■当会では、タクマのゴミ焼却施設について、かつて当会が毎月発行していた安中市民通信「まど」1998年3月20日第27号8ページで、平成10年4月からのゴミ焼却施設稼動を前にして、「環境特集 新型ゴミ処理施設オープンによせて」と題して、ダイオキシン次の特集記事を掲載したことがあります。
**********
<大丈夫か、ダイオキシン対策>
ダイオキシンは、塩素と炭素、水素と酸素の化合物で自然界には存在せず、農薬工場から生じ、食物連鎖を経て人間の体内脂肪に蓄積する猛毒です。不完全燃焼の場合に出易く、焼却炉の排ガスの冷却過程で再合成されてしまう厄介な代物です。排ガスや、焼却残さ(主灰)のほか、飛灰にいちばん多く合まれます。厚生省の報告によると日本のダイオキシンの八〇%が全国一七〇〇ヶ所のゴミ焼却場から排出されています。
■ゴミ焼却とダイオキシン
ゴミ焼却炉とダイオキシンの関係が、日本で初めて注目されたのは一九九三年です、西日本の九ケ所の焼却炉の灰から、高濃度のダイ才キシンを検出したと愛媛大が発表しました。
だが翌八四年に、厚生省研究址は「健康への影響はない」という報告を発表。環境庁も全国の河川.海を調査し「影響なし」との見解を出しました。
九〇年に厚生省は「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン(旧ガイドライン)を策定しましたが、依然として取り組みは消極的で、既設の焼却炉に関する数値日程等は定めませんでした。
ところが九七年二月、世界保健機構(WHO)が、ダイオキシンを「発癌性の疑いがある」から「発癌物質だ」と評価変えした途端、全国でダイオキシンヘの関心が高まりました。
最近になって、ダイオキシンは極微量でもヒトの生殖機能に著しい悪影響を及ぼすことも分かり、日本のゴミ行政を根幹から揺さぶっていることはご承知の通りです。九七年一二月から群馬県でも学校の小型焼却炉の使用が全面禁止になりました。
焼却炉のダイオキシン規制を狙いとした大気汚染防止法と廃棄物処理法の改正政省令が九七年一二月から施行されました。これは清掃工場の焼却炉ばかりでなく、民間事業者の保有する焼却施設や製鋼用電気炉など焼却施設以外の炉も発生源対策を必要とさせるものです。
■原市の焼却場は安全か?
昨年厚生省が全国の焼却炉のダイオキシン排出値測定結果を発表しましたが、安中市の現有焼却場では排ガス一立方メートル当たり五・六ナノグラム(一ナノグラムは一〇億分の一グラム)でした。
既設炉の緊急対策値である同八〇ナノグラムは下回っていますが、欧米の基準値〇・一ナノグラムと較べると数十倍の濃度、一九九九年四月から稼働開始の新しいゴミ焼却炉では、いったいいくらになるのでしょうか。
前述の九七年一二月からの法律改正で、毎年一回排ガス中のダイオキシン濃度の測定が義務付けられます。ところが、排ガスより焼却灰、とりわけ飛灰と呼ばれる回収粉塵の中にダイオキシンは多く含まれます。
従って、現在では焼却灰や飛灰は、ダイ才キシンが分解する高温で溶融し、ダイオキシンが再合成されないように急冷し、固い石のような塊にして、路盤材やコンクリート骨材に再利用する方法が全国的に注目されており、一部の自治体では既に実用化されています。
原市の焼却炉では、灰に未然焼物が沢山含まれ、灰溶融施設などダイ才キシン対策が充実されていないことから、稼働後のダイオキシンの排出値が気にかかります。旧ガイドライン適用炉なので、ダイオキシン恒久対策として、〇・五ナノグラム以下の基準が適用されます。
できたばかりの「最市ネイ」施設なのに、運転結果次第ではさっそく削減対策や追加予算も必要になりかねません。
■ダイオキシン排出ゼロに向け
なお、民間事業所の焼却灰についても、廃棄物処理法の改正政省令で構造基準が強化されたので、安中市としても解説パンフレットを作成し指導する必要があります。事業所への説明や立入調査への対応準備も求められます。旧式化した設備更新には「公害防止資金融資」や「中小企業制度融資」を活用して、更新を促進する手もあります。
