■先日7月9日の豊島郵便局の消印で、筆者宅にもサギ葉書が届きました。ネットで「訴訟最終告知通達センター」を調べると、同じようなサギ葉書が大量にばらまかれていることがわかります。訴訟告知は通常、裁判所から封書で送達されてきますが、葉書でよこすのですから、サギだとすぐにわかります。しかし、一般の方は、なにやらそれっぽい感じの文章に不安に駆られる人もおられるかもしれません。そこがこのサギ葉書のねらい目のようです。
一番最初にヒットした記事は次の内容です。
https://rocketnews24.com/2018/07/03/1085394/
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【注意喚起】法務省をかたる「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」ハガキは詐欺! 届いても無視しよう
江川資具2018年7月3日
今ネット上で『法務省管轄支局 国民訴訟お客様管理センター』や『訴訟最終告知通知センター』といった組織を名乗る差出人から届いたというハガキが話題となっている。
ハガキの内容を簡単に要約すると「あなたは訴訟を起こされました。訴訟取り下げなどの相談については下記番号に電話するように」というものである。文面はいかにも役所から届きそうな感じで実にそれっぽく、真に受けてしまってもおかしくない見た目だ。
掲載されている住所も実際に法務省のものだが、結論から言うとこれは完全に詐欺である。注意喚起のためにも以下でより詳しく紹介しようと思う。
・パターンは複数ある様子
差出人や文面には複数バリエーションがあるようで、どれも中々手が込んでいるように感じた。今回ある方のご好意で、実際に届いたハガキの画像を入手したが……何も知らずにこれが届いたら心中穏やかではいられない程度に手の込んだ出来である。
ちなみに、記者が確認できただけで同様のハガキは5パターンほどあったが、基本的な構成は以下の点で共通していた。
<1例>
1.「○○の料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」的な見出し
2.「訴訟番号」や「管理番号」といったそれっぽい番号
3.本文の趣旨は「訴訟の取り下げについては下の番号に電話しろ」
4.メチャクチャ急な「取り下げ最終期日」
5.「○○センター」という組織名に住所と電話番号
どのパターンのハガキもこの数日で届いたそうなので、もしかしたら差出人は同じなのかもしれない。
・電話をかけると金銭をだまし取られる
行政側も既に注意喚起に乗り出しており、警視庁も本件に関するツイートをしたり、名前を使われてしまった法務省も公式HP内で取り上げている。なお、法務省によると記載されている番号に電話した結果、実際に金銭的被害が発生しているとのことで、『絶対に連絡しないように』と呼びかけている。
・高齢者には直接教えてあげよう
また、複数のパターンを閲覧していて気づいたのが、「祖父母宅に届いた」という共通点である。若年~中年層と比較すると、高齢者の方々がネット上の情報に触れる機会は少ないのではないだろうか。そして、このハガキを送りつけている側も、それを想定して高齢者層をターゲットとしている可能性が考えられる。
実際私の両親も、パソコンやスマホで情報収集などは一切しない。現在ネット上では注意喚起が広まっているが、ご高齢な親族の方には直接知らせてあげると良いのではないだろうか。
■名前を語られている法務省もさすがに看過できずに注意喚起をしています。
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho06_00434.html
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法務省の名称等を不正に使用した架空請求により被害が発生しています
平成29年5月以降,「少額消費料金未納に関する訴訟最終告知のお知らせ」,「総合消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」などと題し,「裁判取り下げの相談に乗る」等と書かれたはがきが送付されているとの情報が法務省に多数寄せられており,実際に多額の金銭的被害も発生しております。
差出人は,「法務省管轄支局 国民訴訟通達センター」,「法務省管轄支局 民事訴訟管理センター」,「法務省管轄支局 民間訴訟告知管理センター」,「法務省管轄支局 国民訴訟お客様管理センター」などと記載されていますが,これらの団体と法務省とは一切関係がありません。
文面は,財産の差し押さえを強制的に執行する等と不安をあおり,本人からの連絡を求める内容になっており,書かれている電話番号に連絡をすると,弁護士等の紹介費用と称し,収納代行サービスやプリペイドカード等を利用させて金銭をだまし取るといった手口が報告されています。
なお,はがきの裏面には,文面が見えないようにシールが貼付されている場合もあります。
対処方法としては,はがきに書かれている電話番号等には「絶対に連絡しない」ようにし,「相手にしない」ことが大切です。それでも,不安に感じる場合には,お住まいの自治体の消費生活センターや警察等に御相談ください。
↑架空請求はがきの例↑
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■国民生活センターも同様の注意喚起をHPに掲載しています。
**********独立行政法人国民生活センターのHPより
[2017年5月1日:公表]
「民事訴訟管理センター」からの架空請求ハガキは無視してください!
