,国道260号線志摩バイパスと約4mの間口で接し,そこから約110mにわたって延びる通路部分と,その奥のおおむね楕円状の部分とから成る,総面積(実測)3531.7平方メートルの旗竿状の土地である。
本件広域連合は,平成16年6月頃から,本件土地又はその一部を賃借することを前提にA協業組合と協議をし,賃料について鑑定による価格を基準とすること等を要望した。これに対し,A協業組合は,し尿中継槽を建設すると土地価格が低下すること,その建設により本件土地及びその周辺の土地について検討していた高齢者施設等の建設その他の計画が実現できなくなることなどを理由に賃料について鑑定価格を基準にすることに反対し,月額140万円にするよう要求した。これを受けて,本件広域連合が,内部での検討等を踏まえ,同年9月21日の協議の場で,A協業組合に賃料の減額を要求すると,A協業組合は,最低でも月額70万円が必要であるとしたものの,更なる交渉の結果,本件土地のうち通路部分を除いた部分を月額50万円で賃貸することを了承した。
本件広域連合は,平成16年10月,合併後の志摩市の市長職務執行者を通じて,A協業組合に吏なる賃料の減額を要望したが,A協業組合は,月額50万円に満たない賃料では本件土地を貸さない旨を回答して,減額に応じなかった。その後,本件広域連合は,本件土地全てを月額50万円で賃借することとして,平成17年2月21日の議会において,借地料年額600万円を計上した平成18年度予算が承認され
た。
(5)本件広域連合は,平成17年8月18日,A協業組合との間で,本件土地を要旨次の約定で賃借するとの合意をした(以下,この合意を「木件賃貸借契約」という。)。
用途 関係町から生ずるし尿及び浄化槽汚泥の積替え保管場所(中継槽用地)並びに
進入路
期間 協議して別に定める時から平成21年3月31日まで。ただし,この期間満了の3か月前までに本件広域連合又はA協業組合のいずれからも異議の申出がないときは,期間満了の日の翌日から1年間延長するものとし,その後において期間が満了したときも同様とする。
賃料 年額600万円(月額50万円)
本件広域連合は,平成17年12月1日,A協業組合との間で,本件賃貸借契約における契約期間の始期を同日とする旨合意し,同月分から賃料の支払を開始するとともに同18年3月頃までに本件土地上に新たなし尿中継槽を完成させた。
(6)被上告人は,平成20年1月24日付けで,本件広域連合の監査委員に対し,本件賃貸借契約に定められた賃料を減額し,既に支払われた適正額を超える賃料を返還するよう必要な措置を講ずることを求める旨の住民監査請求をした。同監査委員は,同年3月19日,本件広域連合の長の裁量を考慮しても本件土地の年間賃料は258万8736円を上回るものではなく本件賃貸借契約に定められた賃料は不当に高額であるとして,上告人に対し必要な措置を講ずべきことを勧告したが,上告人は,同監査委員に対し,この勧告に従わない旨を通知した。
(7)本件広域連合は,平成22年11月22日,A協業組合との間で,本件賃貸借契約に基づく本件上地の賃料につき,同23年1月1日から同年12月31日までを年額500万円(同年1月分から11月分までは月額41万7000円,同年12月分は41万3000円)とし,同24年1月1日から同年12月31日までを年額400万円(同年1月分から11月分までは月額33万4000円,同年12月分は月額32万6000円)と変更する旨の契約(以下「本件変更契約」という。)を締結した。
(8)本件広域連合は,本件賃貸借契約(本件変更契約の締結後はこれに基づく変更後のもの)に基づき,その長がCであった平成19年2月から同20年10月30日までの間,同19年1月分から同20年9月分までの賃料月額50万円の各支出をした。また,本件広域連合は,その長がBに代わった後,平成20年11月から同23年1月までの間,同20年10月分から同22年12月分までの賃料月額50万円,同23年2月から同年6月までの間,同年1月分から同年5月分までの賃料月額41万7000円の各支出をした。
(9)被上告人が原審で証拠として提出した不動産鑑定土梅村斉ほか1名作成の鑑定評価書は,本件土地付近に設定した標準画地の価格から,本件土地の形状,面積,接道状況等を考慮して本件土地の基礎価格を求め,これに期待利回りを乗じて,本件賃貸借契約が締結された平成17年8月18日の時点における本件土地の適正賃料を年額81万7000円としている(以下,この鑑定評価を「本件私的鑑定」という。)。
3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断して,地方自治法242条の2第1項4号に基づく被上告人の請求のうち年額100万円を超える賃料支出額に係る部分及び同項1号に基づく被上告人の請求を認容した。
(1)本件賃貸借契約及び本件変更契約(以下併せて「本件各契約」という。)に係る違法事由の有無は賃料額の多寡によって判断されるべきであり,代替施設の有無等はその判断に際しての事情として検討することになる。本件賃貸借契約に定める賃料額は,本件土地の適正賃料である本件私的鑑定の前記評価額の7倍を超える極めて高額なものである。そして,大王町の中継槽の一時的な代替利用も不可能ではないから,新たなし尿中継槽を平成19年1月末までに設置すべき緊急性までは認められず,また,本件広域連合は,他の候補地を探すことなく,A協業組合から高額な賃料を要求されると,単に減額を求める交渉に終始し,鑑定評価を実施しないまま本件賃貸借契約の締結に応じている。本件各契約に定める賃料額を決定しその支出をした本件広域連合の長は,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものというべきであり,本件各契約に基づく賃料の支出は,適正と認め得る賃料額の上限である年額100万円を超える部分に関して財務会計法規上の義務に違反する違法な行為と評価すべきである。
(2)本件土地につき前記の賃料で借り受ける旨を決定した本件広域連合の長の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があり,本件各契約に定める賃料のうち上記の上限を超える部分を無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められるというべきである上,A協業組合においては,法外に高額な賃料を要求し,前記の経緯を経て本件賃貸借契約の締結に至らせていたのであって,本件各契約の賃料の約定は上記の上限を超える限度で公序良俗に反し,私法上無効である。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)地方自治法242条の2第1項4号に基づく被上告人の請求は,本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断が同法2条14項及び地方財政法4条1項に違反することを前提とするものであるところ,地方公共団体の長がその代表者として一定の額の賃料を支払うことを約して不動産を賃借する契約を締結すること及びその賃料の額を変更する契約を締結することは,当該不動産を賃借する目的やその必要性,契約の締結に至る経緯,契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮した合理的な裁量に委ねられており,当該契約に定められた賃料の額が鑑定評価等において適正とされた賃料の額を超える場合であっても,上記のような諸般の事情を総合考慮した上でなお,地方公共団体の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるときでなければ,当該契約に定められた賃料の額をもって直ちに当該契約の締結が地方自治法2条14項等に反し違法となるものではないと解するのが相当である。
前記事実関係等によれば,旧志摩郡においては,各家庭から生ずるし尿の運搬距離を平準化し各町におけるし尿くみ取り料金に格差が出ないようにするなどのため,各町にし尿中継槽が設けられていたのであり,各町の合併後間もない本件賃貸借契約締結当時においても同様に,本件広域連合が旧志摩町の区域内にし尿中継槽を設置する必要性があったということができる。そして,木件広域連合としては,本件貯留槽は新たなし尿中継槽が完成するまでの期間に限定して借りたものであり,また,旧大王町の区域内のし尿中継槽において同区域内から生ずるし尿等に加えて旧志摩町の区域内で生ずるし尿等の積替え及び保管を継続的に行うことは困難であったと考えられるから,旧し尿中継槽が閉鎖されてから2年以上経過した本件賃貸借契約締結当時において,速やかに新たなし尿中継槽の用地を確保する必要性があったというべきである。