そして、ダイオキシン発生の原因のひとつとされる塩化ビニールや塩素系の添加物を含むプラスチックなどが混入しているゴミは、なるべく燃やさないよンに、あらかじめ分別できるよう、市民らへの啓発とPRも欠かせません。
■環境モニタリングの充実を
こうした発生抑制策と共に、市民の無用な不安を解消するために、焼却炉からのダイオキシン排出量を逐次測定し、自主監視を徹底し、その報告は逐一市民に公表する必要があります。
大気中に放出されたダイオキシンは土壌に染み込んで地下水を経由して河川や海洋に広がります。その過程で魚介類に蓄積され、人休にも蓄積されるなど長期的な影響は無視できません
安中市でも、早急に市内一〇個所程度の大気についてダイオキシンの濃度を夏冬の二回計測してはどうでしょうか。測定地点の数は年々増やし、頻度も年四回の計測とするほか、土壌、地下水についても、調査したいものです。
さらに最近、ダイオキシン汚染の問題が表面化している母乳についても、新年度から調査を開始し、以後継続して調査を実施していくことが望まれます。
こうした施策は、今後三年の期間内に、市が取り組むべき総合的な対淑としてぜひ必要です。そして調査結果については、四月一日施行予定の安中市情報開示条例により積極的に市民に公表して行くことが望まれます。
【政策部・情報部】
※参考データ(1997年当時)
【県内ゴミ焼却施設の排ガス中ダイオキシン類濃度】
一般事務組合名/施 設 名/炉形式/設置年/濃度
館林市 /館林市清掃センター /准連/1986/124.50
水上月夜野新治/ごみ焼却処理施設 /機バ/1978/92.00
新町 /新町清掃センター /機バ/1979/80.00
境町 /境町清掃センター /機バ/1990/71.00
草津町 /草津町クリーンセンター /機バ/1991/57.00
甘楽西部 /ごみ焼却炉 /機バ/1986/56.00
富岡市 /富岡市清掃センター /准連/1992/54.00
吉井町 /吉井町クリーンセンター /機バ/1992/49.00
藤岡市 /藤岡市清掃センター /機バ/1986/45.00
利根東部 /衛生施設組合 /機バ/1978/26.00
吾妻東部 /可燃ごみ処理施設 /機バ/1991/14.00
西吾妻 /ごみ焼却処理施設 /機バ/1992/14.00
渋川広域 /渋川広域圏清掃センター /准連/1993/14.00
大胡町 /大胡町他3村クリーンセンター/機バ/1990/12.00
伊勢崎市 /伊勢埼ダストセンター /全連/1981/6.60
安中・松井田 /ごみ焼却炉 /機バ/1974/5.60
東村 /東村ダストセンター /機バ/1993/4.86
万場町 /万場町塵芥処理場 /機バ/1980/3.90
玉村町 /玉村町クリーンセンター /機バ/1990/3.50
大泉町外2町 /大泉町外2町清掃センター/准連/1991/3.02
鬼石町 /鬼石町焼却炉 /機バ/1978/2.70
太田市 /太田市清掃センター /全連/1992/0.20
太田市 /太田市清掃センター /全連/1997/0.20
桐生市外6町村/桐生広域清掃センター /全連/1996/0.12
※濃度の単位:ナノグラム―TEQ/Nm3
※炉形式:[全連]全連続式、[准連]准連続式、[機バ]機械バッチ式
(出典・厚生省1997年4月11日発表)
【注】この測定結果は、発表後全国各地で改ざんの実態が明らかになりました。館林市では、施設改造のための補助金目当てに数値を水増しした経緯が発覚。また、ダイオキシン濃度自体、測定方法や条件でバラツキが出るため、継続的な計測データが不可欠です。
**********
■このように、当会では、タクマが受注して建設したこのゴミ処理施設に関するダイオキシン発生濃度についても、きちんと精査する必要があると当時から主張してきました。結局、灰溶融施設や発電施設など、環境面に配慮した対応は取られず、その後、ダイオキシン低減対策のために、さらに追加の税金が投入されたのでした。
【ひらく会情報部】
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます