■みなかみ町のたくみの里近くの日帰り温泉「遊神館」の一角に、「RDF実証試験施設」なるものが建てられたのは、平成30年でした。しかし、議会の議決を経ないまま署名された協定書にもとづき、建てられたこの施設でRDF実証試験の目途は立たず、行く先を失ったRDFが保管庫から溢れ、あわてて2017年6月から別の業者とRDFの引取り契約を交わしたら、それまでの2倍の処理費用の1トン当たり3万8000円となり、みなかみ町は泣き面にハチという状況です。こうした事態を招いた背景を調べるため、当会会員が10月30日に訴状を前橋地裁に提出したところ、このほど前橋地裁から第1回口頭弁論期日呼出状が届きました。それによると、年明けの1月15日(水)午前10時から前橋地裁2階第21号法廷で第1回弁論が開かれます。
↑家庭ごみなどから固形化燃料(RDF)を製造する機械(群馬県みなかみ町布施、町提供)↑
なお、この事件のこれまでの経緯については、次のブログ記事を参照ください。
○2019年10月13日:スッポン養殖に目がくらみ禁断のRDFに手を出したみなかみ町に住民監査請求↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3050.html
○2019年11月2日:禁断のRDFとみなかみ町・・・お粗末過ぎる住民監査結果を通知された当会会員が住民訴訟提起↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3068.html
■この間、みなかみ町では、同町の監査委員が勧告したRDF実験施設の使用許可やごみ処理の経費節減計画策定・提示などの期限が12月末に迫っており、同庁はてんやわんやの状況にあるようです。なぜなら、当会会員が提起した訴訟で、1月15日の第1回弁論が迫る中、まだ同町から答弁書が出されて来ず、裁判所は年明けの1月6日までに提出するように同町に促しているからです。
この様子を12月5日、朝日新聞が報じています。
**********朝日新聞2015年12月5日
ZIP ⇒ 20191205vqnirdfj.zip
ゴミ処理巡り答弁拒否連発
みなかみ町長 訴訟を理由に
みなかみ町の家庭ごみなどの固形化燃料(RDF)=写真=を利用した実証実験計画をめぐり、町監査委員が勧告した実験施設の使用許可やごみ処理の経費節減計画提示などの期限が今月末に迫っている。だが、4日の町議会一般質問で鬼頭春二町長は訴訟を理由に答弁拒否を連発。方向性も示されないままだ。
↑群馬県みなかみ町が製造しているごみ固形化燃料(RDF)=町提供↑
★固形燃料実証実験計画★
計画では、民間業者が町有地に実験炉などの施設を設置し、町の処理場でつくるRDFを燃料に町営の温泉施設の加熱に利用するはずだった。2代前の町長時代にスタートした計画を前町長らが問題視。町との協定をもとに民間業者が設置した実験炉は稼働していない。一方、町のごみ処理費用は計画を前提に委託業者が変更されたため、計画前から倍増している。
9月に監査結果が出た後、前町議が10月に町を提訴。元町長と当時の担当課長が町に損害を与えたとして、2人に計約2億3500万円を請求するよう町に求めた。
4日の一般質問で「ごみ処理費用が倍増し、5千万円近い税金が余計に使われている」などと問われた鬼頭町長は「訴訟にかかわるので答弁は差し控える」と繰り返した。「町が検証委員会を設け、町民や議会に経緯を説明すべきだ」と迫られても、町長は「最善を尽くして解決に向けて努力していく」と述べるにとどまった。
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〈ごみ固形化燃料(RDF)〉 生ごみや廃プラスチック、古紙などの可燃ごみを粉砕・乾燥して圧縮した燃料。輸送や長期保管をしやすく、暖房、発電などにも利用される。三重県の焼却発電施設で2003年8月、7人が死傷した爆発事故が起きた影響などで、近年は施設の廃止が全国で相次いでいる。
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■RDF実証実験をめぐる経緯
1998年04月 ごみ固形化燃料(RDF)施設が完成し、発電開始
2005年10月 月夜野、水上、新治の3町村が合併し、みなかみ町が発足
2006年08月 発電設備が故障で休止
2017年10月 町とみなかみエネルギーサービスが実証実験の協定締結
町長選で現職の岸良昌氏を破り、新顔の前田善成氏が当選
2018年01月 町議会全員協議会で協定に異論が続出
2018年04月 町有施設「遊神館」わきに、業者側が実証実験施設を設置
2018年05月 前田町長のセクハラ問題が発覚
2018年08月 前田町長のセクハラ問題で町議会が不信任決議を可決。町長は「RDF計画の是非の民意を問う」と議会を解散
