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認知症発症前の「超早期」に注目…根治薬開発へ脳状態調査

2016年06月27日 23時28分41秒 | 医療情報
認知症発症前の「超早期」に注目…根治薬開発へ脳状態調査
2016年6月27日 (月)配信読売新聞

 認知症の大規模研究が国内で相次いで始まる。

 特に注目されるのが症状が出始める前の「超早期」。この段階から、脳の状態を調べて病気の進み方を解明し、認知症根治薬の開発につなげるのが狙いだ。

 厚生労働省の推計では、国内の認知症の人は、約462万人(2012年)。その7割程度を占めるとされるアルツハイマー型は、脳内に異常なたんぱく質「アミロイドβ」などが蓄積し、脳が萎縮して発症するが、詳しいメカニズムは分かっていない。現在、使われる4種類の治療薬は進行を遅らせるのが目的で、原因となるたんぱく質の蓄積を食い止められない。

 2000年以降、国内外でアミロイドβの増殖を抑える根治薬の研究が進んだ。海外で臨床試験も行われたが、進行した認知症ではアミロイドβを減らせても、既に神経が死滅しており、症状の改善につながらないことがわかってきた。

 アミロイドβは、認知症を発症する10~20年前から脳に蓄積するとされる。症状が出る前の超早期(プレクリニカル)で治療すれば発症を抑えられるのではないか――。そんな考えで、超早期の状態を探る研究が国内でも始まっている。

 その一つが、家族性アルツハイマー病を対象にした「DIAN(ダイアン)」研究だ。米国などで08年から実施され、東大や弘前大などの日本の研究チームが今年から参加している。

 家族性アルツハイマー病は遺伝子の変異で起きる。40~50歳代を中心に、親とほぼ同じ年齢で発症するため、発症時期が予測できる。発症前から脳内の様子などを調べ、どのように原因物質が蓄積し、症状が引き起こされるかを明らかにする。今後、発症を予防する新薬の国際的な臨床試験にも参加できるようにする。

 日本医療研究開発機構(AMED)は、症状が出ない、超早期の段階で診断するための指標を作る「AMEDプレクリニカル」を近くスタートさせる。

 現在、超早期の人を見つけ出すには、陽電子放射断層撮影(PET)で脳を撮影するしかない。装置がある医療機関は少なく、費用も高いため、より簡便な指標が求められている。

 超早期のほか、軽いもの忘れがみられる「軽度認知障害(MCI)」の人、原因物質の蓄積がない健康な人計500人を対象に3年間、認知機能テストや血液検査など約30項目の変化を観察。指標をつくり、新薬の臨床試験などで活用する。主任研究者で大阪市立大学特任教授の森啓さんは、「まずは症状が出る前の段階で有効な薬の開発につなげたい」と力を込める。

 健康な人から認知症が進んだ人まで、様々な段階の人を数万人規模で登録するプロジェクト「オレンジプラットフォーム」も今月、始まる。超早期やMCIの人も登録しておくことで、臨床試験の迅速化を図る。

最新成果を還元

 海外では、アミロイドβが作られる過程を断ち切る薬や、できたアミロイドβを分解する薬の臨床試験も行われたが、有効性を示せない、副作用がある、などの理由で実用化には至っていない。ただ、軽症者には、わずかに認知機能の低下を抑える効果が確認された薬剤もあった。このため、最近では超早期や軽症者を対象にした研究が増えており、米国立衛生研究所(NIH)も製薬企業と共同で、超早期の人を対象にした新薬の臨床試験を実施中だ。

 東京大学神経病理学教授の岩坪 威さんは「世界と共同研究を行い、最新成果をいち早く日本に還元していく必要がある」と話す。

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