部長の自殺、遺族労災申請 過労死ライン超え56カ月 エーザイ勤務、うつ病に
2019年1月4日 (金)配信共同通信社
製薬大手エーザイの部長だった50代の男性がうつ病になって2016年に自殺し、原因は昇進に伴う業務量増加や慢性的な長時間労働だったとして遺族が天満労働基準監督署(大阪)に労災申請したことが30日分かった。
部長昇進から自殺までの8年で約8千時間残業し、過労死の労災認定基準となる「過労死ライン」(月平均80時間)超えが約100カ月のうち56カ月に達したと遺族は指摘。長期間の過重労働で自殺に追い込まれたと訴えた。
長期にわたる管理職の長時間労働の実態が明らかになるのは異例。男性は「管理監督者」として扱われ、残業時間制限がなかった。政府や企業は働き方改革を進めるが、管理職の対策強化を求める声が出そうだ。
亡くなったのは泰敬(やすゆき)さん=当時(50)=(姓は遺族の希望で非公表)で1990年、エーザイ入社。2008年4月、関西のドラッグストアなど小売店営業を統括する部長に昇進した。
大阪市内に住む妻(51)や申立書によると、泰敬さんは昇進前から残業時間が急増。同年2月は65時間だったが、3月86時間、4月72時間となり、5月は126時間、6月は104時間に達した。10月に初めて医療機関を受診して夏ごろからうつ病だったと診断され、死亡直前まで通院した。
昇進後、人員削減の指示があり先輩社員を異動させなければならなかったことや取引先からのクレームの対応に追われたことなどで、心理的負担も増えたという。
残業は多い月で134時間に達し、長時間労働は亡くなるまで続いた。毎年の1カ月平均の残業時間を見ると、12年から死亡前年の15年まで80時間を突破。16年9月、京都市内の単身赴任先マンションで自殺した。
遺族は休日出勤の負担の大きさも指摘。報告書作成や取引先との会合、出張などのため、移動日を含めた休日出勤は8年間で367日に及んだと強調した。
遺族はエーザイが提供した勤務データを基に労働実態を分析。今年7月に労災申請した。
エーザイは「心からお悔やみ申し上げる。長時間労働と死亡との関係を会社として判断する十分な根拠を持ち合わせていないが、遺族の申請を真摯(しんし)に受け止め誠実に対応したい」とコメントした。
※過労死ライン
厚生労働省の脳・心臓疾患に関する労災認定基準は、発症前1カ月におおむね100時間、または2~6カ月にわたり1カ月平均80時間を超える残業があったことを目安の一つとしている。ただ、認定基準は「(厚労省が残業上限と告示する)月45時間を超え、残業時間が長くなるほど、業務と発症の関連性が徐々に強まる」とも規定しており、80時間を下回る残業時間でも、過労死と認定されるケースもある。
2019年1月4日 (金)配信共同通信社
製薬大手エーザイの部長だった50代の男性がうつ病になって2016年に自殺し、原因は昇進に伴う業務量増加や慢性的な長時間労働だったとして遺族が天満労働基準監督署(大阪)に労災申請したことが30日分かった。
部長昇進から自殺までの8年で約8千時間残業し、過労死の労災認定基準となる「過労死ライン」(月平均80時間)超えが約100カ月のうち56カ月に達したと遺族は指摘。長期間の過重労働で自殺に追い込まれたと訴えた。
長期にわたる管理職の長時間労働の実態が明らかになるのは異例。男性は「管理監督者」として扱われ、残業時間制限がなかった。政府や企業は働き方改革を進めるが、管理職の対策強化を求める声が出そうだ。
亡くなったのは泰敬(やすゆき)さん=当時(50)=(姓は遺族の希望で非公表)で1990年、エーザイ入社。2008年4月、関西のドラッグストアなど小売店営業を統括する部長に昇進した。
大阪市内に住む妻(51)や申立書によると、泰敬さんは昇進前から残業時間が急増。同年2月は65時間だったが、3月86時間、4月72時間となり、5月は126時間、6月は104時間に達した。10月に初めて医療機関を受診して夏ごろからうつ病だったと診断され、死亡直前まで通院した。
昇進後、人員削減の指示があり先輩社員を異動させなければならなかったことや取引先からのクレームの対応に追われたことなどで、心理的負担も増えたという。
残業は多い月で134時間に達し、長時間労働は亡くなるまで続いた。毎年の1カ月平均の残業時間を見ると、12年から死亡前年の15年まで80時間を突破。16年9月、京都市内の単身赴任先マンションで自殺した。
遺族は休日出勤の負担の大きさも指摘。報告書作成や取引先との会合、出張などのため、移動日を含めた休日出勤は8年間で367日に及んだと強調した。
遺族はエーザイが提供した勤務データを基に労働実態を分析。今年7月に労災申請した。
エーザイは「心からお悔やみ申し上げる。長時間労働と死亡との関係を会社として判断する十分な根拠を持ち合わせていないが、遺族の申請を真摯(しんし)に受け止め誠実に対応したい」とコメントした。
※過労死ライン
厚生労働省の脳・心臓疾患に関する労災認定基準は、発症前1カ月におおむね100時間、または2~6カ月にわたり1カ月平均80時間を超える残業があったことを目安の一つとしている。ただ、認定基準は「(厚労省が残業上限と告示する)月45時間を超え、残業時間が長くなるほど、業務と発症の関連性が徐々に強まる」とも規定しており、80時間を下回る残業時間でも、過労死と認定されるケースもある。
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