市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議…二百万円選挙公営費返還請求のための住民訴訟を提起!

2020-03-20 22:12:00 | 政治とカネ


■公営選挙費用を使って2019年4月7日投開票の県議選に当選した自民党の南波和憲県議は、その後突然5月24日に辞職しました。以後約7カ月が経過しようとする12月18日に、南波和憲に対する連座制適用に基づく群馬県議選への立候補を今後5年禁止する判決が、東京高裁で言い渡されました。このため、当会は、12月23日、群馬県監査委員に対して、群馬県選挙委員会が南波和憲のために支出した選挙公営費を本人から返還させるよう求める住民監査請求を郵送で提出しました。翌24日、群馬県監査委員事務局に電話で確認したところ、受理されたことが確認されました。その後、1月27日(月)に監査委員2名の前で陳述が行われ、当会代表から「公選法違反が確定したのだから、支出した公金は取り戻さなければならない」と力説し、「他の自治体の例など調べることなく、群馬県として判断してほしい」と念押しをしました。しかし、監査委員らはまたもや2月18日に「本件措置請求を棄却する」という結果通知を送り付けてきました。そこで、いろいろと検討した結果、やはり選挙違反で連座制により当選無効が裁判所から宣告されたのですから、公平・公正な選挙の実施のために投入された血税による選挙公営費は回収されて損害を回避しなければならないと考えて、提訴することに決めて、期限ギリギリの3月19日に前橋地裁3階の民事受付に訴状等一式として正本、副本を提出し、受理されました。

新型コロナ対策の為、裁判所のあちこちに貼られた「お知らせ」。さすがに口頭弁論は中止になっていないが、マスクを着用しないと裁判所に入れてもらえない状況になっている。


住民訴訟の場合、手数料1万3000円に郵送代として切手6000円分の合計1万9000円が必要になる。

 この事件に関する当会のブログ記事は次のとおりですので、ご参照ください。
○2019年7月24日:妻が公選法違反で起訴!・・・4.7県議選で南波前県議が血税で使った選挙公営費用158万円の落とし前
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2989.html
○2019年8月23日:公選法違反で妻が起訴!・・・4.7県議選後5月に辞任の南波前県議の妻に求刑1年
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3008.html
○2019年9月23日:公選法違反で妻が起訴!・・・妻が執行猶予付き有罪判決を受けた南波元県議が一時県議会臨時議長に!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3034.html
○2019年12月24日:妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議・・・200万円余の選挙公営費の返還を求め住民監査請求!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3095.html
○2020年2月22日:妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議…二百万円選挙公営費返還の住民監査請求を県監査委員が棄却!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3121.html

 当会が提訴した訴状の内容は次のとおりです。

**********ZIP ⇒ 20200319ieib18jiicj.zip
訴    状

                        令和2年3月19日
前橋地方裁判所民事部 御中

                 原   告  小 川  賢

 〒379-0114 群馬県安中市野殿980(送達先)
        原   告    小 川  賢
         電 話 090-5302-8312
         または 027-382-0468
         FAX 027-381-0364

 〒371-8570 群馬県前橋市大手町1丁目1-1
        被   告    群馬県知事 山本一太

選挙公営費不正支払損害賠償請求事件

訴訟物の価額  金160万円(算定不能)
張用印紙額   金13,000円

第1 請求の趣旨
1 被告は、令和元年4月の統一地方選の県議会議員選挙(吾妻郡区)で元県議の南波和憲が当選を果たしながら直後に妻の公選法違反(買収)が発覚し令和元年9月6日に妻が有罪判決を受け、同年12月19日に南波和憲が連座制適用による当選無効とされたにもかかわらず、未だに南波和憲に支払った選挙公営費を回収しようとしないため、当選無効の南波和憲に対して支払った選挙公営費を、期間の徒過に伴う遅延損害金にかかる法定利息5分を含めて、南波和憲をしてただちに群馬県に返還させよ。もしくは、回収を怠った群馬県選挙管理委員会(以下「選管」という)の事務局責任者をして、遅延損害金にかかる法定利息5分を含めて、未回収の選挙公営費をただちに群馬県に返還させよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。