2018年09月 町議選で「町長派」惨敗。前田町長は2度目の不信任決議で失職。
2018年10月 町長選で、前副町長の鬼頭春二氏が無投票で初当選
2018年12月 町議会がRDF問題の調査特別委員会を設置
2019年09月 調査特別委員会が「実証実験に疑問」と最終報告
住民監査請求で町監査委員が監査結果公表。町に実証実験施設の使用許可や経費節減計画の提示などを求める
2019年10月 前町議が町に対し、元町長と当時の担当課長に計約2億3500万円を請求するよう求め、前橋地裁に提訴
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RDF課題多く 再検討含め岐路
RDFはごみを燃料化して電気を生む「夢のリサイクル」として、施設が各地で建設された。しかし、処理経費が割高で廃止する自治体が相次ぎ、固形燃料としても処理業者が限られるなど多くの課題を抱える。
環境省のまとめでは、2017年度に全国で稼働するRDF施設は54カ所。1990年代から広がったが、生ごみを含んだ燃料は品質が低いことなどから撤退する自治体も多く、近年は増えていないという。
県内では板倉町や旧鬼石町を含め一時4カ所で稼働していたが、旧鬼石町は2006年3月に藤岡市との合併に伴い廃止。板倉町は館林市、明和町との広域処理に転換し、16年12月に廃止した。藤岡市の担当者は「RDFは燃料として売れなくては作る意味がない。当時は買い手を探すのに苦労した。廃止は経費節減にもつながっている」。
みなかみ町以外で唯一稼働中の神流町では合併前の中里村などが約6億円をかけて建設し、1999年度に稼働を始めた。2018年度は生ごみなど435トンをRDF化。愛知県内の製紙会社に燃料として1トン当たり500円で年間約160トンを販売している。ただ、運送費は1トン当たり9500円。施設の修繕費や生ごみを乾燥させる灯油代なども加え、費用は年約2500万円に上る。製紙会社との契約は1年ごとで販売先の確保も難しいという。神流町は「稼働から20年がたち、施設を延命化するか新たな処理方式を検討すべきか、岐路に立たされている」としている。
(金井信義)
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さらに12月19日にもRDF問題に関する記事の掲載がありました。
**********朝日新聞2019年12月19日(木)
ZIP ⇒ 20191219vlirdfhj.zip
ごみ固形化燃料問題 揺れるみなかみ町
家庭ごみなどの固形化燃料(RDF)を利用した実証実験計画をめぐり、みなかみ町が揺れている。町の許可がないまま、町有地に建設された施設について、町監査委員が「使用許可を出す」よう迫る一方、前町議は関係者に損害賠償を求めるよう町を訴えた。町は年末までに一定の結論を出す考えだが、なぜこんな事態になったのか。
2017年10月、岸良昌町長(当時)が民間業者と結んだ協定が問題の発端。町の処理施設でできるRDFを業者の実験施設で燃やし、町営の温泉施設の加温に使う計画だった。町は当時、県外業者にRDFの処理費用として1トン当たり2万1千円で委託しており、町内での焼却で経費節減を目指した。
★稼働に許可必要★
協定に基づき翌春、温泉施設が立つ町有地に業者が実験施設を建てた。業者は「建設は町の指示だった」と言う。しかし、県は「稼働には一般廃棄物処理業の許可が必要」と判断し、施設は稼働できなくなった。
計画を前提に委託先が変わっていたため、町のごみ処理費用17年度以降、年間約1億円と以前の2倍近くに膨らんだ。町議会の議決もなく町有地に業者が建てた施設は。「適正な対価なくして(町有財産を)貸し付ける場合は町議会の議決が必要」とする地方自治法に違反する疑いもある。
★経費節減を勧告★
こうした経緯を問題視した前町議からの住民監査請求に町監査委員は、町による施設の使用許可や、ごみ処理の経費節減計画の立案を勧告。前町議は「経緯が不透明で町に損害を与えている」と納得せず、岸氏らに約2億円の損害賠償を請求するよう町に求める住民訴訟を起こした。
町議会の「ごみ処理調査特別委員会」も9月、「多数の議員は協定書の有無すら承知していなかった。町有地内での実証実験は疑問だ」と町の対応を批判。「協定の相手側の業者も「当初の計画通り実験をしたい。稼働できないなら施設を町に引き取ってもらうしかない」と反発を強める。
★「実現は難しい」★
町は「施設の稼働にはさらに経費がかかり実現は難しい」としつつ、「施設をどうするかはまだ調整中」と説明する。監査結果では今月末までに経費削減計画をまとめるよう求められており、町は監査委員事務局に文書で回答するとしている。
(金井信義)
