血糖値、高すぎも低すぎも認知症のリスク大
アピタル・岩岡秀明
2017年4月20日06時00分
認知症も糖尿病の重要な合併症の一つです。
2015年に厚生労働省が発表した全国の認知症の患者数は、2012年の時点で約462万人。65歳以上の高齢者は約7人に1人が認知症でした。
日本は高齢化が進んでいますが、このまま高齢化が進むと2025年には認知症患者数が700万人前後となり、65歳以上の高齢者は約5人に1人が認知症を発症する推計になっています。
よくわかる糖尿病の話 はここから
糖尿病とがんの密接な関係
1) 認知症の原因となる疾患
認知症の原因となる疾患は多数ありますが、代表的な疾患は以下の4つです。
(1)アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)
日本人の認知症の約60%を占めているのがアルツハイマー病です。
(2)脳血管性認知症(血管性認知症)
脳血管疾患の有無、認知症の症状と脳血管障害発症の時間的
関連性により診断されます。
(3)レビー小体型認知症
アルツハイマー病とパーキンソン病の2つの特徴がある疾患です。
(4)前頭側頭型認知症(ピック病)
記憶障害よりも性格・行動面が変化します。
これら4つの疾患で、日本人の認知症の約80%を占めています。
これらのうち、糖尿病に関連しているのがアルツハイマー病と血管性認知症です。
2) 糖尿病で認知症が多い理由
九州大学が中心となって行っている久山町研究という研究があります。
福岡県糟屋郡にある人口約8600人程度の久山町住人の方ほぼ全員の健康管理を追跡し研究しています。元々は脳卒中の実態解明と予防が目的で始まった久山町研究ですが、現在では生活習慣病全体の実態解明と予防を目的として続けられています。
この研究データによると、高齢者の糖尿病患者では合併症として認知症を発症している方が多く、更に糖尿病ではない高齢者に比べアルツハイマー病や血管性認知症の発症リスクが2~4倍に上昇しているということが分かりました。
インスリン抵抗性(インスリンの働きが悪くなること)、血糖コントロールの不良(高血糖、低血糖、血糖変動)、動脈硬化の危険因子(高血圧、脂質異常症、喫煙)が、糖尿病における認知症の進行を加速させます。
また、高血糖だけでなく、重症の低血糖も認知症発症のリスクとなります。
重症低血糖とは、第三者の介助を必要とする低血糖のことです。
平均年齢65歳の16000人余りを対象としたアメリカでの研究(2009年)では、1度も重症低血糖を起こしたことのない患者の認知症発症危険率を1とした場合、1年間に1回重症低血糖を起こした患者の認知症発症危険率は1.26倍、2回は1.80倍、3回以上は1.94倍という結果でした。
したがって、高齢者の2型糖尿病では低血糖を起こす危険性がある薬剤(SU=スルフォニル尿素薬と、グリニド薬)やインスリン注射はなるべく避けたいところです。
3) 認知症を早期に発見する
認知症を早期に発見するためには、同居しているご家族が「老化によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違いに注目することも重要です。
この違いを表に示します。
また、糖尿病患者の認知症を早期に発見するためには、1)手段的ADL(Activity of Daily Life=生活活動度)の障害(交通機関に乗っての外出、買い物、調理、金銭管理など)、2)セルフケアの障害(服薬管理、インスリン注射など)、3)心理状態の変化(無気力、無関心、うつなど)、に注目することが重要です。
したがって、認知症の早期発見には同居するご家族の協力が重要になります。
4) 認知症の治療
認知症を合併した糖尿病患者の治療では、運動療法、栄養サポート(バランスのよい食事で、十分なビタミンB群や抗酸化ビタミンをとること)、心理サポート、治療の単純化(インスリン療法からの離脱または頻回のインスリン注射から1日1回注射への変更等)など包括的な治療が重要です。
以上から、認知症を合併した糖尿病患者の診療では、かかりつけ医と共に各分野の専門医(糖尿病専門医、認知症専門医、精神科専門医)、看護師、薬剤師、管理栄養士、ケアマネジャー、ソーシャルワーカーなど多職種の連携と共に、ご家族の協力も重要となります。
アピタル・岩岡秀明