そして,そもそも旧志摩町の区域内の旧し尿中継槽は周辺住民からの強い苦情を受けて廃止されたものであり,同区域内で新たなし尿中継槽の用地を確保することは相当困難であったと考えられるところ,他に具体的な候補地の存在もうかがわれない中で,本件広域連合がA協業組合から反対されて鑑定評価はしなかったものの前記2(4)の相応の交渉を経て本件賃貸借契約を締結するに至った経緯それ自体が不当なものであったとはいえず,また,本件私的鑑定において適正とされた賃料の額は,上記のようなし尿中継槽の用地を確保するという本件土地を賃借する目的やその必要性等の事情を考慮して算出されたものでないことは明らかである。
そうすると,旧志摩町の区域内にし尿中継槽の用地を確保するという本件土地を賃借する目的やその必要性,契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因としての当該施設の性質に伴う用地確保の緊急性や困難性といった事情の有無にかかわらず,本件賃貸借契約において鑑定評価を経ずに定められた賃料の額及びこれを一部減額した本件変更契約所定の賃料の額が本件私的鑑定において適正とされた賃料の額と比較して高額であることをもって直ちに,本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断がその裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであったということはできない。
(2)次に,契約に基づく債務の履行として行われる公金の支出について地方自治法242条の2第1項1号に基づく差止めを請求することができるのは,当該契約が私法上無効である場合に限られるところ(最高裁昭和56年(行ツ)第144号同62年5月19日第三小法廷判決・民集41巻4号687頁参照),旧志摩町の区域内で新たにし尿中継槽の用地を確保するために本件土地を賃借する必要性,当該施設の性質に伴う用地確保の緊急性や困難性といった上記の諸事情に加え,本件賃貸借契約に定められた賃料の額が当事者間で相応の交渉を経た上で合意されたものであり,本件広域連合の議会においてその予算が承認されていたことなどからすると,本件私的鑑定において賃借の目的等を考慮することなく適正とされた賃料の額と単純に比較して,本件各契約の賃料の約定が公序良俗に反するものとはいえず,また,本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があり,本件各契約を無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる(最高裁平成17年(行ヒ)第304号同20年1月18日第二小法廷判決・民集62巻1号1頁参照)と直ちにいうこともできないことは明らかである。
5 以上によれば,前記2の事実関係等から直ちに,本件各契約が違法に締結されたものでありその賃料の約定が私法上無効であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づく被上告人の請求の一部及び同項1号に基づく被上告人の請求を認容した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。
そして,被上告人の上記各請求については,旧志摩町の区域内にし尿中継槽の用地を確保するために本件上地を賃借する必要性,当該施設の性質に伴う用地確保の緊急性や困難性といった事情を総合考慮した上でなお,本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法となるか否か,また,本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があり,本件各契約を無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められるものとして本件各契約が私法上無効であるといえるか否かについて審理を尽くす必要がある。なお,仮に本件各契約が違法に締結されたものとみる余地があるとすれば,地方自治法242条の2第1項4号に基づく被上告人の請求については,その対象とされている各月の支出に係るC及びBの財務会計上の行為を明らかにした上で,本件各契約に基づく債務の履行として行われた各月の財務会計上の行為それ自体が当該職員の財務会計法規上の義務に違反する違法なものといえるか否か(最高裁昭和61年(行ツ)第133号平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁,前記第二小法廷判決,最高裁平成21年(行ヒ)第162号同年12月17日第一小法廷判決・裁判集民事232号707頁参照)等についても審理する必要がある。そこで,以上の各点について審理を尽くさせるため,上記破棄部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田尤孝 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 白木勇 裁判官 山浦善樹)
*****乙第9号証*****
20160315r9.pdf
土地改良事業計画設計基準
設 計「農 道」
基 準 書
技 術 書
平成17年3月
農林水産省農村振興局整備部設計課監修
社団法人農業土木学会発行
<P307>
第6章 路床及び舗装の設計
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/01/6cf270c0ef544f5beba20dd594945106.jpg)
↑図-6.5.4 軟弱土における安定処理厚別合成CBR↑
6.5.5 軟弱路床に対する改良工法
(1)良質土による盛土工法
地下水位が高く、路床土が軟弱な場合には、CBRが3以上の材料を約1m盛上げて新しい路床を造り、その上に舗装を設けるのがー般的である。ただし、ほ場内農道等において、高盛土が農耕に支障をきたすおそれのある場合等で、CBRが3以上になるような材料で盛土高を設計した場合は、その盛土高さを減ずることができる。
このような盛土工法の場合、盛土下部20cmの部分は在来路床土のCBRをとって設計する。
施工は、次の点を注意して行う。
①地下水位が高い場合や、湧水のあるときは、水位を下げるとともに排水処理する必要がある。
②盛上材料は、水浸による支持力の変化が生じ難い良質なものを選定する。
③搬入した盛土材料は、入口部からブルドーザ等で、一層の仕上り厚さが20cm程度になるように軟弱な路床面へまき出す。軟弱な路床土が盛土材料の表面に上ってきたり、また運搬車や施工機械のトラフィカビリティが確保できない場合には、別途、排水処理を検討する。
軟弱な路床土で、盛土材料が路床に侵入するのを防止し、また盛土荷重を均等に路床に伝えるために、フレキシブルなネットやシートを敷ならし、その上に盛土する方法、盛土材料として発
泡スチロールのような軽量盛土材料を使用する方法もある。
<P308>
(2)置換工法
置換工法は、切土部分で軟弱な路床土が現れた場合に、路床土に当たる部分を約lm掘削して、CBRが3以上の良質土で置換える工法である。なお置換工法においても「(1)良質土による盛土工法」と同様に、設計CBRが3以上になるような材料で設計した場合はその置換厚さを減ずることができる。この楊合の下部20cmのCBRの取扱いは盛土工法と同様とする。
施工は、次の点に留意して行う。
① 軟弱な路床土を所定の深さに掘削し、掘削面以下の層を乱さないように行う。
② 置換部分の締固めが不十分だと、将来沈下が生じ、舗装の早期破損の原因となるので、入念に締固める。
③ 路床の土質条件等によって締固めが十分にできない場合には、上層路盤か基層上で一時的に交通開放を行い、沈下を待った後、舗装を完成する方法もある。
(3)安定処理工法
安定処理工法は、軟弱な路床土の表面に、セメント、石灰等の安定材を散布し、路床土と安定材とを混合し、路床土の支持力の改善を図る工法で、設計CBRが3以上になるように設計する。
混合の方式には、湿地ブルドーザに混合・撹枠可能なアタッチメントを装着したものや、軟弱土専用のスタビライザ、ミキシングホーク等の施工機械による混合がある。
この場合、安定処理した層のうち下から厚さ20cmに当たる部分は、安定処理した層のCBRと在来路床土の試料によるCBRの平均値をとって設計する。
安定材の選定は、一般に砂質土に対してはセメント、粘性土に対しては石灰が効果がある。石灰には消石灰と生石灰の2種類があり、路床土が高含水比の場合は生石灰の方が効果が大きい。
その他の工法として、エコセメントによる地盤改良工法がある。エコセメントは、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥等を原料として製造されるセメントで、固化材(地盤改良材)として利用され、製造技術の確立と利用技術の開発が進められている。
(4)サンドイッチ工法
サンドイッチ工法は軟弱な路床上に砂層を置き、その上に貧配合コンクリート又はセメント安定処理の拘束層を設け、この上に交通量に応じた舗装を行う工法であるが、設計CBRや等値換算厚TAを用いた設計方法が適用できないので、過去の実施例や弾性計算等の方法を参考にして断面を決定する。
この工法の利点としては、次のようなことが考えられる。
① 舗装の下部に剛性の高い拘束層を置くことによって支持力が高められ、舗装の総厚を減少させることができる。
②拘束層の上部に置かれる材料の転圧効果を増す。
③ 軟弱な路床土の路盤への侵入が完全に防止できる。
④ 路床土及び路盤のひずみが小さくなり、したがって耐久性が増す。
施工は、次の点に注意して行う。
② 砂層は15cm程度敷ならし、軽く転圧して、表面を平らにならす。
② 砂層の上に貧配合コンクリート又はセメント安定処理材料を15~20cmの厚さに敷ならす。貧配合コンクリートのセメント量は220kg/m3程度とする。セメント安定処理は一軸圧縮強さ2.9~4.9MPaを目標にセメント量を決定すればよい。
<P309>
③ 貧配合コンクリート又はセメント安定処理層の上に、下層路盤材料、上層路盤材料の順で敷ならし、それぞれ十分に転圧して締固める。
(5)ステージコンストラクション
交通上やむを得ない揚合を除き、一度に表層まで完成させず、まず路盤まで施工し、その後状況を判断して段階的に完成させていく方法である。
ステージコンストラクションとは段階的施工法であり、その方法は舗装構造により若干その考え方を異にするが、一般的に農道舗装の設計においては次のような方法が採用されている。
① 農道舗装は、それぞれの路線で設計期間を設定してその舗装厚を設計するが、第一段階では上層路盤までを施工(歴青安定処理を行ったもの)し、その後一定期間内に第二段階として表層のアスファルト舗装を行う方法(図-6.5.5参照)。
② 水田地帯等の軟弱な路床に設置される農道は、盛土工法や置換工法等で路床改良を行って 舗装をする。この場合、第一段階で下層路盤までを砕石材料等で施工し路面整形を行い、工事用車両等の限定された範囲での交通開放を行って圧密沈下等の促進を図り、その後これらの状況を判断して順次段階的に施工していく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/19/890acf6c5b410b04d6403d27bb5e8189.jpg)
↑図-6.5.5ステージコンストラクションの施工例↑
これらの方法は路床及び路盤状況が複雑で、その明確な把握が困難な場合や、軟弱路盤のように経年変化等に伴いその性状が変化するものに対して、一定の期問の交通開放を行い、その状態によって目的とする舗装構造を決定し、段階的に施工していくものであり、経費面から、また舗装構造の安全設計という面からも期間的な制約が許されるならば有利になることが多い。
6.5.6 路床が岩盤の場合
アスファルト舗装の揚合、・剛構造の路床にすると、たわみ性の減少等によってクラックが発生するため緩衝材を使用する。また、コンクリート舗装の場合には、支持力を均一なものにすることが重要であり、路床が岩盤の場合の取扱いは次の区分による。
① 局部的(延長おおむね50m未満)な個所は前後の路盤厚と同一とする。
② 寒冷地でけつ岩、風化岩等、凍上のおそれがあるものは岩盤として取扱わない。
<P310>
③ 岩盤が連続する場合(延長おおむね50m以上)の取扱いは次のとおりとする。
アスファルト舗装の場合:CBRが20以上として設計する。
コンクリート舗装の場合:支持力の均―性からならしコンクリートを施し、その最小厚は5cmとする。
注)ならしコンクリートには目地を設けず、表面に石粉等を塗布するものとする。
④ 岩砕による盛土の場合(延長おおむね50m以上)のCBRは通常20以上とする。ただし、風化及び吸水の激しいものについては、別途設計するものとする。
なお、一般的には、路盤の計画高まで盤下げを行うものとするが、盤下げを行わずにすりつけ等が可能な場合には、現場条件、経済性等を検討して決定するものとする。
**********
■以上のとおり、まだスラグを敷砂利として使っていたことを反省もせず、あくまでもステージコンストラクションだったと、未練がましく、これまでの主張を繰り返しています。
もっとも、スラグに思考力さえ汚染されてしまった群馬県行政は、いくら言い訳は苦しくとも、これしか主張する術がないのも事実なのですから、どうやら最後まで、ステージコンストラクションを言い続けるつもりのようです。
■しかし行政訴訟を提起するたびに、いつも首をかしざるをえません。住民側はすべて手弁当で時間と労力をかけて裁判資料を作成し提出しますが、行政側は、我々の税金で顧問弁護士を使って、公務の時間を費やして裁判資料を作成し、裁判所にも公務として赴くのです。
本来であれば、有害な危険スラグを排出責任者である大同特殊鋼に撤去させれば、このような訴訟の手間を掛けずに済んだのですが、官業癒着のなせるわざなのか、行政の無責任体質なのか、いつも住民にしわ寄せがくるのです。
なお、この被告の第3準備書面に対する反論等をまとめて、4月15日までに前橋地裁に、原告準備(6)として提出することになります。そして4月22日(金)午前10時30分から、前橋地裁2階の201号法廷で第4回口頭弁論が開かれる予定です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの連絡・この項終わり】
*****乙第7号証*****
20160315r7.pdf
《全文》
【文献番号】25443998
賃借料返還等請求住民訴訟事件
最高裁判所第二小法廷平成22年(行ヒ)第175号
平成23年12月2日判決
主 文
原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
被上告人らの請求をいずれも棄却する。
訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。
理 由
上告代理人倉田巌圓の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1 本件は,三重県いなべ市(以下「市」という。)の住民である被上告人らが,第1審判決別紙物件目録記載の各土地(以下「本件土地」と総称する。)の賃借人として市が締結した賃貸借契約は,工場用地の開発に協力した住民に対して賃料の名目で協力金を支払うことを目的とするものであって違法,無効であるから,上記契約に基づく賃料としての公金の支出も違法であると主張して,市の執行機関である上告人を相手に,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,上記契約に基づく賃料としての公金の支出の差止めを求めるとともに,同項4号に基づき,平成17年から同20年までの間にいなべ市長としてその支出命令をしたAに対して支払済みの賃料相当額計4000万円及びこれに対する遅延損害金の損害賠償請求をすることを求める住民訴訟の事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)市内にある大安町(平成15年12月に合併により市の一部となるまでは三重県員弁郡大安町。合併以前の同町を以下「旧大安町」という。)門前(上記合併以前は大字門前)には,明治22年の町村制施行以前から入会集団である門前区が存在していた。門前区は,同町門前に居住する住民によって構成される団体である門前自治会に10年以上会費を納めた者によって構成される。上告補助参加人は,同町門前所在の宗教法人であるが,その意思決定を担う氏子が門前区の構成員と同一であるため,門前区は,その所有する土地について,上告補助参加人を名義人として所有権に係る登記を経由している。