第2 請求の原因
1 当事者
(1)原告は群馬県の住民であり納税者である。
(2)被告は、群馬県知事であり、選挙公営費を扱う群馬県選管を管理・監督する者である。
2 住民監査請求
(1)令和元年12月23日、原告は群馬県監査委員に、地方自治法第242条第1項により、妻の公選法違反が発覚し議員を突然辞職した南波和憲が、その後、妻の有罪判決や自身の連座制適用判決を経てもなお、群馬県選管が選挙公営費の返還を南波和憲に請求しようとせず、南波和憲に公金を不当支出したままにしていること(以下、「本件損害」という。)について措置請求(甲第1号証)を行った。
(2)令和2年1月8日、群馬県監査委員は原告に対して住民監査請求を受理する旨の通知をした(甲第2号証)。
(3)令和2年1月27日、原告は群馬県監査委員に対して、地方自治法第242条第6項の規定に基づき、意見の陳述を行った。
(4)令和2年2月17日、原告は、群馬県監査委員から「本件措置請求を棄却する」旨の監査結果(令和2年2月17日付、群監第202-31号)(甲第3号証)を受け取った。
(5)原告はこの監査結果に対して不服である。

第3 請求の内容
1 請求の要旨
(1)請求の端緒となる事件
 1)2019年4月7日投開票の群馬県議選を巡り、公選法違反の罪で、南波建設㈱代表取締役で妻の南波久美子の有罪が確定した元群馬県議の南波和憲に対し、東京地裁(ママ、東京地検)が連座制の適用を求めた訴訟で東京高裁(近藤昌昭裁判長)が2019年12月18日、請求通り、群馬県議選への立候補を5年間禁止する判決を言い渡した。報道によれば、南波和憲は弁論に出廷せず、争う意思を示さなかった。
 2)同判決によると、南波和憲の妻の南波久美子は2019年4月9~10日ごろ、南波和憲の運動員9人に報酬として、1箱6千円相当のようかんを配ったり、うち8人には計80万円の現金を渡したりするなどした。
 3)妻は6月21日に公選法違反(事後買収)の疑いで群馬県警から前橋地検に書類送検され、7月22日に在宅で起訴されたあと、9月6日公選法違反(買収)の罪で、懲役1年、執行猶予4年(求刑懲役1年)を言い渡した9月6日前橋地裁の判決が確定した。
 4)判決理由で国井恒志(こうし)裁判長は「選挙運動の謝礼として渡した和菓子や渡そうとした現金は高額で、相手方も9人と少なくない」と指摘し、「県議の妻としての経験と知識を踏まえれば誠に軽率で、民主主義の根幹である選挙の公正さを害する犯行」と非難した。一方、南波和憲が既に県議を辞職しているなどとして、刑の執行猶予が妥当と判断した。
 5)南波和憲は2019年4月の群馬県議選で当選したが、その後5月23日に群馬県議会の狩野議長宛てに辞職願を提出し自由民主党群馬県支部連合会(県連)の星野建市幹事長に辞職理由を記した書面を手渡した。この書面で南波和憲は、「4月の県議選を巡って関係者が県警の取り調べを受けているため、「知事選や参院選を前に、県連に多大な迷惑を掛ける懸念がある」と説明していた。
(2)いつ、どのような財務会計上の行為をしたか(又はしなかったか)
   2019年4月7日執行の群馬県議会議員選挙において、南波和憲の親族の公選法違反(事後買収)が確定したにもかかわらず、南波和憲の選挙公営のために支出した公費の返還を南波和憲に求めようとしていない。
(3)違法又は不当である理由
 1)選挙違反で連座制の適用を受けた南波和憲は当選無効となるため、当然に得票数はゼロとみなされることになる。よって、法定得票数に満たないため、選挙公営の適用外となる。ところが、群馬県選管は、返還請求の必要性を認めようとしておらず、法令順守の義務を放棄している。
 2)そもそも、この公費負担制度は、供託物没収点以上の得票が得られた時にのみ受けることができるものなので、供託物没収点以上の得票を得られなかった場合は、選挙運動費用の全額が候補者の負担となる。
 3)今年4月の統一地方選の群馬県議選の選挙違反発覚により、もしかしたら、南波和憲本人から選挙公営費分の金額が群馬県選挙管理委員会に返還されているのかもしれないと思い、また、公選法違反で、親族が逮捕された場合、連座制適用で当然本人の選挙のために血税から支出された選挙公営費用は、群馬県として返還を求めるべきである、と考えて、原告は2019年7月24日10時過ぎに群馬県選管の清水担当に電話をした。
 4)その結果、県選管は次の見解を原告に示した。
公選法に、選挙違反の場合の選挙公営費の取り扱いについて、どこにも記載がない。
法律に記載がないのだから、公営費を本人から返してもらう必要性が見当たらない。
 5)ということで、カネのかからない選挙を実現するために血税から候補者に支出された選挙公営費を南波和憲から取り戻そうという考えは微塵もないことが明らかになった。
 6)本来であれば、選挙違反を犯した候補は、供託金も没収されるべきだと原告は考えるが、群馬県選管はなぜか、選挙公営費も気前よく、選挙違反者にくれたままで、なんにも道義的責任など感じていない。
 7)これでは、有権者・納税者として納得できないため、県選管の清水担当には、住民監査請求で、この理不尽な事件をきちんと精査する必要がある旨、請求者から同氏に伝えておいた。原告にとって、今回の住民監査請求は、そうした経緯に基づく措置であった。
(5)結果として群馬県が被っている損害
 1)このため、請求者は、2019年4月7日執行の群馬県議会議員選挙の公費負担の詳細について、群馬県に開示請求をした。その結果、「選挙運動用通常はがきの交付」を除く、①選挙運動用自動車の借入(甲第4号証)、②同自動車の燃料供給(甲第5号証)、③同自動車運転手の雇用(甲第6号証)、④選挙運動用ポスターの使用(甲第7号証)、⑤選挙運動用ビラの作成(甲第8号証)について、情報が開示された。
