梅毒、最多ペースで急拡大 「パパ活も一因」と専門家
2023年6月16日 (金)配信共同通信社
性感染症の梅毒が急拡大している。国立感染症研究所が発表した4日時点の今年の感染者は計6108人で、現在の統計の取り方になって最多だった昨年を上回るペースだ。専門家は、感染に気づきにくい上、交流サイト(SNS)の普及により、デートなどの見返りに金銭を受け取る「パパ活」などで不特定多数との性交渉が広がっていることも一因だと指摘。「若い世代への教育も大切だ」と訴える。
梅毒は梅毒トレポネーマという細菌が原因。性交渉などで皮膚や粘膜が直接接触すると感染し、数週間で接触部位にしこりや潰瘍ができるが、目立たないことも多い。
早期に抗菌薬で治療すれば完治するが、放置すると細菌が全身に回り、大動脈瘤(りゅう)を生じさせたり、歩行障害や認知症などの神経症状を引き起こしたりする。妊婦が感染すると、流産や、子どもが「先天梅毒」となる恐れもある。
かつては数十万人もの感染者がいたが、抗菌薬の普及で大幅に減少。感染研によると、2003年には現在の統計になって最少の509人になった。だが10年代に入ると大きく増え始め、昨年は1万2966人に。今年は6月4日時点で、前年同時期と比べ約1600人多くなっている。
感染研実地疫学研究センターの山岸拓也(やまぎし・たくや)さんによると、男女とも増えており、女性の感染者の約3割は性風俗業の従事者。一方、無関係とみられる症例も多く、クラミジアなど他の性感染症も増えている。
山岸さんは「性感染症が広く社会に入り込んでいる恐れがある。コンドームの着用や、不特定多数との性交渉の回避など、自分の身を守る行動が重要だ」と話している。