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■当会会員が10月27日に前橋地裁に提起した住民訴訟は、その後、11月8日付で地裁から補正命令の事務連絡が届きました。
※地裁からの補正命令の事務連絡 ZIP ⇒ 201911110naij.zip
そして、地裁の命令内容にしたがって、11月20日に、訴状の訂正申立書を地裁に提出しました。修正箇所は青色で表示。
*****訴状訂正申立書*****ZIP ⇒ 123.zip
令和元年(行ウ)第20号 RDF違法事業費用損害賠償請求事件
原 告 鈴 木 章 二
被 告 みなかみ町
訂 正 申 立 書
令和元年11月22日
前橋地方裁判所民事第1部合議係 御中
原 告 鈴 木 章 二 印
令和元年11月8日に事務連絡により通知された御庁の指摘に基づき、本事件の訴状を次のとおり補正して訂正する。
1 被告の特定
訴状の1ページ目を御庁の指摘に基づき、別紙1のとおり訂正する。
2 請求原因の特定
訴状の2ページ目を御庁の指摘に基づき、別紙2のとおり訂正する。
3 財務会計上の行為の特定
訴状の末尾のページに御庁の指摘に基づき、別紙3のとおり追記し訂正する。
以 上
添付: 別紙1(1枚) 2部(正本1、副本1)
別紙2(1枚) 2部(正本1、副本1)
別紙3(3枚) 2部(正本1、副本1)
=====修正した訴状=====
収入印紙(1万3000円)
訴 状
令和元年10月30日
前橋地方裁判所民事部 御中
原 告 鈴 木 章 二
〒379-1414 群馬県みなかみ町布施339-1(送達先)
原 告 鈴 木 章 二
電 話 090-1431-6607(携帯)
FAX 0278-64-0753(固定電話兼用)
〒379-1393 群馬県利根郡みなかみ町後閑318
被 告 みなかみ町長 鬼 頭 春 二
電 話 0278-62-2111(代表)
FAX 0278-62-2291
RDF違法事業費用損害賠償請求事件
訴訟物の価額 金160万円(算定不能)
貼用印紙額 金1万3000円
第1 請求の趣旨
1 被告みなかみ町長鬼頭春二は、元・同町長の岸良昌、および元・生活水道課長の高橋孝一に対し連帯して、平成29年6月30日から令和元年8月31日における固形燃料RDF運搬・処理業務委託事業に関して2億3423万9025円、およびこれらに対する平成29年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
2 被告みなかみ町長鬼頭春二は、元・同町長の岸良昌、および元・生活水道課長の高橋孝一に対し連帯して、平成29年10月3日から令和元年10月3日におけるみなかみ町遊神館RDFボイラー実証実験協定に関して120万円、およびこれらに対する平成29年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
第2 当事者
(中略)
第3 住民監査請求
(中略)
第4 監査請求と監査結果に対する不服
(中略)
第5 みなかみ町の損失
(中略)
第6 本件請求の要旨
(中略)
第7 請求の趣旨第1項と第2項についての裁判所命令に基づく補正
1 本件請求の趣旨第1項「被告みなかみ町長鬼頭春二は、元・同町長の岸良昌、および元・生活水道課長の高橋孝一に対し連帯して、平成29年6月30日から令和元年8月31日における固形燃料RDF運搬・処理業務委託事業に関して2億3423万9025円、およびこれらに対する平成29年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。」について
【① 誰が、いつ、どのような財務会計上の行為を行ったのか。】
当時のみなかみ町生活水道課の高橋孝一課長の手引きで岸良昌町長(当時)が、熱供給業者である訴外・みなかみエネルギーサービス㈱代表取締役の山地敏男と、2017年10月3日、みなかみ町遊神館RDFボイラー実証試験協定書を締結し、その結果、ボイラー実証試験施設の設置に必要な調整として、遊神館の敷地内スペースを熱供給業者に占有させることを認めたこと。
【②その財務会計上の行為はどのような理由で、違法であるのか。】
当該実証実験施設が、使用許可の出されていない土地に建設されていて稼働できないのに、協定書を一部の関係者だけで、議会の議決を経ないまま勝手に締結したことは、地方自治法第96条第1項に定める議決事件、および同法第2条の次の各項に違反している。
○14 地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。
○15 地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。