 2)その結果、公選法違反の疑惑が発覚したあと辞職した南波和憲はしっかり選挙公営費を受け取っていることが判明した。なお、自動車使用料と燃料代は南波和憲自身や同族が関わる会社に支払われていた。
     **********集計値**********
     【候補者名:南波和憲】
     区分    支払額(円)   支払先     代表者
     自動車    137,700    ㈱八洲     南波 和憲
     燃料代     56,781    吾妻総業㈱   南波 将彦
     運転手    112,500    個人のため非開示
     ポスター  1,153,152    宮下印刷所   宮下 良夫
     ビラ     120,160    宮下印刷所   宮下 良夫
     ハガキ    496,000    8,000枚の選挙ハガキを発送
      合計   2,076,293
***********************
 3)このうち、選挙ハガキ(発送代)は他のものと同様公費負担となるが、日本郵便が県選管に合計額で請求するため、県選管では候補者それぞれの枚数・金額は把握していないとのことである。
 4)そのため原告が「供託金を没収された候補者にもハガキ代金(発送)は選管が負担するのか」と質問したところ、「その通りです」との回答があった。
 5)県議選では候補者1人につき上限8,000枚までのハガキ代金を県選管が負担している。ハガキが1枚62円だったので、1人496,000円まで負担されることになる。
 6)なお、2019年4月の県議選で日本郵便へ支払われたハガキ代金総額は26,765,834円、枚数は431,707枚だという。この数字は何人がハガキを利用したかは全くわからないそうで、選管にはあくまでも合計額しか請求されないそうだが、原告としては「そんなことは無いだろう」と考えている。
 7)上記の通り、南波和憲の選挙公営に係る支出を巡り群馬県には計207万6293円の損害が発生している。
(6)被告の群馬県選管職員の重過失
 1)監査結果通知(甲第3号証)の3ページ目に本事件にかかる経緯が時系列で表になっている。これを見ると、5月24日に南波和憲元県議の辞職(県議会による承認)の後、同27日に本件選挙に係るはがき郵送料金を支出したことがわかる。さらに6月12日には、はがき郵送料金以外の選挙公営費を支出したことがわかる。
 2)南波和憲元県議が辞職願を県議会議長に届けたのは同5月23日であり、翌24日に新聞報道がなされており、関係者が公職選挙法違反の疑いで県警から任意で事情聴取を受けていることを理由に辞職したことは被告の職員らも当然承知していたはずである。
 3)にもかかわらず、南波和憲に事情聴取もしないまま、その3日後にはがき郵送料金を支出し、19日後にはがき郵送料金以外の選挙公営費を支出したことは、公正・公平かつ適正に行われなければならない選挙を管理する立場の群馬県選管が重大な過失を犯したことになる。
 4)また、南波和憲も、選良として選挙公営費の全額返還を自主的に申し出なければならないのにそれを怠ったことも重過失にあたる。
(7)総務省自治行政局選挙課へのヒヤリング結果
 1)原告は、この問題について国の考え方を聴取すべく今年に入り何度か総務省自治行政局選挙課に電話をしたが、後日返答するとのことで、なかなか返事をもらえなかった。
 2)そうしたなか、令和2年2月4日の午後1時過ぎに、別件で東京地裁を訪れた際に、向かい側にある総務省選挙課に電話をしてみた。すると選挙課の「サカイ」と名乗る職員が電話口に出た。選挙課の同職員との電話のやりとりは概ね次のとおり。
    選挙課「先週、電話をしたが番号違いか何かでつながらなかった。回答というか規程の説明になってしまうが、例えば選挙事務所、でなく、選挙カー、自動車については公選法141条の7項に規定はされている。例えば衆議院や参議院の選挙で政令により無料で使用することができるというふうにされているなかで、そこで但し、ということで、供託物が国庫に帰属されることにならない場合に限るとされている。なので、あのう、そこはまあ供託金が国庫のほうに帰属されることになる場合については、無料で使用することはできないというような形になるんですけれども」
    原告「法定得票数に足りなかった場合は、というときですね」
    選挙課「そうですね。その供託金が国庫に寄贈されるということになるケースが、法定得票数に達しなかった場合ですとか、あとは、候補者の届出が取り下げられて、その候補者たることを辞した場合、そういったケースがあるのかなあと思うんですけれども、あとは司法の判断のなかで、選挙における得票が無効であるという場合について、供託物が返還されなくて没収となるというケースもあるかとおもう。その辺は、司法の判断になってくるかと思うので、得票が無効となるかいなか、というのはその個々のケースに応じて違うのかな、という気もいたします」
   原告「わかりました。そんな感じですね」
   選挙課「そんなかたちでの規定のご説明になりますので…」
   原告「まあ、いずれにしても地方分権法で、選挙の主体はそれぞれの自治体の判断ということで私も承っているので、だから今回のケースもおっしゃるように司法の判断ということだと究極的にはそう思います」
   選挙課「最終的には司法の判断ですね」
   原告「そうですよね。だから住民訴訟で白黒つけてみたいと思います。いろいろありがとうございます」
   選挙課「いや、とんでもないです」