(2)本件土地及びその東側に隣接する土地上には,門前区が明治時代以前から管理してきた野入溜と称される上池,中池及び下池の三つのため池(以下「本件ため池」という。)があり,特徴ある陸生植物種が植生する湿地環境が存在するとともに,農業用水としても利用されてきた。旧大安町は,平成11年7月,本件土地(上池の全部及び中池の一部が所在する。)を含む本件ため池一帯の土地に係る所有権保存登記手続をした。
(3)株式会社B(以下「B」という。)は,昭和55年頃から本件土地の近傍で工場を稼働させていたが,平成9年頃,当時旧大安町長であったAに対して上記工場の拡張を申し入れノ日大安町は,C土地開発公社(以下「公社」という。)に対し,Bの工場用地拡張のための開発を目的として,大安二期工業団地造成事業(以下「本件開発事業」という。)の実施を依頼した。公社が策定した本件開発事業に係る土地利用計画においては,当初から,本件ため池の一部を埋め立てて工場用地とすることが予定されていた。
(4)旧大安町は,Bから上記申入れを受けた後,本件開発事業の計画区域内にある自治会との間で本件開発事業への協力を得るための交渉を開始した。門前自治会を除く自治会は協力金の支払を条件として本件開発事業に同意したが,門前自治会のみは本件開発事業に反対した上,上記区域内に点在し,門前区が上告補助参加人の名義で所有する約5.7haの土地(以下「本件門前区所有地」という。)の売却も拒否した。しかしながら,旧大安町はその後も門前自治会と交渉を続け,遅くとも平成10年12月頃までには,〔1〕旧大安町が門前区に対しその要求する約10haの本件土地を本件門前区所有地の代替地として提供し,うち約4.3haについては門前区が買い取ること,[2]旧大安町が門前区ないし門前自治会に対し本件土地の賃料として今後年1000万円を支払うこと,〔3〕水利補償や代替水源の確保を行うこと等を合意した。
公社と門前自治会とは,同月頃,公社が本件ため池の水利利用権の補償金から上記約4.3haの土地に係る売買代金相当額を控除した残額12億1206万2500円を門前自治会に支払う旨の補償契約を締結し,公社は,門前自治会に対し同額を支払った。また,公社と門前区とは,平成11年10月,本件門前区所有地と,本件土地のうちこれと同面積の部分とを交換し,本件開発事業の完了時にこれらの引渡しをする旨の交換契約を締結した。さらに,旧大安町は,門前自治会に対し,他の自治会に対すると同様の算定基準に基づく協力金を支払った。
(5)三重県知事は,平成11年6月11日,公社から提出されていた本件開発事業に関する環境影響評価準備書について,本件ため池には極めて重要な湿地環境が存在しているため,これを可能な限り残存させるよう検討する必要がある等の意見を述べた。なお,上記意見は,本件開発事業に係る開発許可の条件となるものではなかった。
Aは,同年9月,公社の理事長として,三重県知事との開で自然環境保全協定を締結し,本件開発事業の実施に当たって,自然の改変を最小限にとどめるとともに植生の回復その他適切な措置を講ずること,その措置として公園,緩衝緑地,造成森林及び残存緑地計18.3ha余りを確保すること等を約した。公社は,同年11月11日,同知事から本件開発事業に係る開発行為の許可を受けたが,本件土地は,本件開発事業に係る土地利用計画において,旧大安町が門前区から賃借することを前提に,全て残存緑地に含まれていた。
(6)公社は,平成12年9月に旧大安町から所有権移転登記手続を受けていた本件土地につき,同14年7月2日,上告補助参加人に対する所有権移転登記手続をし,市は,同16年4月1日,賃貸人を門前区(契約書上の名義人は上告補助参加人),賃借人を市として本件土地を借り受ける旨の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結した。本件賃貸借契約においては,〔1〕市は,本件土地を緑地帯として使用し,その環境保全に努めること,〔2〕本件賃貸借契約の存続期間は平成16年4月1日から6年間とするが,期間満了の日前1か月までに賃貸人から何らの申人れもないときは,当該期間満了の目の翌日から更に1年間当該契約を更新したものとみなすこと,〔3〕当該契約の存続期間中でも,賃貸人から解約の申出があった場合には,市は整地後速やかに解約に応ずるものとすること,〔4〕賃料は年額1000万円とし,当事者間の協議の上で3年ごとに経済状態に応じて変更することができるが,当初の額は下回らないものとすること,〔5〕本件土地は門前野入管理委員会(その実体は門前区ないし門前自治会)の管理によって維持すること等が約定された。
(7)市は,門前野入管理委員会に対し,本件土地の具体的な環境保全のための管理について指示はしておらず,調査等のための措置を講じていない。なお,公社は,3年に1回程度,本件開発事業による本件ため池の環境への影響について事後調査を行っている。
(8)Aは,平成17年から同20年までの毎年,市長として,本件賃貸借契約に基づく門前区に対する賃料としての1000万円の支出命令をし,市は,上記期間内に,これに基づいて門前区に対し計4000万円を支払った。
(9)上告人は,本件開発事業の結果,本件賃貸借契約に基づく賃料を大きく上回る税収増加が見込まれ,住民の雇用機会も増大したところ,本件土地を代替地として提供しない限り本件門前区所有地を取得して本件開発事業を実施することはできず,また,市が本件土地を本件開発事業に係る土地利用計画における残存緑地として管理する必要もあったから,本件賃貸借契約の締結には合澄吐がある旨を主張している。なお,記録によれば,本件開発事業によって,市の固定資産税収入は年約4500万円,法人住民税収入は年約5億円それぞれ増加したほか,約700人分の雇用が創出されたことがうかがわれる。
3 原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり判断して,本件賃貸借契約が私法上無効であり,これに基づく賃料の支払が違法であることを理由に,その賃料としての公金の支出の差止め及びAに対する損害賠償の請求を求める被上告人らの請求を認容すべきものとした。
本件開発事業を行うためには本件門前区所有地の買収が不可欠であったこと,本件賃貸借契約が門前区側の要求を受け入れる形で成立した合意を基礎としていること,市がその賃料に見合うだけの自然環境保護のための措置を講じている形跡が認められないことなどに照らせば,本件賃貸借契約は,自然保護を名目としてはいるものの,真実は本件門前区所有地の買収に応じてもらうことにより本件開発事業を実施することのみを目的に締結されたものと解される。門前区ないし門前自治会は,本件ため池の水利権に対する補償金及び本件開発事業に対する協力金の支払を受け,新たな水源の確保も約束された上,本件門前区所有地の買収についても有利な条件で契約に至ることができたのであるから,これに加えて市が本件賃貸借契約の存続する限り賃料を支払い続けることは門前区ないし門前自治会を不当に優遇するものであるのみならず,今後の経済変動の状況によっては本件開発事業による税収入や雇用の確保も確実であるとはいえない。これらの事情を総合考慮すると,本件賃貸借契約を締結した市の判断には裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり,本件賃貸借契約は私法上無効である。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)本件において,仮に本件賃貸借契約を締結した市の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があり,かつ,これを無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められるという場合には,本件賃貸借契約は私法上無効になり,上告人は,これに基づく賃料としての公金の支出をしてはならないという財務会計法規上の義務を負うことになるものというべきである(最高裁平成17年(行ヒ)第304号同20年1月18日第二小法廷判決・民集62巻1号1頁参照)。そして,上告人は,本件賃貸借契約の締結は本件開発事業の実施や本件土地の環境保全のために必要不可欠であったとの趣旨をいうところ,本件開発事業によって得られる税収入や雇用の増加といったいわゆる開発利益を実現したり,本件開発事業によって影響を受ける自然環境を保全したりするためにどの程度の公費を支出するか,これらの相対立する利益をいかに調整するかといった事柄に関する判断に当たっては,住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う地方公共団体(地方自治法1条の2第1項)である市に,政策的ないし技術的な見地からの裁量が認められるものというべきである。したがって,本件賃貸借契約を締結した市の判断については,それがこれらの見地から上記のような事柄に係る諸般の事情を総合的に勘案した裁量権の行使として合理性を有するか否かを検討するのが相当である。