○16 地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない。
○17 前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする。
【③その結果、町にどのような損害が生じているのか。】
無許可のまま町有地に施設を建設させたことによる公有財産の棄損の結果、およそ400平方メートルの土地が占用されたことにより、本来であれば、みなかみ町が得べかりし土地賃貸料として月5万円相当と試算される金額が、逸失利得として継続的に生じている。
2 本件請求の趣旨第2項「被告みなかみ町長鬼頭春二は、元・同町長の岸良昌、および元・生活水道課長の高橋孝一に対し連帯して、平成29年6月30日から令和元年8月31日における固形燃料RDF運搬・処理業務委託事業に関して2億3423万9025円、およびこれらに対する平成29年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。」について
【①誰が、いつ、どのような財務会計上の行為を行ったのか。】
当時のみなかみ町生活水道課の高橋孝一課長の手引きで岸良昌町長(当時)が、熱供給業者である訴外・みなかみエネルギーサービス㈱代表取締役の山地敏男が持ち込んだスッポン養殖事業用の加温施設のための実験設備導入のため、燃料のRDFをそちらに回すべく、それまでのRDFリサイクル契約をみなかみ町生活水道課の高橋孝一が勝手に破棄し、あらたに2017年5月22日、廃棄物運搬・最終処理業者の㈱ウィズウェストジャパン及び廃棄物中間処理業者のサンエコサーマル㈱との間で、一般廃棄物(固形燃料RDF)運搬・処理業務委託契約を締結し、その結果、即日より1t当たり3万8000円(消費税8%3040円加算すると4万1040円)の委託料を、さらに同年7月1日には業務委託変更契約締結により、1t当たり3万9000円(消費税8%3120円加算すると4万2120円)に増額した委託料を、即日から支出することを認めたこと。
【②その財務会計上の行為はどのような理由で、違法であるのか。】
当該一般廃棄物(固形燃料RDF)運搬・処理業務委託契約が、一部の関係者だけで、議会の議決を経ないまま勝手に締結され、それまで締結していた契約を破棄し、結果的にそれまでより1tあたりほぼ2倍近い委託料を支払うことを余儀なくされたことは、地方自治法第96条第1項に定める議決事件、および同法第2条の次の各項に違反している。
○14 地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。
○15 地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。
○16 地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない。
○17 前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする。
【③その結果、町にどのような損害が生じているのか。】
みなかみ町は2017年度からRDFを県外業者に一般廃棄物を県外業者に一般廃棄物として処理を委託しているが、委託費は年間約1億円と、燃料として売却していた頃の運搬費の2倍近くに膨らんだことにより、みなかみ町の財政に損害を生じせしめている。
以上
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■おそらく、みなかみ町役場の関係者の皆さんは、クリスマスも新年も返上で答弁書の作成に追われるのではないか、と心配です。それよりも、もっと関心が集まるのは、みなかみ町が訴訟代理人としてどの法律事務所に声をかけるのか、です。
ちなみに、昨年、前田・前町長がセクハラ問題による名誉棄損に伴う損害賠償請求訴訟を、ハニートラップを仕掛けた地域おこし協力隊員の女性職員を相手取って、提起した際、女性職員が派遣されていたみなかみ町観光協会は、前橋市内の石原・関・猿谷法律事務所所属でヤメ検の関夕三郎弁護士に訴訟代理人業務を委託し、めでたく前町長に訴訟を取り下げさせました。
今回の事件は、刑事事件が絡むセクハラ問題とは勝手が異なるため、ヤメ検弁護士が適当かどうか、慎重な判断が必要となります。難しい事件だけに、ひょっとしたら県内では引き受け手がいないかもしれません。1月6日までに到来する答弁書を見るまで、読者の皆様も自由に想像してみてください。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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