「民事訴訟管理センター」からハガキが届いても、決して相手に連絡せず、支払わずに無視してください。不安を感じたり対処に困ったりした場合には、すぐにお近くの消費生活センター等(消費者ホットライン188(いやや))に相談してください。
「民事訴訟管理センター」と名乗る機関からハガキが届いたとして全国の消費生活センター等に寄せられた相談が今年3月下旬から急増しています。
消費者に、過去に利用した業者への未払いがあると思わせ、それに関して「裁判所に訴状が提出された」「給与、動産物、不動産物の差し押さえ」などと脅して不安にさせたうえで、訴訟の取り下げ等について相談するよう、誘導しています。
消費者が「民事訴訟管理センター」に連絡をしたところ、弁護士を名乗るものを紹介され、最終的にはコンビニでプリペイドカードを購入し、お金を支払ってしまったとの相談も寄せられています。
↑図 「民事訴訟管理センター」に関する相談件数(注)↑
(2017年4月25日までの登録分)
2017年1月の相談件数は0件、2017年2月の相談件数は0件、2017年3月の相談件数は409件、2017年4月は25日までの相談件数で552件です。
※2017年3月は、3月27日から相談が寄せられ始めた。
(注)PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースのこと。
<相談事例>
【事例1】「料金未納。最終通告」というハガキが届き、電話した。プリペイドカードを30万円分購入して、番号を伝えた。さらにお金を用意せよと言われたが、どうすればよいか
2日前、「総合消費料金未納分訴訟最終通知書」というハガキが届いた。内容は、総合消費料金が未納となっており、契約会社や運営会社によって民事訴訟の訴状が提出され、連絡がない場合は、給与等を差し押さえるというものだった。料金未納について全く心当たりがなかったので、ハガキに記載のあった取り下げの相談窓口に電話をした。
私が「総合消費料金は何か」と尋ねたが、窓口は「答えられない。弁護士に相談せよ」と言った。教えられた弁護士に連絡すると、プリペイドカードを30万円分用意せよと言われ、昨日、コンビニでプリペイドカードを30万円分購入し、券面の番号を教えた。後刻、弁護士から電話があり、「大変なことになっている。相手が裁判を取り下げないと言っている。未納金は150万円だ。お金を準備してくれなければ、あなたの弁護はできない。いくら用意できるか、連絡せよ。裁判になれば、莫大なお金がかかる」と言った。再度、「総合消費料金とは何か」と尋ねたが、弁護士は「裁判を取り下げないと分からない」と言った。この話は本当なのか。どうすればよいか。
(2017年4月受付 契約当事者:50歳代 女性)
【事例2】「総合消費料金未納分訴訟最終通知書」という身に覚えのないハガキが届いたので、電話をしたところ、最終的にはプリペイドカード50万円分を買うことを指示された
「総合消費料金未納分訴訟最終通知書」というタイトルのハガキが届いた。ハガキには、連絡なき場合は原告側の主張が全面的に受理され、裁判の処置として給与の差し押さえをすると記載があった。
裁判取り下げ期日が迫っていたので電話をしたところ、「心配しなくていい。弁護士会に電話しなさい」と言われ、ある電話番号を教えられた。そこにかけると弁護士を名乗る男性が出て、別の会社の電話番号を教えられた。
その会社に電話すると恐ろしく怖い口調で、コンビニでプリペイドカードを50万円分買い、電話するように指示された。10万円分は買ったが何かおかしいと思う。どうすればよいか。
(2017年3月受付 契約当事者:60歳代 女性)
<消費者に送付されているハガキ>
↑図 送付されているハガキ見本↑
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<ハガキの内容>
総合消費料金未納分訴訟最終通知書
訴訟番 そ355
この度御通知致しましたのは、貴方の未納されました総合消費料金について契約会社、ないしは運営会社から民事訴訟として訴状の提出をされました事を御通知致します。以降、下記に設けられた裁判取り下げ最終期日を経て訴訟を開始させて頂きます。このまま御連絡なき場合には、原告側の主張が全面的に受理され裁判後の処置として給与の差し押さえ及び動産物、不動産物の差し押さえを執行官の立会いのもと強制的に履行させて頂きますので裁判所執行官による「執行証書」の交付を承諾して頂くようお願いすると同時に債権譲渡証明書を一通郵送させて頂きますので、ご了承下さい。民事訴訟及び、裁判取り下げ等の御相談に関しましては当局にて受け賜わっておりますので職員までお問合せ下さい。尚、書面での通達となりますので、プライバシー保護の為、必ず御本人様から御連絡頂きますようお願い申し上げます。以上を持ちまして、最終通達とさせて頂きます。
裁判取り下げ最終期日 平成29年4月●日
民事訴訟管理センター
〒102-8688
東京都千代田区九段南1-●
消費者相談窓口 03-●
受付時間 9:00~20:00
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■こうした見え透いた詐欺行為に血道をあげる輩が存在する背景には、被害に遭う人たちが存在していることを意味しています。
このサギ行為では、上述の相談事例にもあるように、電話を掛けると弁護士を語る人物に繋がり、その人物の言葉にそってカネを支払わされる手口になっているようです。
弁護士という職業人の普段からの行状が、もっと社会正義に則ったものであれば、こうした詐欺師に「弁護士」という肩書を利用されることは少なくなると思います。しかし、現在の弁護士稼業は、依頼者が社会的な悪事を働いていても、カネのためにそれを受けるケースがあまりにも多く、節操のない職業になっており、「弁護士」=強面(こわもて)というイメージが社会に定着してしまっていることにも、問題があると思います。
【ひらく会情報部】