(2)前記事実関係等によれば,旧大安町が本件開発事業の実施を確保するために本件門前区所有地を任意に取得しようとしたところ,当初これに反対し売却を拒否していた門前区は,その後の交渉の結果,代替地として本件土地を要求したものであり,旧大安町がその要求に応じなければ本件開発事業は実施することができない状況にあったものといえるし,旧大安町が上記要求に応じ,門前区が本件土地を取得するに至った経緯に照らし,門前区による本件土地の取得に何らかの無効原因が存在したことをうかがわせる事情もない。また,これにより実施が可能となった本件開発事業によって,現に相当程度の税収入の増加と雇用の創出が図られたというのである。
そして,前記事実関係等によれば,本件土地は,本件開発事業に係る土地利用計画において残存緑地として組み込まれていたのであり,公社の理事長としてのAが三重県知事との間の自然環境保全協定に基づき本件開発事業の区域内において本件上地を含む緑地を確保すべき責務を負っていたことをも併せ考慮すれば,本件土地の現状を残存緑地として維持し保全することは,本件開発事業の円滑な継続のために必要であるとともに,本件土地上に存在する特徴ある陸生植物種が植生する湿地環境の保全にも資するものということができる。そうすると,上記のとおり本件土地を代替地として門前区に提供せざるを得なかった以上,同区の所有に帰した本件土地の現状をできる限り維持し保全するために本件賃貸借契約を締結しその賃料として公費を支出することには,一定の公益性が認められるというべきである。もっとも,本件賃貸借契約は,存続期間を6年間とし,賃借人である市の側から更新をすることができず,存続期間中であっても賃貸人から解約の申出ができる内容となっており,本件上地の現状を長期にわたり残存緑地として保全する方策としては万全なものとはいい難い点があり,また,賃料の減額も制限されるなど,かなり門前区に有利なものであった。しかしながら,本件賃貸借契約の締結に際して市がこれらの約定に応じたのは,賃借人の側からの更新の約定を設けることに応じない門前区が自ら契約を更新する動機付けとなるに足りる金額の賃料を支払うことによって事実上その永続的な更新を確保する趣旨によるものと解され,本件土地の現状の維持及び保全という観点からは現実的でやむを得ないものであって,次善の策ともいえ,当該契約の目的に照らして不合理であるとはいえない。さらに,その賃料が特に高額であるといった事情があるともいえない。このほか,門前区が本件ため池の管理を明治時代以前から行ってきた経緯に加え,公社が本件開発事業による本件ため池の環境への影響について継続的に事後調査を行っていることをも併せ考慮すると,本件賃貸借契約において本件ため池の管理が門前区ないし門前自治会に委ねられている点も特に不自然であるとまではいえない。
以上によれば,本件土地の現状を残存緑地として維持し保全するために門前区との間で本件賃貸借契約を締結した市の判断には,本目応の合理性があるというべきであり,裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があるということはできず,本件賃貸借契約が私法上無効になるものとはいえない。
(3)そして,前記事実関係等に照らせば,門前区ないし門前自治会が本件門前区所有地の存在を奇貨として旧大安町ないし市に対し権利の濫用に当たるような著しく不当な要求をしたなどの事情があるとはいえず,他に,本件賃貸借契約が違法に締結されたものであるとか,それが著しく合理性を欠くためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するなどといった,本件賃貸借契約に基づく賃料としての公金の支出が違法なものになることをうかがわせる事情(前記第二小法廷判決参照)も存しない。
(4)したがって,本件賃貸借契約に基づく市の義務の履行として,Aが門前区に対する約定の賃料としての公金の支出命令をしたこと及び上告人が門前区に対する上記賃料としての公金の支出をすることに,財務会計法規上の義務に違反する違法な点はないものというべきである。
5 以上と異なる見解に基づき,前記事実関係等の下において,被上告人らの請求を認容すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,被上告人らの請求は理由がないから,第1審判決を取消し,被上告人らの請求を棄却すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 竹内行夫 裁判官 古田佑紀 裁判官 須藤正彦 裁判官 千葉勝美)
*****乙第8号証*****
20160315r8.pdf
《全文》
【文献番号】25445468
損害賠償等請求住民訴訟事件
最高裁判所第一小法廷平成23年(行ヒ)第452号
平成25年3月28日判決
主 文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人西滓博ほかの上告受理申立て理由第2について
1 本件は,三重県の志摩市等により組織される鳥羽志勢広域連合(以下「本件広域連合」という。)が締結したし尿及び浄化槽汚泥の積替え保管場所等の賃貸借契約について,志摩市の住民である被上告人が,上記契約に定められた賃料は不当に高額でありその賃料の支出のうち適正額を超える部分は違法であると主張して,本件広域連合の執行機関である上告人を相手に,地方自治法292条により準用される同法242条の2第1項1号に基づき,上記賃料のうち本件広域連合の監査委員が適正額として勧告した額を超える部分に係る公金の支出の差止めを求めるとともに,同項4号に基づき,平成19年2月から同23年6月までの間に本件広域連合の長の職にあった者2名に対して各在任期間中の上記賃料に係る公金の支出額のうち被上告人が主張する適正額を超える部分に相当する金額及び遅延損害金の損害賠償請求をすること等を求める住民訴訟である。
2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)本件広域連合は,し尿処理等の広域的処理を行うこと等を目的として平成11年4月1日に三重県の鳥羽市,当時の志摩郡磯部町,阿児町,浜島町,大王町及び志摩町(平成16年10月1日以降は合併により志摩市)並びに当時の度会郡南勢町及び南島町(平成17年10月1日以降は合併により南伊勢町)により組織され,上記各合併を経て現在は志摩市,鳥羽市及び南伊勢町により組織される特別地方公共団体である。上記合併前の志摩郡においては,各家庭からし尿等の積替え保管施設であるし尿中継槽までの運搬距離を平準化し各町のし尿くみ取り料金に格差が出ないようにするなどのため,各町にそれぞれ1か所ずつし尿中継槽が設けられており,業者が各家庭からくみ取ったし尿をし尿中継槽まで運搬し,本件広域連合がし尿中継槽からし尿処理施設までの運搬を行っていた。このうち,志摩町のし尿中継槽(以下「旧し尿中継槽」という。)は,容量が20k1のものであった。
(2)本件広域連合は,平成12年頃,旧し尿中継槽の近隣住民から臭気に対する苦情を多数受けるようになったが,脱臭装置の設置等による対策のみで解決する見込みが低く,かつ,当時の住民規模に照らして旧し尿中継槽の増改築が必要であるにもかかわらずその敷地が狭小で増改築が困難であったことなどから,旧し尿中継槽を閉鎖して別の敷地にし尿中継槽を建設することを検討するようになった。また,本件広域連合においては,志摩町内に新たなし尿中継槽を建設する必要があるとされていたが,その理由はノ