2017年4月20日06時00分
認知症も糖尿病の重要な合併症の一つです。
2015年に厚生労働省が発表した全国の認知症の患者数は、2012年の時点で約462万人。65歳以上の高齢者は約7人に1人が認知症でした。
日本は高齢化が進んでいますが、このまま高齢化が進むと2025年には認知症患者数が700万人前後となり、65歳以上の高齢者は約5人に1人が認知症を発症する推計になっています。
よくわかる糖尿病の話 はここから
糖尿病とがんの密接な関係
1) 認知症の原因となる疾患
認知症の原因となる疾患は多数ありますが、代表的な疾患は以下の4つです。
(1)アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)
日本人の認知症の約60%を占めているのがアルツハイマー病です。
(2)脳血管性認知症(血管性認知症)
脳血管疾患の有無、認知症の症状と脳血管障害発症の時間的
関連性により診断されます。
(3)レビー小体型認知症
アルツハイマー病とパーキンソン病の2つの特徴がある疾患です。
(4)前頭側頭型認知症(ピック病)
記憶障害よりも性格・行動面が変化します。
これら4つの疾患で、日本人の認知症の約80%を占めています。
これらのうち、糖尿病に関連しているのがアルツハイマー病と血管性認知症です。
2) 糖尿病で認知症が多い理由
九州大学が中心となって行っている久山町研究という研究があります。
福岡県糟屋郡にある人口約8600人程度の久山町住人の方ほぼ全員の健康管理を追跡し研究しています。元々は脳卒中の実態解明と予防が目的で始まった久山町研究ですが、現在では生活習慣病全体の実態解明と予防を目的として続けられています。
この研究データによると、高齢者の糖尿病患者では合併症として認知症を発症している方が多く、更に糖尿病ではない高齢者に比べアルツハイマー病や血管性認知症の発症リスクが2~4倍に上昇しているということが分かりました。
インスリン抵抗性(インスリンの働きが悪くなること)、血糖コントロールの不良(高血糖、低血糖、血糖変動)、動脈硬化の危険因子(高血圧、脂質異常症、喫煙)が、糖尿病における認知症の進行を加速させます。
また、高血糖だけでなく、重症の低血糖も認知症発症のリスクとなります。
重症低血糖とは、第三者の介助を必要とする低血糖のことです。
平均年齢65歳の16000人余りを対象としたアメリカでの研究(2009年)では、1度も重症低血糖を起こしたことのない患者の認知症発症危険率を1とした場合、1年間に1回重症低血糖を起こした患者の認知症発症危険率は1.26倍、2回は1.80倍、3回以上は1.94倍という結果でした。
したがって、高齢者の2型糖尿病では低血糖を起こす危険性がある薬剤(SU=スルフォニル尿素薬と、グリニド薬)やインスリン注射はなるべく避けたいところです。
3) 認知症を早期に発見する
認知症を早期に発見するためには、同居しているご家族が「老化によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違いに注目することも重要です。
この違いを表に示します。
また、糖尿病患者の認知症を早期に発見するためには、1)手段的ADL(Activity of Daily Life=生活活動度)の障害(交通機関に乗っての外出、買い物、調理、金銭管理など)、2)セルフケアの障害(服薬管理、インスリン注射など)、3)心理状態の変化(無気力、無関心、うつなど)、に注目することが重要です。
したがって、認知症の早期発見には同居するご家族の協力が重要になります。
4) 認知症の治療
認知症を合併した糖尿病患者の治療では、運動療法、栄養サポート(バランスのよい食事で、十分なビタミンB群や抗酸化ビタミンをとること)、心理サポート、治療の単純化(インスリン療法からの離脱または頻回のインスリン注射から1日1回注射への変更等)など包括的な治療が重要です。
以上から、認知症を合併した糖尿病患者の診療では、かかりつけ医と共に各分野の専門医(糖尿病専門医、認知症専門医、精神科専門医)、看護師、薬剤師、管理栄養士、ケアマネジャー、ソーシャルワーカーなど多職種の連携と共に、ご家族の協力も重要となります。
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