第3 むすび
 以上のとおり、公選法違反(事後買収)による連座制が適用された南波和憲の当選は無効である。無効であることは、得票数がゼロになるわけで、選挙違反の場合も供託金が没収されることから、当選無効により、選挙公営費は支出されてはならないことは明らかである。
 よって被告は、南波和憲に支出された選挙公営費207万6293円を南波本人をして返還させるか、もしくは南波本人に返還させようとしない群馬県選管の責任者に返還を請求しなければならない。

                        以上

         証拠方法

 1 甲1号証 群馬県職員措置請求書(住民監査請求書)
 2 甲2号証 受理通知(群監第202-20号)
 3 甲3号証 監査結果通知(群監第202-31号)
   ZIP ⇒ 20200319b13iicj.zip
 4 甲4号証 県議選公営費一覧(ア 自動車の借入)
 5 甲5号証 県議選公営費一覧(イ 燃料供給)
 6 甲6号証 県議選公営費一覧(ウ 運転手の雇用)
   ZIP ⇒ 20200319b46iicj.zip
 7 甲7号証 県議選公営費一覧(2 ポスター作成)
 8 甲8号証 県議選公営費一覧(3 ビラ作成)
   ZIP ⇒ 20200319b78iicj.zip


         附属書類

 1 訴状副本     1通
 2 証拠説明書    1通
   ZIP ⇒ 20200319ieib18jiicj.zip
 3 甲号証写し   各1通
**********

■間違いなく群馬県選挙管理委員会は、争う姿勢を見せて来るでしょう。本来、選挙違反に対して選管は人一倍厳しく対応しなければならないはずですが、南波和憲元県議の連座制を問う裁判は、県議選の投開票後8か月も経過したうえで、東京地検が東京地裁に提訴して行われました。

 そもそも、群馬県選管が5月23日に南波和憲が辞職願を議会事務局に出した時点で連座制を適用すべきでした。しかし、自らの職務怠慢を棚に上げ、法廷では訴訟代理人を立てて、「公選法や条例に記載がないから」などとして自らの正当性を主張するものと見られます。

 本来「公選法や条例に記載がないから選挙違反でも目をつぶる」ではなく、「記載がないから、選挙違反によるペナルティとして積極的に適用する」という心構えが、選挙違反の抑止力となるはずですので、前橋地裁の法廷での行方を注目ください。

 なお、当会が万一敗訴になった場合には、選挙違反の連座制適用者にも血税が無駄に注がれている実態が今後も合法的と認められることになるため、それはそれで判例となるため、裁判所の一審判決を尊重するのも一興かと、今の時点ではそう考えております。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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