中継槽を建設しなければならず,建設中であるし尿処理施設の処理能力との関係で,し尿等の海洋投棄が全面禁止される平成19年1月までに新たなし尿中継槽を完成させる必要があるとの認識によるものである。
(3)さらに,本件広域連合は,平成15年7月,旧し尿中継槽の周辺住民から強い苦情と旧し尿中継槽の閉鎖を求める要望を受けた。そのため,当時,志摩町の町長で本件広域連合の副連合長を務めていたBは,旧し尿中継槽を利用していたくみ取り業者であるA協業組合(以下「A協業組合」という。)に対し,旧し尿中継槽の閉鎖について理解を求め,当分の間は大王町のし尿中継槽を代替使用することを提案するとともに,志摩町内に建設する新たなし尿中継槽の用地の確保についても相談をした。これに対し,A協業組合は,旧し尿中継槽の閉鎖後新たなし尿中継槽が完成するまでA協業組合が志摩町内に有する貯留槽(以下「本件貯留槽」という。)を本件広域連合に無償で貸すことを提案するとともに,新たなし尿中継槽の用地としてA協業組合所有の土地を貸すことを提案した。本件広域連合は,これを受けて,同月22日に旧し尿中継槽を閉鎖し,本件貯留槽の代替使用を開始した。なお,本件貯留槽の代替使用については,平成17年3月10日,本件広域連合とA協業組合との間で賃貸借契約が締結され,契約期間は本件広域連合が借用を開始した日から新たなし尿中継槽が完成する日まで,賃料はその全期間を通じて50万円とされた。
(4)新たなし尿中継槽の用地に関するA協業組合の提案を受けて,本件広域連合においては,平成15年10月頃から第1審判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)の一部を賃借することについて検討を開始し,本件広域連合の議会の定例会で担当課長から本件土地の一部を賃借して200t規模のし尿中継槽を設置することを考えていることなどが説明された。本件土地は,国道260号線志摩バイパスと約4mの間口で接し,そこから約110mにわたって延びる通路部分と,その奥のおおむね楕円状の部分とから成る,総面積(実測)3531.7平方メートルの旗竿状の土地である。
本件広域連合は,平成16年6月頃から,本件土地又はその一部を賃借することを前提にA協業組合と協議をし,賃料について鑑定による価格を基準とすること等を要望した。これに対し,A協業組合は,し尿中継槽を建設すると土地価格が低下すること,その建設により本件土地及びその周辺の土地について検討していた高齢者施設等の建設その他の計画が実現できなくなることなどを理由に賃料について鑑定価格を基準にすることに反対し,月額140万円にするよう要求した。これを受けて,本件広域連合が,内部での検討等を踏まえ,同年9月21日の協議の場で,A協業組合に賃料の減額を要求すると,A協業組合は,最低でも月額70万円が必要であるとしたものの,更なる交渉の結果,本件土地のうち通路部分を除いた部分を月額50万円で賃貸することを了承した。
本件広域連合は,平成16年10月,合併後の志摩市の市長職務執行者を通じて,A協業組合に吏なる賃料の減額を要望したが,A協業組合は,月額50万円に満たない賃料では本件土地を貸さない旨を回答して,減額に応じなかった。その後,本件広域連合は,本件土地全てを月額50万円で賃借することとして,平成17年2月21日の議会において,借地料年額600万円を計上した平成18年度予算が承認され
た。
(5)本件広域連合は,平成17年8月18日,A協業組合との間で,本件土地を要旨次の約定で賃借するとの合意をした(以下,この合意を「木件賃貸借契約」という。)。
用途 関係町から生ずるし尿及び浄化槽汚泥の積替え保管場所(中継槽用地)並びに
進入路
期間 協議して別に定める時から平成21年3月31日まで。ただし,この期間満了の3か月前までに本件広域連合又はA協業組合のいずれからも異議の申出がないときは,期間満了の日の翌日から1年間延長するものとし,その後において期間が満了したときも同様とする。
賃料 年額600万円(月額50万円)
本件広域連合は,平成17年12月1日,A協業組合との間で,本件賃貸借契約における契約期間の始期を同日とする旨合意し,同月分から賃料の支払を開始するとともに同18年3月頃までに本件土地上に新たなし尿中継槽を完成させた。
(6)被上告人は,平成20年1月24日付けで,本件広域連合の監査委員に対し,本件賃貸借契約に定められた賃料を減額し,既に支払われた適正額を超える賃料を返還するよう必要な措置を講ずることを求める旨の住民監査請求をした。同監査委員は,同年3月19日,本件広域連合の長の裁量を考慮しても本件土地の年間賃料は258万8736円を上回るものではなく本件賃貸借契約に定められた賃料は不当に高額であるとして,上告人に対し必要な措置を講ずべきことを勧告したが,上告人は,同監査委員に対し,この勧告に従わない旨を通知した。
(7)本件広域連合は,平成22年11月22日,A協業組合との間で,本件賃貸借契約に基づく本件上地の賃料につき,同23年1月1日から同年12月31日までを年額500万円(同年1月分から11月分までは月額41万7000円,同年12月分は41万3000円)とし,同24年1月1日から同年12月31日までを年額400万円(同年1月分から11月分までは月額33万4000円,同年12月分は月額32万6000円)と変更する旨の契約(以下「本件変更契約」という。)を締結した。
(8)本件広域連合は,本件賃貸借契約(本件変更契約の締結後はこれに基づく変更後のもの)に基づき,その長がCであった平成19年2月から同20年10月30日までの間,同19年1月分から同20年9月分までの賃料月額50万円の各支出をした。また,本件広域連合は,その長がBに代わった後,平成20年11月から同23年1月までの間,同20年10月分から同22年12月分までの賃料月額50万円,同23年2月から同年6月までの間,同年1月分から同年5月分までの賃料月額41万7000円の各支出をした。
(9)被上告人が原審で証拠として提出した不動産鑑定土梅村斉ほか1名作成の鑑定評価書は,本件土地付近に設定した標準画地の価格から,本件土地の形状,面積,接道状況等を考慮して本件土地の基礎価格を求め,これに期待利回りを乗じて,本件賃貸借契約が締結された平成17年8月18日の時点における本件土地の適正賃料を年額81万7000円としている(以下,この鑑定評価を「本件私的鑑定」という。)。
3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断して,地方自治法242条の2第1項4号に基づく被上告人の請求のうち年額100万円を超える賃料支出額に係る部分及び同項1号に基づく被上告人の請求を認容した。
(1)本件賃貸借契約及び本件変更契約(以下併せて「本件各契約」という。)に係る違法事由の有無は賃料額の多寡によって判断されるべきであり,代替施設の有無等はその判断に際しての事情として検討することになる。本件賃貸借契約に定める賃料額は,本件土地の適正賃料である本件私的鑑定の前記評価額の7倍を超える極めて高額なものである。そして,大王町の中継槽の一時的な代替利用も不可能ではないから,新たなし尿中継槽を平成19年1月末までに設置すべき緊急性までは認められず,また,本件広域連合は,他の候補地を探すことなく,A協業組合から高額な賃料を要求されると,単に減額を求める交渉に終始し,鑑定評価を実施しないまま本件賃貸借契約の締結に応じている。本件各契約に定める賃料額を決定しその支出をした本件広域連合の長は,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものというべきであり,本件各契約に基づく賃料の支出は,適正と認め得る賃料額の上限である年額100万円を超える部分に関して財務会計法規上の義務に違反する違法な行為と評価すべきである。
(2)本件土地につき前記の賃料で借り受ける旨を決定した本件広域連合の長の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があり,本件各契約に定める賃料のうち上記の上限を超える部分を無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められるというべきである上,A協業組合においては,法外に高額な賃料を要求し,前記の経緯を経て本件賃貸借契約の締結に至らせていたのであって,本件各契約の賃料の約定は上記の上限を超える限度で公序良俗に反し,私法上無効である。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)地方自治法242条の2第1項4号に基づく被上告人の請求は,本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断が同法2条14項及び地方財政法4条1項に違反することを前提とするものであるところ,地方公共団体の長がその代表者として一定の額の賃料を支払うことを約して不動産を賃借する契約を締結すること及びその賃料の額を変更する契約を締結することは,当該不動産を賃借する目的やその必要性,契約の締結に至る経緯,契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮した合理的な裁量に委ねられており,当該契約に定められた賃料の額が鑑定評価等において適正とされた賃料の額を超える場合であっても,上記のような諸般の事情を総合考慮した上でなお,地方公共団体の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるときでなければ,当該契約に定められた賃料の額をもって直ちに当該契約の締結が地方自治法2条14項等に反し違法となるものではないと解するのが相当である。
前記事実関係等によれば,旧志摩郡においては,各家庭から生ずるし尿の運搬距離を平準化し各町におけるし尿くみ取り料金に格差が出ないようにするなどのため,各町にし尿中継槽が設けられていたのであり,各町の合併後間もない本件賃貸借契約締結当時においても同様に,本件広域連合が旧志摩町の区域内にし尿中継槽を設置する必要性があったということができる。そして,木件広域連合としては,本件貯留槽は新たなし尿中継槽が完成するまでの期間に限定して借りたものであり,また,旧大王町の区域内のし尿中継槽において同区域内から生ずるし尿等に加えて旧志摩町の区域内で生ずるし尿等の積替え及び保管を継続的に行うことは困難であったと考えられるから,旧し尿中継槽が閉鎖されてから2年以上経過した本件賃貸借契約締結当時において,速やかに新たなし尿中継槽の用地を確保する必要性があったというべきである。
そして,そもそも旧志摩町の区域内の旧し尿中継槽は周辺住民からの強い苦情を受けて廃止されたものであり,同区域内で新たなし尿中継槽の用地を確保することは相当困難であったと考えられるところ,他に具体的な候補地の存在もうかがわれない中で,本件広域連合がA協業組合から反対されて鑑定評価はしなかったものの前記2(4)の相応の交渉を経て本件賃貸借契約を締結するに至った経緯それ自体が不当なものであったとはいえず,また,本件私的鑑定において適正とされた賃料の額は,上記のようなし尿中継槽の用地を確保するという本件土地を賃借する目的やその必要性等の事情を考慮して算出されたものでないことは明らかである。
そうすると,旧志摩町の区域内にし尿中継槽の用地を確保するという本件土地を賃借する目的やその必要性,契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因としての当該施設の性質に伴う用地確保の緊急性や困難性といった事情の有無にかかわらず,本件賃貸借契約において鑑定評価を経ずに定められた賃料の額及びこれを一部減額した本件変更契約所定の賃料の額が本件私的鑑定において適正とされた賃料の額と比較して高額であることをもって直ちに,本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断がその裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであったということはできない。
(2)次に,契約に基づく債務の履行として行われる公金の支出について地方自治法242条の2第1項1号に基づく差止めを請求することができるのは,当該契約が私法上無効である場合に限られるところ(最高裁昭和56年(行ツ)第144号同62年5月19日第三小法廷判決・民集41巻4号687頁参照),旧志摩町の区域内で新たにし尿中継槽の用地を確保するために本件土地を賃借する必要性,当該施設の性質に伴う用地確保の緊急性や困難性といった上記の諸事情に加え,本件賃貸借契約に定められた賃料の額が当事者間で相応の交渉を経た上で合意されたものであり,本件広域連合の議会においてその予算が承認されていたことなどからすると,本件私的鑑定において賃借の目的等を考慮することなく適正とされた賃料の額と単純に比較して,本件各契約の賃料の約定が公序良俗に反するものとはいえず,また,本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があり,本件各契約を無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる(最高裁平成17年(行ヒ)第304号同20年1月18日第二小法廷判決・民集62巻1号1頁参照)と直ちにいうこともできないことは明らかである。
5 以上によれば,前記2の事実関係等から直ちに,本件各契約が違法に締結されたものでありその賃料の約定が私法上無効であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づく被上告人の請求の一部及び同項1号に基づく被上告人の請求を認容した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。
そして,被上告人の上記各請求については,旧志摩町の区域内にし尿中継槽の用地を確保するために本件上地を賃借する必要性,当該施設の性質に伴う用地確保の緊急性や困難性といった事情を総合考慮した上でなお,本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法となるか否か,また,本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があり,本件各契約を無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められるものとして本件各契約が私法上無効であるといえるか否かについて審理を尽くす必要がある。なお,仮に本件各契約が違法に締結されたものとみる余地があるとすれば,地方自治法242条の2第1項4号に基づく被上告人の請求については,その対象とされている各月の支出に係るC及びBの財務会計上の行為を明らかにした上で,本件各契約に基づく債務の履行として行われた各月の財務会計上の行為それ自体が当該職員の財務会計法規上の義務に違反する違法なものといえるか否か(最高裁昭和61年(行ツ)第133号平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁,前記第二小法廷判決,最高裁平成21年(行ヒ)第162号同年12月17日第一小法廷判決・裁判集民事232号707頁参照)等についても審理する必要がある。そこで,以上の各点について審理を尽くさせるため,上記破棄部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田尤孝 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 白木勇 裁判官 山浦善樹)
*****乙第9号証*****
20160315r9.pdf
土地改良事業計画設計基準
設 計「農 道」
基 準 書
技 術 書
平成17年3月
農林水産省農村振興局整備部設計課監修
社団法人農業土木学会発行
<P307>
第6章 路床及び舗装の設計
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/01/6cf270c0ef544f5beba20dd594945106.jpg)
↑図-6.5.4 軟弱土における安定処理厚別合成CBR↑
6.5.5 軟弱路床に対する改良工法
(1)良質土による盛土工法
地下水位が高く、路床土が軟弱な場合には、CBRが3以上の材料を約1m盛上げて新しい路床を造り、その上に舗装を設けるのがー般的である。ただし、ほ場内農道等において、高盛土が農耕に支障をきたすおそれのある場合等で、CBRが3以上になるような材料で盛土高を設計した場合は、その盛土高さを減ずることができる。
このような盛土工法の場合、盛土下部20cmの部分は在来路床土のCBRをとって設計する。
施工は、次の点を注意して行う。
①地下水位が高い場合や、湧水のあるときは、水位を下げるとともに排水処理する必要がある。
②盛上材料は、水浸による支持力の変化が生じ難い良質なものを選定する。
③搬入した盛土材料は、入口部からブルドーザ等で、一層の仕上り厚さが20cm程度になるように軟弱な路床面へまき出す。軟弱な路床土が盛土材料の表面に上ってきたり、また運搬車や施工機械のトラフィカビリティが確保できない場合には、別途、排水処理を検討する。
軟弱な路床土で、盛土材料が路床に侵入するのを防止し、また盛土荷重を均等に路床に伝えるために、フレキシブルなネットやシートを敷ならし、その上に盛土する方法、盛土材料として発
泡スチロールのような軽量盛土材料を使用する方法もある。
<P308>
(2)置換工法
置換工法は、切土部分で軟弱な路床土が現れた場合に、路床土に当たる部分を約lm掘削して、CBRが3以上の良質土で置換える工法である。なお置換工法においても「(1)良質土による盛土工法」と同様に、設計CBRが3以上になるような材料で設計した場合はその置換厚さを減ずることができる。この楊合の下部20cmのCBRの取扱いは盛土工法と同様とする。
施工は、次の点に留意して行う。
① 軟弱な路床土を所定の深さに掘削し、掘削面以下の層を乱さないように行う。
② 置換部分の締固めが不十分だと、将来沈下が生じ、舗装の早期破損の原因となるので、入念に締固める。
③ 路床の土質条件等によって締固めが十分にできない場合には、上層路盤か基層上で一時的に交通開放を行い、沈下を待った後、舗装を完成する方法もある。
(3)安定処理工法
安定処理工法は、軟弱な路床土の表面に、セメント、石灰等の安定材を散布し、路床土と安定材とを混合し、路床土の支持力の改善を図る工法で、設計CBRが3以上になるように設計する。
混合の方式には、湿地ブルドーザに混合・撹枠可能なアタッチメントを装着したものや、軟弱土専用のスタビライザ、ミキシングホーク等の施工機械による混合がある。
この場合、安定処理した層のうち下から厚さ20cmに当たる部分は、安定処理した層のCBRと在来路床土の試料によるCBRの平均値をとって設計する。
安定材の選定は、一般に砂質土に対してはセメント、粘性土に対しては石灰が効果がある。石灰には消石灰と生石灰の2種類があり、路床土が高含水比の場合は生石灰の方が効果が大きい。
その他の工法として、エコセメントによる地盤改良工法がある。エコセメントは、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥等を原料として製造されるセメントで、固化材(地盤改良材)として利用され、製造技術の確立と利用技術の開発が進められている。
(4)サンドイッチ工法
サンドイッチ工法は軟弱な路床上に砂層を置き、その上に貧配合コンクリート又はセメント安定処理の拘束層を設け、この上に交通量に応じた舗装を行う工法であるが、設計CBRや等値換算厚TAを用いた設計方法が適用できないので、過去の実施例や弾性計算等の方法を参考にして断面を決定する。
この工法の利点としては、次のようなことが考えられる。
① 舗装の下部に剛性の高い拘束層を置くことによって支持力が高められ、舗装の総厚を減少させることができる。
②拘束層の上部に置かれる材料の転圧効果を増す。
③ 軟弱な路床土の路盤への侵入が完全に防止できる。
④ 路床土及び路盤のひずみが小さくなり、したがって耐久性が増す。
施工は、次の点に注意して行う。
② 砂層は15cm程度敷ならし、軽く転圧して、表面を平らにならす。
② 砂層の上に貧配合コンクリート又はセメント安定処理材料を15~20cmの厚さに敷ならす。貧配合コンクリートのセメント量は220kg/m3程度とする。セメント安定処理は一軸圧縮強さ2.9~4.9MPaを目標にセメント量を決定すればよい。
<P309>
③ 貧配合コンクリート又はセメント安定処理層の上に、下層路盤材料、上層路盤材料の順で敷ならし、それぞれ十分に転圧して締固める。
(5)ステージコンストラクション
交通上やむを得ない揚合を除き、一度に表層まで完成させず、まず路盤まで施工し、その後状況を判断して段階的に完成させていく方法である。
ステージコンストラクションとは段階的施工法であり、その方法は舗装構造により若干その考え方を異にするが、一般的に農道舗装の設計においては次のような方法が採用されている。
① 農道舗装は、それぞれの路線で設計期間を設定してその舗装厚を設計するが、第一段階では上層路盤までを施工(歴青安定処理を行ったもの)し、その後一定期間内に第二段階として表層のアスファルト舗装を行う方法(図-6.5.5参照)。
② 水田地帯等の軟弱な路床に設置される農道は、盛土工法や置換工法等で路床改良を行って 舗装をする。この場合、第一段階で下層路盤までを砕石材料等で施工し路面整形を行い、工事用車両等の限定された範囲での交通開放を行って圧密沈下等の促進を図り、その後これらの状況を判断して順次段階的に施工していく。
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↑図-6.5.5ステージコンストラクションの施工例↑
これらの方法は路床及び路盤状況が複雑で、その明確な把握が困難な場合や、軟弱路盤のように経年変化等に伴いその性状が変化するものに対して、一定の期問の交通開放を行い、その状態によって目的とする舗装構造を決定し、段階的に施工していくものであり、経費面から、また舗装構造の安全設計という面からも期間的な制約が許されるならば有利になることが多い。
6.5.6 路床が岩盤の場合
アスファルト舗装の揚合、・剛構造の路床にすると、たわみ性の減少等によってクラックが発生するため緩衝材を使用する。また、コンクリート舗装の場合には、支持力を均一なものにすることが重要であり、路床が岩盤の場合の取扱いは次の区分による。
① 局部的(延長おおむね50m未満)な個所は前後の路盤厚と同一とする。
② 寒冷地でけつ岩、風化岩等、凍上のおそれがあるものは岩盤として取扱わない。
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③ 岩盤が連続する場合(延長おおむね50m以上)の取扱いは次のとおりとする。
アスファルト舗装の場合:CBRが20以上として設計する。
コンクリート舗装の場合:支持力の均―性からならしコンクリートを施し、その最小厚は5cmとする。
注)ならしコンクリートには目地を設けず、表面に石粉等を塗布するものとする。
④ 岩砕による盛土の場合(延長おおむね50m以上)のCBRは通常20以上とする。ただし、風化及び吸水の激しいものについては、別途設計するものとする。
なお、一般的には、路盤の計画高まで盤下げを行うものとするが、盤下げを行わずにすりつけ等が可能な場合には、現場条件、経済性等を検討して決定するものとする。
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■以上のとおり、まだスラグを敷砂利として使っていたことを反省もせず、あくまでもステージコンストラクションだったと、未練がましく、これまでの主張を繰り返しています。
もっとも、スラグに思考力さえ汚染されてしまった群馬県行政は、いくら言い訳は苦しくとも、これしか主張する術がないのも事実なのですから、どうやら最後まで、ステージコンストラクションを言い続けるつもりのようです。
■しかし行政訴訟を提起するたびに、いつも首をかしざるをえません。住民側はすべて手弁当で時間と労力をかけて裁判資料を作成し提出しますが、行政側は、我々の税金で顧問弁護士を使って、公務の時間を費やして裁判資料を作成し、裁判所にも公務として赴くのです。
本来であれば、有害な危険スラグを排出責任者である大同特殊鋼に撤去させれば、このような訴訟の手間を掛けずに済んだのですが、官業癒着のなせるわざなのか、行政の無責任体質なのか、いつも住民にしわ寄せがくるのです。
なお、この被告の第3準備書面に対する反論等をまとめて、4月15日までに前橋地裁に、原告準備(6)として提出することになります。そして4月22日(金)午前10時30分から、前橋地裁2階の201号法廷で第4回口頭弁論が開かれる予定です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの連絡・この項終わり】